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松島教授のIT経営学

【Watcherが展望する2007年】2007年IT業界の決断“コンピュータ会社がコンピュータを売らなくなる日”

松島 克守=ITpro Watcher 2007/01/08 ITpro

 2007年,コンピュータ会社がコンピュータを売るのを止める日が来るのか。情報サービス業に完全に変身できるのか。そしてIT業界最大の決戦にどう参戦するのか。

IBM,マイクロソフト,そしてグーグルへ

 IT産業は歴史的にはコンピュータ業界から始まったと言っていい。第一世代はIBMの時代であった。半導体も世界最大のメーカーであり,ソフトウエアもほぼ独占していた。

 その後半導体も,ソフトウエアもベンチャー企業群が生まれIT産業が発達してきた。分化して発達したITはシリコンバレーでフュージョン(融合)を起こしイノベーションが連鎖して,ワークステーション,そしてパソコンがコンピュータになり,IBMというコンピュータ会社の覇権が終わったが,依然としてコンピュータ会社は存続してきた。パソコンはデルモデルというビジネスイノベーションによって極限までの価格低下が起こり,パソコン業界の再編成を引き起こした。IBMがパソコン事業をレノボに売却し,ビルゲイツも引退する。

 昨年夏,西海岸のグーグル本社のキャンパスの友人を訪ねた。

 かつてジム・クラークのシリコングラフィックスが建設したキャンパスオフィスであった。シリコングラフィックスが画期的な高性能グラフィックスワークステーションでフライトシミュレータを開発し,NCGAに展示してデビューした年,創業間もないシリコングラフィックスを訪問して成功のオーラを感じたのは20数年前であった。当時のフライトシミュレータはソルトレイクシティーのE&Sの数億円のシステムであった。それ以上の機能をUNIXワークステーションで実現していた。イノベーションである。

 そういえばシアトルのマイクロソフトもキャンパスであった。仕事が早く終わったエンジニアがテニスを楽しんでいた。マイクロソフト訪問はOS/2から手を引いてWindowsを立ち上げた時で,まだLANはOS/2のLANマネージャを使っていた。

 カフェで社員が談笑するグーグルのオフィスの片隅に創業時に使っていたというサーバーが展示してあった。市販のマザーボードにHDDを直に取り付けてあった。今のブレードである。彼らにとってコンピュータは部品屋の棚に積んである部品でしかなかったのだ。コンピュータではない。だからベンチャー企業でも巨大な情報処理センターが構築できた。

IT産業から消滅した“コンピュータという商品”

 最近久しぶりにデスクトップパソコンを買った。数年前に買ったバイオRX73,確か50万円くらいした,が突然奇声を上げて作動しなくなったので,修理の見積もりを出したところ約7万円とのことで,買い換えたほうが早いと判断して久しぶりにパソコン雑誌を紐解くととんでもなく安い。インテルのペンティアムなら3~5万円でもある。これでもRX73より高性能だ。Pentiumの最初の60MHzを搭載したゲートウェイを米国から通信販売で購入して,自宅に国際宅急便で届いたときの感激が蘇り,雑誌をめくりスペックを見比べるモードに入ってしまった。結局,インテルCore2Duo E6400,1GB,250GHDD・・・を約9万円で発注した。この価格でこの高性能コンピュータが買えていいのか。どこで,誰が利益を上げているのか判らない。

 たまたま携帯電話も買い換えた。機能がありすぎて選択に迷う。ワンセグでテレビを見る必要もないし,GPSも要らない。カメラもテレビ電話も,ミュージックプレーヤも要らないが,この機能がないものを見つけるほうが難しい。結構大型化していて持ち歩きに不便そうなものが多い。1円の携帯電話もあったが,結局海外で一番広く簡便に使えそうなボーダフォン,まだ売り場の看板はボーダフォンだが,ソフトバンク705SHを買うことに決めたが手続きが長い。結局携帯電話の購入に約3時間。疲れたがついでにパソコン売り場に立ち寄るとパソコン売り場はテレビ売り場と間違えるほど地上ディジタルテレビのデモで売っている。すばらしい画質だ。これはコンピュータか通信機能つきAV機器か。

 富士通,NEC,日立・・・日本のコンピュータ会社であったがいずれも業績が不振であると伝えられる。おせっかいにもその活路を拓くビジネスモデルを考えるモードになった。彼らのパソコンは先ほど発注したパソコンより数段すばらしい。超高性能コンピュータであり通信機能付きスーパーコンピュータである。いやこれはもうコンピュータではなくディジタル家電である。しかし,計算機能以外は携帯電話のほうが魅力的だ。さらに携帯電話の通信機能は100Mbpsクラスになるという話だ。新聞広告のサーバーも安い。あんなにたくさんのコンピュータが入っていてあの価格とは。・・・・・ITをコンピュータから見ているから理解できないだけだ。もうコンピュータというものはないのだと思うしかない。

 いまさらなんだが,コンピュータという商品は消滅したのだ。だからコンピュータ会社も存在しない,コンピュータを売ることもなくなる。モノ作り,モノ作り,というがあのパソコン,サーバーの製造・販売から適切な利益が出るわけがない。歯を食いしばって黒字化がせいぜいだろう。製造業とは金作りのためにモノづくりして,そのためには人づくりが必須になる産業である。金作り,モノづくり,人づくりは三位一体である。金作りができないモノづくりはありえない。

日本企業グローバル化のネックになっていた情報システム

 そもそもITといわれる情報処理システムも不思議な世界である。一般ユーザー企業が数億円のハードウエアを購入して,それ以上の開発費を費やして応用ソフトを開発する。この開発はリスクが高くしばしば「動かないコンピュータ」という記事になる。加えて月額数千万円の通信費用を通信会社に払う。情報セキュリティのうるさい現在,社内のパソコンの管理費用も巨額だ。このシステムの管理運営のために,企業規模にもよるが数十人から数百人,金融業や巨大企業では数千人の専任社員を抱える部門がある。それでいて経営戦略やその実装のビジネスモデルにITが活用できていないと言われている。

 事実これが日本企業のグローバル化のネックだと思う。IT企業から見ればこれは膨大な需要である。しかしその業界は業績不振である。情報は水やエネルギー,素材のように製造業のインフラである。かつてはこれらを自給するビジネスモデルが存在したが,現在水源を自前で確保して水を自給する企業や,自家発電設備を購入して電力を社内供給したり,素材から製品の一貫生産企業は特殊な企業に限られる。情報だけはなぜか自前で設備を整備してシステムを構築して運用管理するモデルから,インフラとして整備されるモデルへの変化が遅れている。

 アウトソーシングというモデルが10年ほど前から始まった。これは自前設備とその運用を単に外部委託するビジネスモデルである。結果は委託した企業も,委託を受けた企業も現在は満足いく結果ではない。本質的なイノベーションなしのビジネスモデルであった。

 IT革命と言われて久しい。インターネットの激震による津波は次々とIT業界に打ち寄せてきたが,本格的な波はWeb 2.0からであろう。これで完全に過去と決別したIT業界のビジネスモデルが定着することになる。

 コンピュータ会社はコンピュータというものを売らない。いや売ってはいけない。インフラとしての情報サービスを売るだけである。利益なきところに経営資源を投入してはいけない。インフラということは,顧客別のシステムを供給することではない。電力産業で言えば,顧客ごとに電圧や周波数を変えて供給することはありえないように,サービスもインフラに徹しよう。会計,経理,人事・・・・

 この分野に企業独自のビジネスプロセスは不要である。グローバル化には独自プロセスは障害だ。またこの情報システムで競争優位は構築できない。システムはインフラでいい。とりわけ,新SOX法の施行となれば,独自のビジネスプロセスをCOSOの定義する内部統制フレームワークに対して評価・検証するコストは膨大であるが,その企業に何の利益をもたらすものではない。これは証券市場の上場に関する追加の資本コストでしかない。どこかの情報サービス企業が新SOX法準拠のサービスを提供してくれればこれを単に利用すればそれが一番である。いっそそのサービスが金融庁の(適)マークを持っていれば助かる。

インフラに徹する情報産業のビジネスモデル

 言ってしまえば例のASPのビジネスモデルであるが,ポイントは顧客への個別対応ではなく完全なインフラに徹する電力会社モデルである。単一の巨大システムの管理運用にサービス企業は資源を集中する。資本集約の大企業モデルである。コンピュータ会社にとって優位な分野だ。顧客企業から見ても業務コンサルティング,ITコンサルティング,システム構築,セキュリティ,管理運営の巨大なコストとリスクをなくすことができる。何でたかが会計システムの更新に2年も3年も掛かかるのだろうか。

 競争優位を確保できるビジネスプロセスであれば独自システムの価値はあるが,意外とこれは少ない。製造業で言えば,生産ラインのリアルタイムシステムは過去の遺産の問題と現場の改善活動のため,独自システムが必要であるだろう。生産管理システムは必ずしも独自である必要はない,サプライチェーンの中で議論すべきである。基本的にERP,SCMはインフラとしてサービスできる。ディマンドチェーン(商品開発から製品開発・設計までのプロセス)も独自のプロセスが必須のように見えるが多くはインフラとしてのシステムですむ。

 QCDは当たり前で,勝負は商品開発の時代である。本邦の製造業がグローバル企業として競争優位を保てるのはイノベーションに基づいた商品とサービスの開発である。ここにITを使う。このシステムは独自でやるべきである。かつてはCAD/CAMも独自開発の時代があったが,もう製品データ管理のPLMの管理運用もインフラシステムでいい。そのほうが合理的だ。顧客管理とりわけ日常業務は外部のコール・センターというソリューションが既に標準である。これらはすべてインフラサービスのビジネスモデルに組み入れられる。競争優位を生むシステムは『知力』に関するプロセスであるが,この議論は別にしよう。

 競争優位に関連が薄いシステムはすべて,顧客対応でなく電力会社モデルで,低価格で高品質なサービスで供給する。通信システムは既にインフラサービスでしかもIP網で進化して地球を「面」として覆いつつある。この面の中を自由に動いて情報サービスを受けるのがユビキュタスである。これを活用するビジネスモデルがグローバル企業のビジネスモデルである。そこにおけるインタフェースは言うまでなく,携帯電話だ。これをコンピュータ会社が売るのか。

2007年IT業界最大の決戦はインターメディアリー

 以上古典的なIT業界の議論をしてきたが,IT業界の最大の決戦はインターメディアリーと呼ばれるネット企業と,既存メディアとの競業である。グーグル,ヤッフー,ユーセンに代表される企業群で楽天やアマゾンがこれに該当するか定かでない。彼らのビジネスモデル戦略しだいだ。

 このインターメディアリー企業は「良質な無料情報サービス」を一般消費者に提供することにより膨大な市場に対するリーチ(情報発信と受信)を確保してこれを広告媒体として広告市場に販売している。日本の広告市場は約6兆円,この市場は長らく民間テレビ局と大新聞が占拠してきた。この市場での覇権争いが2007年で一番興味深い。

 株価が高いといってもまだネットのインターメディアリーの時価総額はテレビ局の10分の1程度だが,広告主から見てリーチがテレビに匹敵するとなると其の企業価値はそれに匹敵する水準になる。TV局1社分になるかもしれない。マーケットセグメンテーションと双方向というネットメディアはマーケッティングにとって魅力的だ。これに関しては米国の3大TVネットワークの推移が興味深い。

 しかし本邦は高機能・高速通信の携帯通信サービスが欧米に先行し,これにディジタルTVがワンセグとして浸透しつつある。家庭のTVもディジタル化で双方向機能を獲得しつつある。ネットワークに繋がる薄型ディジタルTVの普及もTV業界にチャンスを与えつつある。新聞と雑誌もその存亡を掛けて,ネット社会のインターメディアリーとして変身している。

 繰り返すが2007年IT業界の最大の決戦はインターメディアリーの世界である。コンピュータを売らないコンピュータ会社がこの世界にどうかかわるか,これもコンピュータ会社の戦略である。

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