このところ首や肩のコリと頭痛がひどくて、すっきりしない状態が続いている。以前なら休日は趣味のテニスを楽しんでいたのに、最近は出かける気力もなく、リフレッシュしないまま、また月曜日を迎える。Nさんのひどい疲れが慢性的になりだしたのは、数ヶ月まえに、新しい上司がやってきてからのことです。

上司とウマが合わないだけ?

 上司の意に沿う方法やスピードで仕事をしないと、血相を変えて大声で問いただされる。機嫌が悪いと、書類を投げつけるようにして渡される。Nさんから何か報告をしようとしても、話を途中でさえぎって、一方的に指示を出される。それでいて、内容のくい違いが判明すると、ののしられる。担当業務そのものはこれまでと変わらないのに、上司が替わったことで、Nさんの毎日は、とてもピリピリしたものになったそうです。

 Nさんには、悪いストレスがたくさんかかっているようですね。ご存知のとおり、ストレスは生きていくうえでのスパイスのようなもので、適度であれば、それに対処することによって、わたしたちは、危険を回避したり、チャレンジを通じた成長をしたりすることができますが、大きすぎると逆に生きる力を減じることになります。それが原因で身体や心の健康が損なわれることは、すでによく見聞きされていることでしょう。

まずは相談

 ストレスが大きすぎるとき、身体に起こる反応に、頭痛、肩こり、腰痛、便秘、下痢、不眠(ぐっすり眠れない)などがあげられます。よくある症状ですが、心が悲鳴をあげているサインだとしたら、放っておくと、ある朝まったく動けなくなるというような重篤な状況になるかもしれません。休養が必要とわかっていても、仕事が遅れるのが不安で、無理を続けている方もおられるでしょう(強い不安そのものも症状ですね)。まずは、ちょっと、勤務先の相談窓口や近所の保健所などに相談してみられることをお勧めします。EAP(Employee Assistance Program)といって、従業員の様々な困りごとの解消を支援する仕組みを設けている会社もありますし、保健所にも健康のほか心理や福祉の専門家がいて、電話相談なども受け付けられています。何よりも大切なご自分自身を守るために、ぜひ早めに一度相談なさってください。

危ないのは上司かも

 それにしても、わたくしはこの上司の方がとても気になります。この方ご自身が、過剰なストレスを感じておられるのではないかと想像されます。仕事熱心で、負けず嫌い。目標達成へのこだわりが強く、いつも急いでいて、挑戦的な言動、警戒心が強いなどの特徴が、この方にはあるそうです。常に全力で頑張るため、高い業績をおさめてこられたそうですが、融通がきかず相手に緊張感を与えるため、周囲からは支持を得られないことも多く、ますます高圧的な態度になることもあるようです。実は、このようなタイプの方は、特に強いストレスを感じやすい傾向にあるのです。ご本人は自覚されていないかもしれませんが、この上司こそが問題(ある種の生きにくさ)を抱えておられる可能性が考えられます。心の問題といえば「うつ」などを連想される方もおられるかもしれませんが、それとは異なりますがこのような場合も、本人も関係者も日々の仕事生活が辛いものになります。

本人も周りも辛いです

 過大な競争心や焦燥感をもって、相手に対して攻撃的になるとか、部下を過度に働かすことに罪悪感をもちにくいようなひとが上司となると、部下のひとたちは、その影響をまともに受けて大きなストレスを感じます。また、仕事上の関係がなくても、早口で怒鳴るような声が耳にはいるとか、特徴的なイライラと落ち着かない動作が目にはいるだけでもストレス状態におかれ、「近くにいるのが耐えられない」と訴えるひともおられます。このままでは、周囲のひとたちも、どんどん元気をなくしていくのではないかと心配です。このような背景から、成果物の不具合や操作ミスなども発生しかねません。

 しかし、ともすると、チームとしての成果や利益が維持されている時点では、このような問題が見逃されているということも懸念されます。同僚や上位職からみれば、行き過ぎた言動に気づいていても、「彼は厳し過ぎるところもあるけど、熱心さの表れだから仕方がない」とか「嫌われ役を担ってくれるおかげで業績を確保できるので助かる」などと、見ないふりをされてはいないでしょうか。

組織として対応を

 ご本人のためにも、周囲や組織全体のためにも、この上司の方に、イライラや焦る感情をうまく扱えるようになっていただきたいと思います。部下から言い出すのは難しいでしょうから、マネージャ層のみなさんが、この上司のようなひとの存在を気にかけて、物事の捉え方や行動の仕方を見直してみることを促すのが、ひとつの方法です。このような場合、ご家族との間にも問題を抱えておられるかもしれませんし、カウンセラーなど専門家のサポートが有効な場合もあります。もちろん、マネージャ層の方々がEAPなどを利用して、アプローチ方法について相談することもできます。

 ストレスが特に大きいとされるITの仕事の現場で、パワハラ型上司(予備軍)への組織としての対応の重要性が増しています。同じ上司の元で、不調になるひとが連続するとか、(特に管理者で)真面目さや熱心さが行き過ぎているひとがおられる場合、根本的な対処をしないと、問題が繰り返されるでしょう。このケースに限らず、ある個人に生じた問題は、任用や評価の仕方、作業方式、物理的環境など、その組織のより大きな問題のアラートかもしれません。個人的なこととして片付けるのでなく、それが発生した土壌など、問題の本質に目を向けることが大切だと思います。

 それでは、今日もイキイキ☆お元気に。