先日,世にも珍しい,おそらく本邦初の対談の司会をさせていただく機会がありました。

 それは,毎日新聞「まいまいクラブ」の記者ブロガー「竹橋発」磯野彰彦さんと,産経新聞「iZa(イザ!)」の記者ブロガー「日刊サイタマ」片岡友理さんとの対談です。テーマは「記者ブログの今」です。

 それは公式な行事やイベントというよりは,ネットのオフ会に近いものでした。20人ほどのこじんまりとした会で,むしろ二次会目当てで盛り上がりを見せておりました。しかし,そこでの話とブログでの展開は,大変刺激的で画期的なものでした。

この対談に期待したユニークな7つの点

 私が,このユニークな対談の司会をお請けしたのは,主に7つの点で興味をかきたてられたからです。

1.記者ブロガーが見る新聞とブログの関係

 「馬には乗ってみよ」の諺(ことわざ)通り,ブログをやっていない人はブログの功罪を実感できないでしょう。だとすれば,新聞記者の方がブログを実際に書いてみて初めて,新聞に対してブログが優れている部分,劣っている部分を実感できるはずです。

 そのご感想を,忌憚なくお聴きできる機会がこれまではありませんでした。対談の司会者の特権で,そのあたりを突っ込んでお聞きできそうです。また二次会ではさらに親密にお話を伺うこともできましょう。

2.毎日新聞と産経新聞という組み合わせ

 しかも,この対談は,論調も社風もまったく異なる2つの新聞社の記者ブロガーの間で行われるのです。「まいまいクラブ」は愛読者双方向コミュニティサイト,「iZa」はニュース・ブログのポータルサイトという性格の違いもあります。当然ながら,読者層も,今後のネットやブログに対する取り組み方の違いもあるでしょう。

 対談は「似て非なる方同士」で,互いに知的好奇心を働かせながら話してこそ,盛り上がるもの。司会冥利につきる白熱した対談になりそうです。

3.編集局次長「ベテラン記者」と新メディア「若手記者」

 さらに,毎日新聞の磯野さんは編集局次長の立場にいらっしゃるベテラン男性記者,一方,産経新聞の片岡さんは埼玉県政・さいたま市政担当記者から新発刊のEXPRESSに移られた若手女性記者という違いもあります。

 一読すればお分かりの通り,自ずとブログに取り組む姿勢も考え方も違っていそうです。おそらく,新聞社内は,今後デジタルメディアへの取り組み方で世代間論争が広まるはずです。対談の前に書かれたブログを拝読しても,磯野さんと,片岡さんの期待と不安がうかがえます。

4.ファンブロガーの書き込みから1週間で実現

 今回のオフ会は,毎日新聞の磯野さんがご自分のブログで片岡さんの「日刊サイタマ」を紹介。そこに「日刊サイタマ」ファンの方が「オフ会をしよう」と書き込み,さらに「日刊サイタマ」の片岡さん本人も「オフ会を」と書き込んだことから実現したそうです。

 ファンがコメントに書き込んだ提言で,あっという間に会社とサイトの壁が壊れて,1週間後に話が実現したというところが,何ともブログ的で面白いところです。

5.記者ブロガーをファンブロガーが囲む会

 これが単なる記者ブロガーによる記者ブロガーのための対談だったら興味は半減です。しかし,今回は発案者でもあるファンブロガーまでが参加するのが魅力でした。

 こうした新聞社サイトに集い,記者ブロガーにコメントを寄せるような,新しい新聞読者は,果たしてどんな方たちなのでしょうか。そして記者ブロガーに何を期待しているのでしょうか。

6.対談よりも二次会がメインという会

 いきさつが書かれたブログ記事を読む限り,堅苦しい対談というより,その後の飲み会こそが興味の中心だとわかりました。そこで,より本音に近いお話を,色々お聴きできたら面白いはずです。

 さらに,参加したブロガーのみなさんが,その感想をどのように書くか,それを記者ブロガーのお二人がどれだけ許容して返信するかも楽しみでした。

7.なぜか門外漢の私が司会に指名された点

 さらに,私が司会に指名されたのも驚きでした。記者でも,ジャーナリストでもなく,どちらかという野次馬に近い立場の人間が司会を務めるのです。しがらみも業界常識もない分,私も興味本位のニュートラルな立場でお話をお聞きできそうです。

合同オフ会の様子を参加者みんなで実況中継

 さて,その時の様子はというと…,あえて私が書く必要もありません。

 オフ会(即ちイベント)前のいきさつ・募集・参加表明などのプレイベントから,二次会最中の実況中継,さらには,その後の総括・感想・お礼などのポストイベントまで,参加者のブログでフォローされたからです。

 これこそ,1回限りの一方的紹介にとどまりがちな新聞と,ブログコミュニティーとの大きな違いでしょう。しかも,その記事は記者・読者入り乱れて,なおかつ硬軟取り混ぜて書かれています。ですから,一連の記事を読んだ方は,このイベントをあたかも複眼で眺めることができるでしょう。

 たとえば,最もカジュアルな記事,片岡記者の「ただ今オフ会まっただ中」は,二次会の居酒屋で書かれていました。一次会二次会通しての,当日の和やかな雰囲気を感じ取っていただけるでしょう。

 もちろん,片岡さんは翌日「またやっちゃいました!垣根をこえたOFF」という記事で,真面目な総括もされています。

 デジタルメディア研究所の橘川幸夫さんは「ブログは建前ではなく本音のメディア」だと看破されています。片岡さんのブログの人気を見ておりますと,今後は建前と本音,硬軟両面をうまく表現できる記者ブロガーがアクセスを集めそうです。

 最もフォーマルな報告は,やはり産経新聞iZaの記事「産経VS毎日 記者ブロガー,初の合同オフ会」でしょう。