前回は,私の「5分間指導」の具体的事例を紹介しました。

 「抽象的に・・・ぼやっと考えるのではなく,頭に明確なイメージが浮かぶよう具体的に考える」ということと,「仕事があって,それにあわせて時間を消費するのではなく,まず時間があって,それに合うような仕事の方法を選択する」ということを説明しました。

 この2つの話を紹介したところ,意外に多くのアクセスがあり,さまざまなコメントをいただきました。その9割以上は好意的なものでしたが,一部批判的なものもありました。

「抽象的と具体的というのはお前の言う意味で使うのではない。お前は馬鹿か!」
「部下がかわいそう。嫌な上司だな!」
「賢い部下には,いいけどね・・・」

 何にでも,「人それぞれの見方」があります。私には私の「主張」と「根拠」があります。少なくとも,私は,「机上の空論」で皆さまに自分の意見を伝えているのではありません。

 今,この瞬間(エッセイを書いている)にも私は人を育てるための「5分間指導」をしています。その経験を通して,これまで上手くいった(実績があった)方法を,紹介しています。

 「事実に基づいた主張は重い」ということは,分かっていただけると思います。

 私の「5分間指導」を「どう受け止めていただく」かは,読み手の自由です。良い部分だけ・・・使える部分だけ選択して受け入れてもらえればよいと思います。

 では,今回の話をしましょう。

"逆切れ"させてはいけない

 前回で私が,岡田を追い詰める感じで話しをしたのが気になった方も多いと思います。

 最初に断っておきますが,私は岡田に厳しく指導していましたが,人間関係に問題はありませんでした。あくまでも,仕事上の指導と人間性は別物として,二人の間で話し合って合意していたからです。

 岡田が私の部下になったとき,最初の面接で岡田に希望を聞いたところ「もっと仕事力をつけたい」という希望でしたので,指導することにしました。その際,「仕事をうまく進めること」と「感情」は分離するように伝えていました。

 私が部下を指導する際には,最初に必ずこういう形で,「約束」をさせ,指導する立場と指導される立場の「役割」と「責任」を同意しておきます。人は,自分で宣言したことを守ろうとします。これを「行動一貫性の法則」と呼びます。

 人間は,自分で行動選択したことの整合性,一貫性を保とうとする性質があります。これを利用して,「被指導者が,指導を受ける環境を整備する」のが,指導を上手く進めるコツです。

 私は,岡田に「自分は指導を受けたい」と宣言させることで,岡田の「逆切れ」を防止する必要がありました。

 これをしておかないと,岡田は「なぜ,厳しい指導を受けるのか」と不満に思ったり,「自分はそうは思わない」と反発したり,「指導をやめろ」と反逆する,いわゆる「逆切れ状態」になるからです。これは,両者の人間関係を壊す非常に不幸なことです。

 人間はいい加減で,苦よりも楽を好む動物です。だから,指導していると次第に気分を害し,指導者の言葉を聞き入れなくなることがあります。それでは,指導効果はありません。そこで,そんなプチ切れ状態(やや腹を立てた状態)になったら「お前が望んだんだから」と言うのです。

 私は,こういう風に言ってきましたが,その都度,プチ切れした部下は「この・・・」と言い出しそうな言葉をぐっとこらえて,また,話を聞き入れるようになります。

 このように,自分で「指導してほしい」と宣言したことは後で効いてきます。「5分間指導」をはじめる前には,こういう配慮が必要なのです。

 次回は,”仕事を丸投げする中間管理職な部下”の指導法を紹介します。

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