• HTML
  • CSS
  • JavaScript(Ajax)
  • Google Maps API
  • PHP
  • MySQL(地理データを格納)
  • 日本語形態素解析システム
  • 地理情報関連技術(緯度経度やフォーマット変換など)
  • Google Earth KML(XML をベースとした3Dプロット)
  • JPEG 画像への Exif によるメタデータ付与
  • RSS 2.0
  • CMS のプラグイン開発

 これはG助教授の研究室の4年生のI君が,何と独学で勉強しているIT技術要素です。先生の専門は,生態学,エコロジー,環境問題や地理情報科学です。地域情報ポータルを研究室で運営されています。G研究室はPBL(Project Based Learning:プロジェクトベース教育)プロジェクトのクライアントです。

 今,SEでこれらを使いこなせる人はどれほどいるのでしょう?I君はSEではありません。優秀です。優秀だけでは無理です。研究室のneedsやwantsがI君にあるから,独学でも勉強していけるのです。EUD(エンドユーザー開発)です。

 ITの技術領域は,地理情報システム(GIS:Geographic Information System)とセマンティックWebです。本文中から文字列を形態素解析で抽出し,全400ページのタイトルを検索し動的リンクをつけます。「湘南テニスクラブ」を「湘南」「テニス」「クラブ」に分け,検索します。湘南ゴルフクラブ,湘南ファミリーテニス…,色々なものがヒットします。それらを有効度の高い順で編集します。有効度は検索者によって違います。

 セマンテックって意味論です。丸の内にある歯医者を探したい人が「丸の内」「歯医者」で検索したとします。

  1. 那覇の丸の内の歯医者が…
  2. 丸の内で勤務しています。この前歯医者に行ったのです…
  3. 田中デンタルクリニックは,オアゾの中に…

 欲しい情報は3だけです。通常の検索では1と2がヒットし,3はヒットしません。3をヒットさせるのがセマンテックWeb(検索)です。どのようにしたらヒットできるのでしょう?

 住所と思われる文字列を形態素解析で抽出し,緯度経度に変換して地図上にマッピングします。人間がダイナミックに地図上にプロットした情報とか別ルートで取得された情報と緯度経度で比較し,同一住所かどうかを認識します。ここらは既に学生のI君が,独力で完成しています。

 G研究室はフィールドワークがメインです。里山や農家や自治体や企業にどんどん出向き,地域情報ポータルに取り込みます。そんな時,フィールドワーカー(主に大学院生)には,こんなことをしたいとの思いや,漠然たる気持ちが芽生えます。システム要件の源流です。そんな状態でフィールドワーカーはI君と会話します。優秀なI君はG研究室の仲間ですから,フィールドワーカーのやりたいことを理解し,ITでのソリューションを提案します。

 漠然な思いのフィールドワーカーは,I君からの提案で,自分が本当にやりたいことに気付きます。驚きとともに嬉しくなってもっとアイデアを捻り出します。そんな相乗効果が生まれます。同じ研究室の共通目標,共通インターフェースがあるからです。HowとWhyでWhat(要件)をブラッシュアップし,本質的な問題が発見され,最適な解決(ソリューション)案にたどりつきます。

 そんな環境で,PBLの参加メンバーはどのように対応するのでしょう?I君の構築下請け?I君と共にそんな打ち合わせに参画し,アイデアを出すこと?そのためには,ユーザーの思いを共有する。まずフィールドワークを一緒にやらねばなりません。G先生は「畑でのフィールドワークが終ったら,皆で焼肉食べに行こう!」とおっしゃっていました。

 「100聞は1見に如かず」「100見は1行に如かず」。ユーザー現場に行かない,行きたくないSEが増えていませんか?システムとは,個々の要素を有機的に組み合わせた全体系です。それをエンジニアリングの視点から解析し,インテグレーションするのがSEのミッションです。そもそも机上論で済むはずはないのです。

 「2割3割の改善は難しくても,2倍3倍の改革は簡単」と言ったのは松下幸之助さんです。スキームをガラっと変え,発想の転換をしなければならないから。ユーザーを驚愕させるためには,改善ではなく改革を狙い,考えて考えて考えなくては無理です。でも,こんなチャレンジングな仕事のやり方はワクワクしますネ。

 今のSEはPMBOKや管理や契約…,面白く仕事をしていますか?モチベーションを上げ,ドーパミン報酬系を活性化させた方が,はるかに効果的です。何をつくるかを曖昧にしたまま,プロジェクト管理が第一優先で良いはずがない!SEの原点に戻るベキです。PMBOKを金科玉条にしている本末転倒のITベンダーも少なくない。女衒下請構築ビジネスのSEに,“お客を驚かす”なんて理解不能です。

 お客を驚愕させるには,ITのターゲットドメインであるお客のリアルワールドに入っていかねばなりません。少なくともシステムインテグレータが要求定義をおろそかにして,構築作業でSEのドーパミン報酬系が活性化するのでしょうか?新しい技術でワクワクすることは,お客を驚愕させることではありません。圧倒的なQCD(Quality,Cost,Delivery)に挑戦するならワクワクも驚愕もあります。挑戦は失敗のリスクがあるから面白いのです。人間は不確かなことを喜ぶようにできているんです。

 次回はこのプロジェクトの続き,地図情報とGooglAPIです。