「あるときは深夜まで残業し、またあるときは休日にも出勤して、一生懸命に開発・保守しているこのシステム。打ち合わせなどで会うのは、お客様企業の情報システム担当の方々が中心だけど、実際には、どんな人たちが、どんな風に使ってくれているのだろう。」自分が携わったシステムがどのように役立っているのか、Kさんはとても気になるそうです。日々多大なエネルギーを投入している仕事なのですから、それがどのような効果を生み出しているか、知りたくもなりますよね。

実際どうなのでしょう

 もちろん、ものをつくる行為そのものが楽しいという人もおられるでしょう。また、それを構想するところにワクワクするひと、予定どおりに正確に完成させることに満足を覚える人もおられるでしょう。そして、Kさんのように、自分がつくったものが誰かの役にたつことが嬉しい人もおられます。このような方にとっては、そのシステムによってお客様企業にどのような効果をもたらしたかを知る瞬間にこそ、仕事の喜びがあるわけですが、それを知るチャンスは豊富にあるとは限らないようです。

 要件を決める段階でエンドユーザーと話をすることもあるでしょうけれど、外部ベンダーの立場で参画するような場合ですと、ユーザー企業の情報システム部門の方や、プライムベンダーの方々とのやりとりが中心で、エンドユーザーとは接点がないこともありますよね。いずれの場合にも、お客様のお客様を含め、そのシステム(仕組み)に関わる様々な人々の声を聞くとか、利用されている現場をみる機会は少ないかもしれません。これでは、仕事のやりがいも感じづらいですよね。

直接聞けると、やる気倍増

 IT業界とは異なりますが、わたくしたちにとって身近な或るエネルギー関係の会社の方からこんなお話をうかがいました。(身近なエネルギーだけに、24時間365日問題なく供給されるのが当たり前であり、少しでも滞れば大きな影響を及ぼすことや、また、社内のあらゆる役割のなかには、お客様と接触のない社員もおられるといった側面では、ITプロに似たところもあるようです。)ある研修の場にゲストとして来られた、ご縁のある小売業の方が、そのエネルギー企業が提供する商品やサービスのおかげでいかに自分たちが助かっているか、特に天災の折にどれほどありがたかったかを熱く語られたのだそうです。受講者だけでなく、話を耳にした多くの社員の方々が、自分たちの仕事を誇らしく思い、安全のための日々の地味な作業の重要性なども再認識し、がんばろうという気持ちを強くしたとのことでした。

 会社によっては、定期的に顧客満足度調査を行い、その結果が社員に伝えられることもあろうかと存じますが、利用者から直接的に、商品やサービスの効果や、それに対する感謝(時には不満も)の言葉をかけられるというのは、また格別なものだと深く考えたことでした。

 このエネルギー企業の方と、研修で語られた小売業の方のおふたりから、そのときの様子をお聞きしながら、ITプロの方々にも、このように利用者の声に直接触れる機会がもっとあればと思いました。実はおふたりの会社には、いずれもIT子会社がおありです。主として親会社のシステム開発をしている、子会社のITプロのひとたちや、その子会社から仕事を請け負っている、別のベンダーのITプロにも、実際に利用しているひとの声を聞かせていただけないものかと尋ねますと、おふたりとも「ぜひ話しましょう」「そのシステムを使っている現場にも来ていただければ」とおおいに盛り上がってくださりました。そのお気持ちに感謝と、日頃の仕事を通じて信頼関係が築かれていればこそのことと、改めて感じました。

プロフェッショナルとしての、誇りとやりがい

 ものづくり自体が好きであるのも幸せなことですが、顧客企業のビジネスを成功に導くのに役立つこと(営利企業に限らず、組織や個人のミッション実現に貢献すること)が、ITプロフェッショナルとしての大事な仕事ですので、Kさんのような、自分がつくったシステムが利用者に役立つことへのこだわりは、大変重要ですよね。

 先にも触れたとおり、ITシステムの効果について直接フィードバックを受けることは多くないという現状もあろうかと存じますが、「所詮、指定されたとおりに作業をするだけだ」などと、やる気を失ったり単なる便利屋に留まるのはプロとして残念です。

 ソリューションを提案・提供する以前の段階から、あらゆる機会を捉えて、顧客のビジネスをリアルに捉えることに挑戦しつづけることが大事だとわたくしには思われます。役割や立場による制約から、他のひとを介して知るということもあるかもしれませんが、たとえ一時的に面倒がられることがあったとしても、先の方々のような例もありますから、顧客により貢献するためという目的に根ざして誠意をもって粘り強く。そうして、自分の仕事が顧客や社会に良い影響をもたらしていると知ることによって、プロフェッショナルとして自分の仕事に誇りをもち、自分自身を元気づけることにつながると嬉しいですよね。

 それでは、今日もイキイキ☆お元気に。