ブログに出会った時から「あればいいな」と思っていたサービスが,ようやく登場しました。それは,誰でもブログ感覚で簡単に情報更新できるインターネットショップの構築・運営ツール「ドリコムCMS commerce(コマース)」です。

 ドリコムと聞くと,無料ブログASPサービス「ドリコムブログ」を思い出す方も多いでしょう。そのブログ感覚の使いやすさはそのままに,低価格高機能でWebサイトを構築できる「ドリコムCMS」は,これまでも企業のお手軽情報発信サイトに活用されてきました。

 その「ドリコムCMS」をベースに,お客様にとっても店舗運営者にとっても使いやすいユニバーサルデザインWebの発想で電子商取引機能が付加されたのが「ドリコムCMS commerce」です。

 自社ドメイン(URL)を使えて,レンタルサーバー,クレジットカード決済付きのショップ機能,メールマガジン発信機能などすべてを含めて,初期費用7万8000円,月額3万1000円(共に税別)で始められる手軽さなのです。

 しかも,このサービスには,私が社外役員を勤めますカレンのマーケティングやデザインノウハウも凝縮されています。

 一見すると電子商店初心者向けに見えるこのシステムを,実はインターネット通販歴10年のわがT-GALAXY.comでも導入しようとしています。それはブログ商店ならではの大きな魅力があるからです。

電子商店は開業も運営も大変だった

 これまで,企業が新たに電子商取引(EC:Electronic Commerce)を始めようとすると,いくつかの難問がありました。

 ひとつは,もちろん開業時の店舗デザイン・初期費用の問題です。あれこれ頭を悩ましながら,開店するまでに多くのエネルギーが費やされます。

 しかし,本当に大変なのは開業した後です。日々行う商品情報ページの追加・削除といった更新作業に,予想外の手間と時間がかかるのです。

 美しい電子商店を作ることは,優秀なWeb制作会社に頼めば,さほど難しいことではないでしょう。しかし,毎日の情報更新まで,外注業者に頼っていてはコストが合いません。かといって,日々のページ更新のためだけに,HTML言語やCSSなどを駆使したWebページを制作できるデザイナーを新たに雇用することも現実的ではないでしょう。

 そこで,やむなくネット店長が見よう見まねでプログラミングを覚えて,コツコツとページ更新をするケースが多かったはずです。あるいはデザイナーが作った雛(ひな)形に,せっせとコピーペーストをしてページを作る店長も多かったでしょう。美しいデザインを素早く作れる「Webデザイナーの能力」と,お客様に喜んでいただけるお声がけをする「ネットあきんど」の能力を兼ね備えていれば良いのですが,そんなスーパー店長を見つけるのは大変なことです。

 電子商店を繁盛させる要は,商人としてのおもてなしの心に富んだネット店長です。商品ページの追加や削除ばかりに貴重な時間を取られては,肝心のメルマガやブログでの情報発信や,お客様への心のこもった応対に支障が出てしまいます。さらには,繁忙期に新商品やお勧め商品の店舗陳列が間に合わないという事態も起こるかもしれません。

 そこで,ネット店長が情報を更新するの手間と気苦労をなくして,「ネットあきんど」としての本分をまっとうしてもらうような簡便な仕組みが必要だったのです。

ショッピングモールに出たら出たで悩む

 それなら楽天などネット上のショッピングモールに出店したら良い,と思う方もいらっしゃるかもしれません。たしかに,一から自前でショップを作るよりは,簡便な店舗運営の仕組みが既に用意されています。圧倒的な集客力を誇るモールに出店することで,来客も期待できるかもしれません。

 ただし,既にインターネット通販を手がけている縁者に,モール出店についての評価を尋ねますと賛否両論です。既に自前のショップでも成功を収め,モールを新規顧客開拓と売上拡大に使っているような先進ショップはおおむね好意的ですが,モールだけに出店している人にはいくつかの悩みがあるようです。

 かつてはモール出店で大きな集客が期待できたようですが,昨今はモール内に競合店が増えて,それなりの広告費負担が必要になっているのです。また売上に応じた課金もあるので,出店費用,広告費,売上課金などの諸コストを考えると,一定以上の粗利率がないと採算が合いません。ところが,ショッピングモール内で商品別価格を簡単に比較できる機能があるため価格競争が激化して,独自商品以外は高い粗利益率の確保が難しいと聞きます。

 また,メールマガジン登録者など,本来は顧客情報=通販企業にとって最も大切な財産が,ショッピングモール側の財産となって非開示になっているケースもあるようです。自社ドメインが使えないこと,売上課金の料率値上げの不安があること,自社サイトにリンクできないことも問題点として話題にのぼります。

 ですから,ショッピングモールでしか電子商取引を展開していない人の多くは,いつか自前のショップを持たなければならないと考えているはずです。

ブログだから自ずと検索エンジンに強い

 そんな,ショッピングモールからの独立や,新規開業を考えている経営者や店長にとって,第一の課題は集客でしょう。広告コストが限られているとしたら,GoogleやYAHOO!といった検索エンジン経由でのローコストの集客に重きを置かねばなりません。

 この時,ブログベースのECショップには大きな利点があります。ブロガーの方なら既にご体験されているように,現状ではブログは構造上,検索エンジン対策に長けているからです。

 そして,何より大切なのは,誰でも情報更新が短時間でできるようになることです。検索エンジン対策の王道「毎日更新」が可能になるのです。

 現状では,多くの検索エンジンは,

  1. 1週間前に更新したサイトより   今日更新したサイトを
  2. 週に1度だけ更新したサイトより  毎日更新したサイトを
  3. ページ数が少ないサイトより   ページ数が多いサイトを
高く評価する傾向があるようです。

 ブログベースの商店であれば,現実の繁盛店が日替わりで新鮮なおすすめ商品を一等地に並べるように,毎日のように商品を追加し更新することができます。そして,店舗と商品の鮮度を保ちつつ,品ぞろえを充実させることができるのです。

 その結果,Googleなどでのキーワード検索でも上位に表示されるようになれば,ますます来客が増え,繁盛するはずです。

ブログだからRSSで新商品情報を配信

 もう一つブログベースの電子商店の特長を挙げるならば,リピートのお客様などに,RSSリーダーに登録してもらうことで,新規登録商品のご案内ができる点でしょう。

 RSSリーダーは,あらかじめお気に入り登録をしたブログに新たな記事が追加されたら,お知らせが届いて簡単に読める機能です。これをうまく活用すれば,日替わりでおすすめ商品の情報を,新聞の投げ込みチラシでご案内するように,優良顧客にお届けできます。

 ちょっと使い方を工夫すれば,期間限定のセール商品や,数量限定の希少商品を,販売開始日に商品登録するといった活用ができるはずです。ショップ上で,こうした「お得情報」をお伝えしながら,お客様にはRSSリーダーへの登録をお願いすると良いでしょう。これが,お客様と直結する文字通りホットラインになるのです。

 もちろん,競合店がブログ商店を始めたら,そのブログもRSSリーダーに登録いたしましょう。これは,競合店のチラシを集めて比較するのと同じ意味を持ちます。当然ながら,競合店の店長もこちらの情報を収集しているはずですから,当初は競合が激しくなるかもしれません。しかし,お互いが収益を挙げようとする結果,長期的には,過当競争を避けてお客様や商品での棲み分けが起こると考えます。

約100種類のメールマガジン文例集を参考に発信

 RSSリーダーを誰もが使うようになるまでは,まだしばらく時間がかかるかもしれません。そこで当面は,資料請求してくださったお客様,ご購入をしてくださったお客様とのコミュニケーションは,店長が熱く語るメールマガジンが中心になるでしょう。

 しかし,メールマガジン発信も,初心者店長にとってはハードルが高い技能です。この「ドリコムCMS commerce」には,業種別,状況別にまとめられた約100種類のメールマガジン文例集が標準で付属しています。

 この文例集は,大企業を中心にeメールマーケティングに豊富な実績を持つカレンが作成したもので,カレン流「メールマガジン道」のエッセンスでもあります。顧客心理を重んじて,読み手の心を捉え,購入に繋げるための同社の実践的なノウハウが,これから電子商取引を始める多くの企業に公開されるのは意義深いことでしょう。

 ECサイトを始めたばかりの店長であっても,日々の店長ブログを情報源にしながら,このメールマガジンの雛(ひな)形に当てはめれば良いのです。質の高いメールマガジンを手軽に発行して,売上の向上を図ることができるでしょう。

誰でも買いやすいユニバーサルデザインWeb

 電子商店を開店する際には,どうしても店舗のWebデザインにばかり関心が向かいがちです。しかし,電子商店成功の要因は,1に商品・サービスの魅力,2に店長の情報発信力,3に検索エンジン対策…,その次あたりで,ようやく店舗のWebデザインになるのではないかと考えています。

 その店舗デザインにしても,ここまでインターネット通販が一般化した昨今,眼を惹くデザイン,奇抜なデザインよりも,誰もが迷わず買いやすいデザインの方が重要になるはずです。

 そもそも,どこにどんなメニューがどんな名前で並んでいるか,買い物カゴに入れてから注文が終了するまでに,どんなフローでどんな文言で誘導されるかなどは,統一されていても良いはずです。極論すれば,電子商店の仕組みはひとつ,ユニバーサルな方が顧客満足度は高いのです。

 例えば,どこのコンビニに入っても,迷わずおにぎりや雑誌が買えるのは,顧客心理や買いやすさを追求した結果,どこも良く似た店舗構成になっているからでしょう。

 さらに昨今は,シニアからジュニア世代まで,さらには障害をお持ちの方まで,ネット通販を愛用されるようになったのです。そこで,ようやく,ユニバーサルデザインやバリアフリーの発想が,電子商店にまで活かされる時代になりました。

 メニュー構成や買い物カゴ以降のプロセスが最適なユニバーサルデザインになっていれば,店長は買いにくさでお客様を逃す心配をしなくてもすみます。商品マーチャンダイジングと顧客コミュニケーションに専念できるわけです。

決済代行から物流・会計代行までワンストップサービスを

 買い物の後は決済ですが,「ドリコムCMS commerce」にはクレジットカード決済機能まで付いています。カード決済の手数料は個別にかかりますが,通常は月々2万円近くかかるカード決済の固定費用も,1カ月3万1000円の定額料金の中に含まれています。すぐにカード決済可能のショップを開店することができるわけです。

 個人情報保護の観点からすれば,お客様のクレジットカード番号を保有したくない商店も多いでしょう。その点からも,こうしたASPサービスを活用するのが有利です。

 こうして,これまで分断されていたレンタルサーバー→ホームページ作成・運営→買い物カゴ→決済→メルマガ発行が,簡便なワンストップのASPサービスで提供されることになりました。これは,予算や人材が限られた中小企業にとっても,スピードを重んじる大企業の一部門にとってもありがたいことです。

 しかし,まだリクエストしたいことがあります。それは,昨今,ようやく日本でも聞かれるようになったサードパーティロジスティクス=3PLと呼ばれる物流代行サービスとの一体化です。例えば,Tシャツを100枚入りケースでお預けしておき,お客様からの注文と決済確認データをお送りすると,個別配送を安価に代行してくれる3PL業者のサービスがあったら,どんなに便利でしょう。

 また,個人通販の受注データを送ると,会計処理や試算表作成を代行したり,さらには業務系システムとの受け渡しをしてくれるような会計代行サービスも欲しいところです。

 こうして,情報発信→受注→決済→物流→会計まで一体化できる安価なワンストップサービスが完成すれば,店長1人,あるいは社長1人でネット通販事業を立ち上げることもできるはずです。

 今後,ブログの簡便さに注目した通販ワンストップサービスが,続々登場すると思います。そうなれば,中小企業なら1社1ブログ商店時代が,大企業なら1事業部1ブログ商店時代が到来することでしょう。