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 9月半ばに、NTT東日本のIP電話サービス「ひかり電話」で障害が発生しました。そこで今回は、ひかり電話のトラブルと一緒に、Skypeの耐障害性を考えてみたいと思います。

 最初は9月19日に、ひかり電話でふくそうが発生し、電話がつながりにくくなりました(関連記事:「NTT東のひかり電話でトラブル,通話集中でつながりにくく」)。このトラブルを見て、P2Pファンの僕は、「やっぱりIP電話はP2Pシステムだね」と思っていました。この連載でも何度か話している通り、Skypeで使うP2P技術はスケーラビリティ(拡張性)や耐障害性に優れていて、P2Pならこうしたトラブルはないと思ったからです。

 例えばSkypeの場合、通話の呼を中継するサーバーはなく、ユーザーの中から必要に応じて選ばれる多くのスーパーノードがサーバーの役目をします。ユーザーが増えると、その分スーパーノードも増えるので、ふくそうが起こるような事態にはなりません。この仕組みのおかげで、現在700万人を超える人々が同時にSkypeを使っても、Skypeネットワークは動作し続けているのです。ユーザーが増えても設備投資があまりいらないという特徴は、ビジネスを進める上でもとても素晴らしいことだと思います。

 P2P好きの私がこんなことを考えていたら、続報が入ってきました。ひかり電話の障害は、IP電話同士をつなぐセッションサーバーに加えて、IP電話と既存の電話網とをつなぐサーバーで発生していたというのです(関連記事:「【続報】NTT東のひかり電話の発信を50%規制,「安定運用のため」」)。既存の電話網との接続部分は、P2P型電話システムでも泣き所です。

 Skypeネットワークと電話網とをつなぐのは、「Skype Gateway」と呼ぶシステムです。Skype GatewayはP2Pシステムではなく、サーバー型のシステムです。日本のSkype Gatewayが故障したら、海外のSkype Gatewayを迂回するようにはなっていますが、基本的にはIP電話と同等の耐障害性になります。つまりこの点では、P2P型電話システムは他と比べて障害に強いとは言えません。

 さらにその後の続報で、ひかり電話の詳しいトラブル原因がわかってきました。システムの容量不足ではなく、ソフトウエアの不具合がきっかけだったようです(関連記事:「【続報】NTT東がひかり電話の障害原因の一部を特定,「ソフトに不具合」」)。ソフトの不具合は、サーバー型でもP2P型でもよくありますが、P2Pの方が修正しにくいという課題があります。サーバーのソフトウエアの不具合は、数台のサーバーで修正すれば済みます。ところがSkypeでは、世界中のユーザーから選ばれた数多くのスーパーノードのソフトウエアをすぐに修正できません。

 このように、ひかり電話のトラブルを追いながら、僕は喜んだりがっかりしたりしていました。拡張性ではよい面が多いP2P型のSkypeにも課題があります。ソフトの修正などの課題を克服したP2Pソフトウエアを作る手法の確立が、これから必要になってくると思います。