東京ゲームショウ2006が9月22日から開催されます(一般公開は23~24日)。任天堂の「Wii」,ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の「プレイステーション 3(PS3)」など,新型ゲーム機の発売を前にして,ゲーム業界も盛り上がってきているようです。

 私もいい歳をして,ゲームが大好きなので,新型ゲーム機にはちょっと期待しているのですが,買ってしまったら当分,仕事がおろそかになり,このコラムもお休みするかもしれません。それはともかく,エンタープライズ・プラットフォーム2006のスペシャルインタビューで,スクウェア・エニックスの和田洋一社長のインタビュー記事を読みました。

 映像にしても音楽にしてもシナリオにしても,ゲームが登場したときにやりたかったこと,頭の中でイメージしていたものが,今はそのまま表現できるようになった。これまでは「ゲームで表現する」ということにいろいろな制約があって,その範囲の中で作ってきたのですが,今はほぼ制約がない状態。「では次に何をやるのか」が重要なのです。

 ――というコメントに共感を覚えました。ゲーム業界も次の新しいものを創造するために,異分野の人たちをどうやって巻き込んでいくのか…。ゲーム産業は第2ステージにさしかかっている,というお話でした。

 たしかにファイナルファンタジーの3Dアニメーションだって,これ以上,映像や画像が美しくならなくても良いのではないかと感じます。期待するのは,もっと新しい「何か」です。

 例えば,携帯電話だって今はもうすでにただの「電話機」ではなく,私たちの生活の中で,今までなかった「何か」になりつつあります。それはきっと,インタビューにあったように,携帯電話業界が新しい分野の人たちと共同して開発しているからでしょう。同じようにゲーム産業にも,異分野の人たちがどんどん入って,今までになかったようなものができることを期待します。

デザインの技術を必要とする分野はまだ多い

 テクノロジーとデザイン,エンジニアとデザイナーが密接な関係にあるのは昔から認知されてきたことですが,携帯電話のデザインを工業デザイナーではなく,グラフィックデザイナーにさせてみたり,病院の建築を建築家ではなく,グラフィックデザイナーを起用するなどの新しい試みがなされ始めたのはここ1,2年のことです。こういった流れに乗って,おそらくソフトウエアのインタフェース,アイコンやパッケージのデザインはもっともっと良くなると思います。

 デザインは,人の感情や潜在意識にダイレクトに作用し,行動や考えに大きな影響を与えるものです。その専門的な技術を今まで以上に取り入れる必要がある産業や業界がたくさんあると私は感じています。しかし,残念ながら,中小企業の経営者の皆さんは,デザインの重要性に対する意識が低いと言わざるを得ません。

 技術が良いから,サービスがいいから,だけで受け入れられる(売れる)時代ではなくなってきているのは以前から言われています。では,目立った変化はまだ起こっていないのでしょうか。

 いいえ,大きな企業はそれに気がついています。携帯電話,自動車,不動産,流通などの産業は変化しようとしています。和田社長のコメントにあるように,これからは異分野の人たちと上手にコラボレーションすることが,業界,企業,そして個人にも必要になってくると思います。


デザイナーと寿司屋,デザイナーと葬儀屋,エンジニアと風俗,エンジニアとアパレル…。今はミスマッチだと思われていても,いずれ当たり前になるかもしれません。