オンラインシステム登場前のバッチプログラムの時代には,ソリューションなんて言葉はありません。「作って」というユーザーの要求から,「あのファイルとこのファイルでこうしてあーして」と考えて,アプリケーションを作りました。実に楽しい作業でした。

 ITの急激な技術進歩で,ITのカバレージ範囲も急速に広がりました。ビジネスをタ-ゲットドメインとするなら,そのターゲットドメインには問題があります。ユーザーが欲しいのはITではなく問題解決です。しかし,どのような問題を設定するかで,解決法は180度違います。解決もITだけでなく,ITをツールとしたインタンジブルズ(無形資産)の改善もあります。それらは要求定義であり,経営戦略と現場がぶつかり合うビジネス中流(タクティクス)の交通整理です。

 経営資源を使い切り経営成果を上げる機能が,戦略のインプリメントとしてのビジネスプロセスです。そのビジネスプロセスの中に,ITは神経系のようにピタッと分離不能で張り付いています。交通整理とは戦略のインプリメントへの擦りあわせ合意形成です。アプリケーションの仕様も,ビジネスプロセス策定作業と一緒に決めなければなりません。

 顧客の要望をシステム仕様に落とすことは,上で述べたように楽しい仕事として,SEやプログラマがやっていました。それが,範囲も難易度も複雑性も増して来ました。

 オンラインは,バッチのように後追いではなく,ITと会話しながら仕事を進めるオペレーショナルなレイヤーを扱っています。だから,バッチSEの一部はオンラインの世界には登ってこれなかった。と同時に,開発規模が爆発し分業化が進み,構築専門業が生まれました。

 それに戦略が加わり,イノベーティブな部分が増え,部分最適から全体最適になって来たのが昨今の状況です。ここで,テクノロジードリブンの構築SEの価値は減衰します。顧客価値が変わって来たからです。情報子会社は,親会社の経営戦略のインプリメンテーションをITから支える役割が急増しました。情報子会社から親会社への逆流現象が起きているのも,時代の必然です。


システムとは個々の要素を統合したもの

 アプリケーション構築専業のITベンダーを,SI'erとかソリューションベンダーと呼ぶのは間違っています。下請開発屋をSIと呼ぶのは詐欺犯罪行為です。顧客の要望にコモデティのような定番や一般解を提案するのも,ソリューションではありません。顧客向けのアプリケーションのスクラッチ開発も,ソリューションではありません。

 ユーザーが「照会画面を作ってくれ」と言ったら,「どんな画面にしましょう?」と言うのがSE脳(How)です。「何故必要ですか?」と質問するのがコンサル脳(Why)であり,ソリューションです。Whyを発することができるかどうか?そのためには会話が成立する必要があります。ユーザーとの間で,ビジネスドメインで一部分でも情報共有がなれればコミュニケーションは成立しません。業務知識はその一つです。

 分業化によって,ユーザーとベンダーの境界領域が分断され,空洞になり深い谷ができてしまったのです。その谷を埋める(橋をかける)ニーズが,今,急速に高まっているのです。「真のソリューションベンダー」への待望です。

 “システム”とは「個々の要素が有機的に組み合わされ,まとまりをもつ全体体系」です。それをインテグレート(統合)するのがシステムインテグレーションであり,それを担当するのがSE(システムエンジニア)です。要素技術に分業するのとは,全く正反対の仕事です。真の意味のシステムインテグレータの役割りを,システムインテグレ-タ自身が忘れていることが,最大の問題です。