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東大名誉教授 板生清の情報・環境・社会

ウェアラブルコンピュータの未来
──ひとり一人の情報空間を創り出す

2006/09/05

図1 技術の富士山。ウェアラブルコンピュータは,これまでに開発されてきたあらゆる情報通信技術を結集することによって実現される
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 ウェアラブルの最終ゴールは,キーボードなしのコンピュータである。欲しい情報を,いつでもどこでも気軽に,あるいは無意識に,瞬時に取り出したり,記録したり,送信したりすることができるツールだ。

 これまでのように不恰好で,扱いにくく,わかりにくいコンピュータとは違うインタフェイスを持ち,様々な機能を搭載することが不可欠となる。ウェアラブルが目指すのは,まったく新しいかたちのコンピュータであり,センサであり,メモリであり,通信機器であり,ありとあらゆる機能をもった,コンパクトかつしなやかなデバイスと言える。

 しかし,この技術は突然出現するわけではない。コンピュータの進歩,情報機器デバイスの小型化・高性能化,様々な技術的蓄積の上にはじめて可能となる世界なのだ。つまりウェアラブルは,図1に示すように,これまで開発されてきたあらゆる情報通信技術を結集することによってのみ実現される。

ひとり一人のニーズに合わせるのがウェアラブル


図2 人間が存在する空間。「屋外」→「屋内」→「自動車」→「服」のように狭くなるに従って,個人のニーズとのマッチングが強く求められるようになる
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 いまユビキタス情報社会といわれる中で,ウェアラブルコンピュータとネットワークの間の役割分担は,技術と経済性の観点からも常に流動的である。ユビキタス情報社会では高度に発達したネットワークが張り巡らされているので,ウェアラブルコンピュータの役割は小さくてもよい。しかしひとたび個人に特有なニーズに合うような情報空間を作り出そうとすれば,各人が持つウェアラブルコンピュータにハードとソフトを内蔵することが経済的であり,便利であり,快適である。

 図2に示すように,人間が存在する空間が「屋外」→「屋内」→「自動車」→「服」のように狭くなるに従って,個人のニーズとのマッチングが強く求められるようになり,最後の「服」ではひとり一人のニーズに合った1対1の完全なマッチングが求められる。

 究極のウェアラブルは,かくして服とともにある。ここでは人間のバイタルサイン(生体情報)に基づく暖かい,寒いなどの心地よさを含めて,物理空間の持ち歩きまでがウェアラブルの範囲となる。

 ユビキタス情報社会においては,インフラの整備が進んでいるが,個々人のニーズにきめ細かく合わせるための究極のツールであるウェアラブルコンピュータが必要不可欠である。このときウェアラブルコンピュータはさらにウェアラブル(マシン)に進化しているであろう。

 ウェアラブルの概念のうち,「服」空間について具現化した一例が本欄の『炎天下でも快適?ウェアラブル冷房服が日本の夏を変える』(7月19日公開)及び『「ひんやりして気持ちいい〜」──ウェアラブル冷房服の体験イベントで歓声沸く』(8月21日公開)でご紹介した電子冷暖房服である。

国内外のマスメディアが電子冷暖房服を報道

 お台場と銀座で開催した冷房服と電子冷房機能付車イスの体験イベントは,国内外の多くのメディアから取材を受けた。

8月1日 お台場──AFP通信
8月6日 銀座 ──BBC放送 イギリス人特派員による同行取材
      財団法人フォーリン・プレスセンター
BBCワールドサービス記者による同行取材

 8月17日には,WIN有楽町オフィスにてイタル−タス通信の取材を受けた。カザフスタンの国営テレビ「ハバール」で後日放映される予定である。

 NHKワールド「ラジオ日本」の取材も受けた。海外向け短波ラジオ(中国・仏・独など英語を除く20言語)で9月5日に放送される。番組は放送後1週間,インターネットで聞くことができる。視聴方法は,専用アドレスにアクセスし,聞きたい言語をクリックし,火曜日を選択すればよい。
9月1日に朝日放送(ABC−TV)「ニュースを見に行こう」の取材を受けた。

 このほか,テレビ大阪の情報番組からの取材依頼,フジテレビスーパーニュースより事業化の予定についての問い合わせが寄せられた。海外メディアでは,Russian State TV Channelからの取材依頼があったほか,シンガポールのメーカーから冷暖房服のボランティアスタッフに直接問い合わせのメールが届いた。今後,本プロジェクトが国内のみならず,国際的な広がりをもつことが期待できそうである。

 市民が必要とする市民技術を開発し,世の中に出していくというNPO「WIN」の社会貢献活動に対し,多くのマスメディアからご協力頂いたことは,大変心強い限りである。

 その他の記事・報道については下記参照。

【新聞】
・1月20日付 日刊工業新聞「車いす用冷房ウエア開発へ−高齢者・障害者向けにマント形」
・1月27日付 日本経済新聞「着用する小型コンピューター−衣服の高機能化に応用(NPOなど冷暖房服実用化へ)
・7月26日付 讀賣新聞夕刊「快適!?冷暖房服−NPO法人が開発」
・8月21日付 産経新聞「記者が挑戦」コーナー
【テレビ】
・7月31日 NHK「おはよう日本」
・8月2日 フジテレビ「めざましテレビ」 めざまし学習帳
WINホームページ

著者プロフィール

1966年東京大学工学部精密機械工学科を卒業。68年、東京大学精密機械工学専攻修士課程を修了し、日本電信電話公社(現NTT)に入社。同社の副理事・研究企画部長やマサチューセッツ工科大学(MIT)客員研究員などを歴任し、92年中央大学理学部教授就任。96年から東京大学大学院工学系研究科、99年新領域創成科学研究科教授。2004年〜2006年東京理科大学大学院、総合科学技術経営研究科、研究科長就任。現在、東京理科大学教授。東京大学名誉教授。2000年8月「NPO法人WIN(ウェアラブル環境情報ネット推進機構)」を設立、理事長を務める。情報誌「ネイチャーインタフェイス」誌の総監修、環境プランナー運営委員会委員長、科学技術振興機構(JST)「先進的統合センシング技術」研究領域総括及び科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会の安全・安心科学技術委員会の主査を務める。主な著書に「情報マイクロシステム」(朝倉書店)、「ウェアラブルへの挑戦」(工業調査会)、「ウェアラブル・コンピュータとはなにか」(NHK出版)、「コンピュータを「着る」時代」(文藝春秋)などがある。

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