ポエトリーリーディングと呼ばれる現代詩の朗読会が,ひそかに人気を集めているそうです。

 明治大学商学部「ブログ起業論」の教え子からご紹介いただき,桑原滝弥さんをはじめとする若き現代詩人たちと出会いました。そして,谷川俊太郎先生に私淑する桑原さんと,たちまち意気投合してしまったのです。話が弾んで,詩とTシャツを,そして朗読イベントを結びつけた「詩人類T-shouts!」という活動を,ご一緒に始めることになりました。

 来たる9月9日には,私たち久米繊維のプレスルームを活用して,第1回のイベントを開きます。4人の詩人が自らの言の葉をTシャツに載せて,詩を朗読するという試みです。この新しくも説明が難しい「詩人類T-shouts!」の活動やイベントを,どうやって多くの人に知っていただくかが課題となりました。メンバー一同で知恵を絞っておりますが,ここでもブログが役立ちそうです。

 そこで今回は,複数の詩人の活動・広報拠点として,また,こうした文化活動を応援する企業のCSR(企業の社会的責任)活動とブランディング&マーケティングの場として,ブログをいかに活用するかを考えてみます。


時空を超えて詩人がファンが集うブログ

 まず第一に解決すべき問題は,「詩人類T-shouts!」に集う詩人たちが,各々独立したアーティストであり,それぞれ別の仕事や生活をお持ちだということです。顔を合わせる機会が限られているために,これまでは朗読会などのイベントが活動の中心になっているようでした。

 これでは,詩人同士の関係はもちろん,大切なファンや愛読者との関係さえも,イベントとイベントの間に途切れてしまうのではと思えました。そこで,「詩人類T-shouts!」に参加する詩人たちが交代で書く「リレーブログ」を始めることをお勧めしたのです。

 詩人の日常....詩的な日記は,きっとファンならずとも読みたいはずです。もちろん,誰よりも言葉を大切にしている詩人たちのことですから,安易にブログで言葉を垂れ流したくないというお気持ちもあるでしょう。しかし詩人でしか表現できないブログ,ブログでしか表現できない作品もあると思うのです。

 例えば,講談師にして詩人の神田京子さんのように,既にユニークな個人ブログを続けていらっしゃる方もいます。肩の力を抜いたブログには,路上観察があれば自己観察もあり,イベントや舞台の告知があれば,ラジオ,テレビ出演の案内もあります。表現も,長文の時もあれば,写真がメインで文章は一言二言の時もあります。要は心の向くまま気の向くままで,無理せず少しずつ書いているのが素敵なのです。

 こうした私的で詩的なブログでも良いものですが,それとは同時並行で,丁々発止と歌い結ぶ詩的に創発する共同ブログがあっても良いはずです。個人ブログでは生まれない相互作用が,きっと詩や表現に好影響を与えることがあるかもしれません。

 そして,各個人ブログが栄えれば栄えるほど,それぞれの詩人のファンが「詩人類T-shouts!」の共同ブログを訪れることになり,他の詩人との運命的な出会いにつながることも期待できます。さらに,詩人ブログ同士で,それぞれ相互リンクすることにより,検索エンジン対策にもなるでしょう。


ブログ自体を作品として出版するために

 詩人類ブログで里宗巧麻さんが「詩集 vs Tシャツ」という記事でご紹介されていましたが,一般的には「詩集」を出すことは大変なことのようです。ほとんど自費出版の世界で,100万円の自腹を切ること,在庫を抱えることが常と知って驚きました。

 以前,当コラム「ブログ発ベストセラーの秘密」でもご紹介しましたが,フリーライター仲間が,各自の書籍販売日にブログで紹介しあうことで,ネット書店ランキングで上位を占める手法は,既に出版業界では一般化しつつあります。気心の知れたブログ仲間,詩人仲間さえいれば,相互扶助でお金の要らないブログPR手法を使わない手はないでしょう。

 そのためには,まずアマゾンを始めとするネット書店で扱っていただく必要があり,日本図書コード(ISBNコード)を取得してくれるような出版社か取次店のお世話になることが前提になります。

 ここでも,このインターネット時代には,わざわざ100万円で自費出版しなくとも良い仕組みがあって便利です。デジタルメディア研究所の橘川幸夫さんが企画運営されている「無料出版オンブック(ONBOOK)」などのオンデマンド出版を利用すれば良いわけです。

 最初から,各自が単独で出版することがハードルが高ければ,詩人類ブログで連載していた詩や文を紡いだアンソロジーを企画しても良いでしょう。そのためには,「泣きたい時に読む詩集」「元気を出したい時に読む詩集」といったテーマで編集しても良いかもしれません。いわばコンピレーションCDアルバムならぬコンピレーション詩集です。

 また,ONBOOKではケータイでも読める電子出版にも対応しています。詩集はケータイで読むのに最もふさわしいコンテンツになるかもしれません。

 いずれにせよ,将来の自由な出版を展望するならば,著作権や商業出版権などがブログサービス提供業者に移ってしまうようなトラブルを避けなければなりません。ブログサービス選びをする際には,集客力や使い勝手と合わせて留意する必要があるでしょう。


かるがるしく詩人となのりなさい

 この「詩人類T-shouts!」プロジェクトを,私個人としても会社としても応援しようとした理由はいくつもあります。何より私が詩を愛し,言霊の力を信じ,それをTシャツに宿らせる意義を実感していることが第一の理由です。それから,自らの言の葉をTシャツにして着て,自作の詩を朗読する谷川俊太郎さんの迫力を,目の当たりにしていることも一因でしょう。

 しかし,何と言っても,詩人類主宰者である桑原さんのオープンな考えに共鳴したことが大きいのです。それは,詩をTシャツに書いてもいい,それを着て楽しんでもいい,というだけにとどまりません。

 何しろ,桑原さんがデザインしたTシャツには「かるがるしく詩人となのりなさい」とプリントされているのです。2回目の11月11日開催のイベントでは,既に活躍している詩人の他に,もっと広く詩を創作し朗読する人を集めたいとおっしゃったのです。ここに大きな可能性を感じました。

 例えば,ここ数年で,Tシャツでもプロシューマー文化・インディーズ文化が花開いて,いつしか自称Tシャツクリエイターがインターネット上に何十万人もいらっしゃる時代が到来しました。もちろんプロのデザイナーでもアーティストでもなく,原則として自分が着たいTシャツを作る半ばアマチュアの人たちです。

 詩の世界でも,既にポエケットと呼ばれる同人イベントが開催されているそうです。気軽に創作を楽しむ詩人類たちも,きっとこれから増え続けることでしょう。

 先日,クオリア日記で知られる脳科学者の茂木健一郎先生と,武術研究で知られる甲野善紀先生の対談を伺う好機がありました。

 その中で茂木先生が「偉大なアマチュアリズム」という言葉を使って,甲野先生のように自分自身の好奇心や探究心に常に素直であり続ける人を賞賛されていました。言い換えれば,自己の利害ばかりを気にしたり,世間や業界の常識に迎合することなく,わが信じる道を歩む人ということでしょう。

 偉大なアマチュアリズムを持つ未来の詩人たちを包み込んで,詩人類の中から,新たな詩作が生まれる可能性もあると思うのです。


企業側も公式サイトや社長・社員ブログでPRを応援

 さて今度は,協賛企業である私たち久米繊維として,どのようにして詩人類の活動を応援できるかが問題です。私たちは,会場の提供やTシャツ制作に加えて,インターネットを通じたPRでも貢献ができると考えました。

 まずは,公式サイト久米繊維,商品サイトQUALISMA.jp,SHOPサイトT-GALAXY.COMで,「詩人類T-shouts!」をご紹介することから始めました。

 さらに,社長ブログはもちろん,各社員のブログでも紹介して応援しております。当社では,広報担当者が公式サイトのニュース記事を更新した後,それを各社員ブログでも合わせて紹介してもらいたい場合は,メールでお知らせが届きます。そして,重要なイベントなどについては,朝礼などでさらにブログ紹介が徹底されるのです。もちろんお客様向け縁者向けのメールマガジンなどでも告知します。

 こうして,企業が持つ公式サイトやブログなどで告知して,詩人類ブログにリンクをして集客のささやかなお手伝いをしています。こうしたインターネットを使ったコストのかからない企業CSRの活動は,志さえあればすぐ実践できるので,中堅中小企業や個人事業主でも対応できるのです。

 今後,私が考える改良点としては,それぞれのブログにアフィリエイトのリンクをつけて,誰がどれだけ集客したか検証することが挙げられます。そして,決済・物流機能つきの買い物カゴをつければ,お客様,詩人類,メーカーの三者の利便性と効率を高められるでしょう。

 また,ライブイベントの様子をビデオに収録して,その動画をネットで有料販売することもできそうです。

 まだ,最初の一歩を歩みはじめたばかりの,詩人たちと中小企業の共同プロジェクトですが,その将来にご関心のある方は,ぜひ「詩人類T-shouts!」のブログにご注目いただき,9月9日のイベントに足をお運びいただければ幸いです。