最近、何かと話題のNGN(次世代ネットワーク)だが、この前NTTの人に「NGNって何?」と聞いたら、「なんか、合点がいかない、ネットワーク」という答えが返ってきた。キャプテンの時代から相も変らぬ壮大な構想、あまりに茫洋としすぎて、NTT関係者でも全体像がよくつかめないということらしい。私なんかはNGNの話を聞くと、IT・通信融合での主導権を狙い、木っ端微塵に砕け散ったIN構想を思い出してしまうが、今回はどうだろうか。

 NGNには様々な話があるが、IT業界から見ての注目は各種ネットワーク・サービスのオープン化だ。帯域制御や認証などのNTTのサービスを、外部から利用できるようにするためのAPIを公開するという。ちょっと考えただけでも、ITサービス会社がASPサービスなどを提供する際に、便利なサービスになりそうだ。ただNTTは、さらに上のレイヤーのアプリケーション・サービスについても、同様のやり方で提供していきたい意向のようなので、その辺りに「衣の下の鎧」が見える感もある。

 さて、IN構想である。INとはインテリジェント・ネットワークの略称で、NTTなど通信事業者は「網がインテリジェンスを持つ」を合言葉にした。どういうことかと言うと、ネットワーク側にITの機能を取り込んで、今のASPのようなものも含め様々なサービスを通信事業者が提供しようというもの。時はちょうどインターネットの爆発的普及の直前、ネットワークのブロードバンド化に話題が集まり、IT・通信の融合が叫ばれていた頃だ。

 これをスポーツ紙的に言うと、ITと通信がボーダーレスになりつつある中で、NTTなど通信事業者が仕掛けた“IT vs 通信”の陣取り争いだった。結果はご存知のように、通信事業者側の惨敗。インターネット普及の後押しもあり、ITがネットワークまでも支配するところとなった。ネットワーク・セキュリティも含め付加価値部分は、すべてIT側の仕事となり、通信事業者は“ブロードバンドな土管”の提供者の地位に転落することになった。

 で、今、キャプテンの時代から数えて三度訪れたIT・通信融合の時代である。キャプテン構想もISDNという“土管”を除けば雲散霧消したから、二度あることは三度ある。NGNも多分ダメでしょう、第一感的にはそう思う。ただNGNの話には、昔と違うところがある。まず、通信事業者のネットワークはフルIT化した。そしてNTTなどがNGNで提供するものは、オンデマンドなサービスである。

 しかもIT分野でも、ビジネスのストック化、つまりサービス化が進んでいる。ユーザー企業が情報システムを資産として保有せず、ASP、SaaSなどのサービスとして利用する方向である。だからNTTなど通信事業者も唯我独尊、顧客囲い込みといったケチな考えを捨て、様々なIT・通信融合サービスの部品提供者といった位置付けで頑張れば、三度目の正直でNGN成功の可能性は大いにある。

 もっともNTTにとっては、それが一番難しい。まあ、NGNで高品質なIPv6網を提供してくれるだけでも、一向に構わないのだが。