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「パソコンOS戦争」とは一味違う「携帯OS戦争」

2006/08/01

 「30日でできる!OS自作入門」という本をご存知だろうか。

 ゼロから始めて,マルチタスク,マルチウインドウの独自OSをわずか30日間で作り上げようという意欲的な内容だ。第1版の発行が今年の2月28日。それが数カ月ほどの間で第6版まで版を重ねている。この手の本としてはかなりの売れ行きではないだろうか。マルチメディア処理がいろいろなデジタル機器に要求されるようになって,従来の小さなモニター的なモジュールから,もう少し本格的なOSに関心が高まっているのかもしれない。

OSビジネスは30日ではできない


Linux携帯電話のリファレンス・ボード
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 自社の機器に使う簡単なOSや,大学での勉強用ならOS開発も簡単だ。これがOSビジネスとなると話は難しい。とても30日間でできるものではない。

 現在,OS事業で十分な利益を上げているのはマイクロソフトだけだろう。サン・マイクロシステムズのSolarisはフリーになってしまったし,一時は次期Macintosh用OSの候補として注目を浴びたBeOSも事業としてはなくなった。リアルタイムOSとして老舗のウィンドリバーのVxWorksも,事業としては開発ツール(トルネード)の方が主体だ。OS事業単体のソフトウエア会社は成立できなくなっている。

 なぜOS事業は難しいのか。まず,OSは事業化しようとすると,開発すべきものが非常に多い。各種CPUやハードウエアへの対応はもちろん,開発ツールの提供も必要だ。使いやすい開発ツールがないと他のソフトウエア会社(いわゆるサード・パーティ)にアプリケーションを作ってもらえない。

 そもそも,相当メジャーなOSにならないと,サード・パーティが集まらない。ニワトリと卵の議論になるのだが,アプリケーションがなければメジャーなOSにはなれず,メジャーなOSでなければアプリケーションが集まらない。よって,新規OSをメジャーにするにはOSの開発会社自身が相当数のアプリケーションを自社開発しなければならない。これにはかなり大きな投資が必要となるし,ある程度のレベルまで持って行くには時間のかかる話である。マイクロソフトのように資本力が豊富な企業以外,なかなか実行は難しい。

 Linuxが人気を集めた理由の一つは,この「OSビジネスの困難さ」にあるだろう。OSは不可欠な存在だが,特定の1社で支えるには荷が重過ぎる。そこでオープンソースOSを利用して,みんなで技術をシェアしながら,1社当たりのリスクを小さくしましょう,ビジネスはOS自体ではなく,別のレイヤーやサービスで勝負しましょう,という訳だ。

携帯電話OSは3〜4個に整理される

 携帯電話の世界でもマルチタスクOSやLinuxの話題が旬である。

 ご存知のように最近の携帯電話は相当高度だ。メール・ソフトやWebブラウザのようなアプリケーションをマルチタスクで動かしながら,裏では通信制御用ソフトを動かすという結構複雑な制御を行っている。さらに,サード・パーティ製のアプリケーションが乗ってくるので,モダンなOSでなければならない。

 そうなると,3個か4個かは分からないが,今後,携帯電話用OSは整理され,ある程度高機能なOSに絞られるだろう。具体的には,Linux,Symbian,Windows Mobile,BREWといったOSだ。この中でLinuxだけが特定ベンダーの色が付いていない。かつ,オープンソースということで,必要な拡張を自分でできるし,OSベンダーのロードマップに依存せずに製品開発できるという利点がある。


ACCESS Linux Platformのモジュール構成図
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 ACCESSとしては,アプリケーションを統合した「NetFront Mobile Client Suite」を現在提供しているが,OSまでセットでインテグレートした状態で提供してほしいという要望が強くなっている。これを受けて,Linuxをベースとした統合プラットフォーム「ACCESS Linux Platform」(ALP)を今年2月に発表した。8月14日から17日の LinuxWorld San Francisco では,ALPのデモ展示とともに「PalmSource Developer Day」と称してALPのアプリケーション構築のトレーニングを行う。

 現状ではLinuxを携帯電話に乗せようとすると,足りないものがたくさんある。Linux搭載の携帯電話といっても,Linuxの部分は実際には全体の2割くらい。残り8割はミドルウエアやアプリケーションだが,それらはオープンソース・ソフトウエアでは手に入らない。先日,「ドコモ,Vodafoneなど携帯電話事業者と端末メーカーの6社が,Linuxベースの携帯電話向け基盤ソフトを構築」というニュースがあったが,Linuxはまだみんなで盛り上げる必要がありそうだ。LiPSOSDLといったLinux業界団体もモバイル向けに力を注いでいる。

 だた,携帯電話の場合,Linux対Symbian対Windows Mobile対BREWといったOSが全面に出る争いは起こらないのではないか。そもそも通信事業者にとって重要なのは,彼らのサービスと直接関わるアプリケーションである。必要なアプリケーションやサービスが,スムーズに効率よく実装できることが重要である。そういう意味では,パソコンのときのようなOSありきの構造とは趣が異なる。携帯電話の場合はパソコンに比べるとOSの重要度は低い。また,携帯電話の多くの重要なサービスは Webベースで構築されているのでブラウザがあれば利用できる。最近のWeb2.0やAjax の流行はこの傾向を強めている。OSはそれを支える基盤としての位置づけだ。この意味でも,携帯OSへの重要な要求としては,業界の進化に遅れないためのオープン性と拡張性であろう。

著者プロフィール

 世界中でiモード携帯電話など約4億台のデジタル機器に搭載されたWebブラウザ「NetFront Browser」などで知られる,ACCESSの副社長兼CTO 鎌田富久氏。W3Cに提案されている携帯向けページ記述言語「Compact HTML」の提唱者でもある。日本発グローバル・スタンダードを生み出した鎌田氏が,世界のモバイル技術の潮流を語る。

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