今回は,IM(Information Management;情報マネージメント)について考えてみましょう。

「チョット,言わせて」コーナー:内部統制に振り回されているのは。

 つい最近,6月7日の参院本会議で日本版SOX法の目玉である「金融商品取引法」が可決し成立しました。これから2年余の中で,内部統制システムを構築し,内部監査と経営者による内部統制評価を少なくとも1回は実施し,2009年3月決算期以降,外部監査を受け,内部統制報告書を,内閣総理大臣に提出することが義務となったわけです。

 上場企業から内部統制構築のための具体的な活動が開始されているものの,「度が過ぎていないか」「構築した内部統制を継続することが経営の足を引っ張るぞ」「上っ面の内部統制は,維持固定費の上昇を招く」と懸念しているのは,私だけではないでしょう。

 一つ一つの懸念を詳しく説明するのは,別の機会にするとしても,膨大な文書作成のマイナス面だけを強調しすぎるのは,怠慢といえます。

 例えば,稼働中のドキュメント・レス(文書がない)情報システムの文書化は必須ですが,それを受けて積極的に文書化するか,上述した2年余の期間でメジャーなパッケージソフトの導入・本稼働を完了する,かの選択を迫られ,避けられないからです。

 これは,情報システム部門にとってみると,「これまでの文書化をおろそかにしてきたツケが回ってきた」に過ぎないといえるのではないでしょうか。

経営は,IMの視点を優先する

 内部統制が形だけで終わってしまう,言い換えると,「業務効率を無視して内部統制を押し付ける」ことに成りかねません。これを防ぐには,「経営者から見て,データと情報が切断されていたり,処理体系がブラックボックスになっていない,という情報をマネージメントできる経営基盤(多くの場合ITによる自動化)を構築すること」が重要なのです。

 経営者の仕事は,意思決定の連鎖です。定型的な決まりきった仕事だけをこなすのでは,経営者ではありません。経営者の仕事が,内部統制だけに終われば,企業の存続はないといえるでしょう。

 だからこそ,IM(Information Management;情報マネージメント)の視点が必要なのです。

IM(インフォメーション・マネージメント)とは。

 ここで,インフォメーション・マネージメントを説明しておきましょう。

 まず,インフォメーションが意味するところは,「経営者をはじめ従業員が経営活動を行うのに必要とする意思決定や活動のインプットとなる定量的,定性的な要素,要因のこと」です。

 従って,企業活動のあらゆる場面,マーケティング,研究開発,技術開発,購買,製造,物流,営業,サービス,会計,人事,教育などのデータは,その範囲となります。これらのデータを情報に転換させ,従業員をもって経営目的実現のための最適な活動を維持する管理活動こそ,インフォメーション・マネージメントなのです。

 図をご覧ください。

 この図から読み取っていただきたいことは,情報マネージメントに対応するのは,経営者が行うべき経営統制であって,今騒がれている内部統制の範囲より,大きい範囲を言うものです。これは,経営者であることから,当然のことといえます。

 さらに,インフォメーション・マネージメントには,下記の経営活動の成熟度を向上させる働きがあるといえます。

 1.企業の将来ビジョンを創造する。
 2.企業の価値観,ビジョンを従業員に周知する。
 3.経営の品質を高める。
 4.最適な内部統制を維持する。
 5.経営目標達成のために経営活動を最適に維持する。
 6.優秀な従業員を育てる。
 7.法律・諸規則に主体的に対応する。
 8.積極的に社会貢献活動を行う。

IMの視点を持って内部統制に取り組むことが大切

 情報システム部門は,IMの視点から,データの切断,間違い,不明な情報,作業のブラックボックス化などをなくすように日常業務をすることが大切です。このことは,内部統制システムを構築する過程においても,内部統制システムを運用していく段階においても必要なのです。

 CIOは,内部統制をゴールと考えるのでなく,経営者を支える立場から,IMを実現する情報戦略の立案とIT基盤の整備について,責任をもっています。

CIO川柳コーナー

 前回の川柳である「CIO なってはめられたと 気づく」の意味するところを説明します。

 「CIOになって,初めてたいへんな仕事だと分かった」「責任をズシリと感じた」など,新任CIOの多くの方の感想です。役員の中で誰も引き受け手がいなかった,社長から突然呼び出されて打診された,などが,典型的な新任CIOの就任経緯としてあげられます。「はめられた」とは,語弊があるかもしれませんが,一般には,役員の中でも「ITのことは良くわからないから」ということで,押し付けがあるとも聞いています。

 情報統括の最高責任者だからきついのではなく,他の部署を責任持つ役員も同様な重責を担っていることを考えると,CIOだからといって甘い気持ちではいられません。

 CIOは,社長に次ぐやりがいのある仕事,まさにそのとおりだと思います。

 この句は,次回に解説します。皆様も,考えてください。