人を動かし仕事を成功に導くためには、他人の行動に影響を与える力(=影響力)が必要です。影響力がある人は、周囲から協力を得ることができ、困難な問題を解決していくことができます。

 仕事を成功させるためには他人の協力が欠かせません。他人の力をうまく利用することで、一人では成しえない難しい仕事を行うことができます。

 そのような困難な仕事を成功させた人間は他人から高く評価され、ますます協力を得やすい人間に成長します。つまり、影響力を大きくする「好循環」に入っていくのです。

 一方、影響力がない人は困難な状況で他人の協力を得るのが難しく、仕事を成功させることもできないのです。

 では、影響力を持つために必要なことは何でしょうか。

 知識やスキルがいくらあってもそれだけで影響力を持つことはありません。人を欺いたり、他人を裏切りながら成功しても駄目です。こんなことで成功しても、やがて他人から協力してもらえなくなるでしょう。

 私は、影響力をもつためには、問題を解決してきた実績、いつでも問題を解決できる安心感を他人に与えることが必要だと考えています。なぜなら、人は成功する人間についていきたいと思い、失敗する人にはついていきたくないと思うからです。そして、他人に好かれ、信頼されることも必須条件になると考えています。

 つまり、他人に「あの人の言うことなら信頼できる。」「あの人がリーダーなら喜んで協力したい」と思わせるような人が「影響力」をもつのです。

 自分の力を使って他人助け、困っている人、仕事を成功させたいと思っている人、成長したいと思っている人を自分の能力を駆使してサポートすることができれば、他人から感謝され、他人からの協力を得ることができるのです。

では、具体的にはどのように影響力を得ていけばよいのでしょうか。いくつかの方法がありますが、私は以下の2つの方法を利用するように指導しています。

1.返報性を利用して影響力を得る

 前回説明しましたが「自分が他人を助けると、他人も助けてくれるという」考え方を「返報性」と呼びます。人は自分が何か貰うと、どうしてもお返しをしたくなるという特性があります。これを利用して、影響力をもつことができます。

 たとえば、誰かの依頼を嫌そうに対応するのではなく、喜んで対応するように振舞うだけでも相手の好感は違います。どうせ、やらなくてはならないのなら、返報性を利用する方が得策と言えます。

 嫌な顔をせず、相手の頼みを聞いてあげる、相手の困っていることを解決してあげる。このことで相手の認知的不協和を誘い、返報性が起るのを待つのです。

 日常業務でこれを3年続けてください。かなり仕事が楽になるはずです。周辺にあなたの味方が増えていることに気づくはずです。

2.相手の立場、ミッションを尊重し影響力を得る

 もうひとつの方法は、他人のミッションを利用することです。

 通常、組織が違えば求められるミッションが異なり、ミッションの違いで利害が対立する場合があります。たとえば、一般に、会社における販売部門のミッションは売上げを伸ばすことです。しかし、どんな方法を使ってもいいというわけではありません。

 無駄コストは抑制しなければなりませんし、法令にも留意しなければなりません。さまざまな方法を使って売上げをアップさせたい販売部門に対し、法務部門や経理部門は抑制をかけます。このような場合に対立が起こるのです。

 このような対立が起こるのはお互いの部門がミッションに忠実だからです。しかし、あまりにも忠実であるために、相手の考えを理解せず、自分の立場ばかり主張すると深刻な対立に進展して収拾がつかなくなることもあります。

 これでは、問題が解決できないばかりでなく、人間関係も悪化し、何もよいことがなくなるのです。

 重要なのは、相手のミッション、立場、主張を理解した上で、自分の立場も生きるように調整することです。

 相手に「そんなことはできない」、「それでは、こちらの立場がない」などと感情的に相手を否定するのではなく、相手の話をよく聞き、相手の立場をよく理解していることを理解させた上で、「そちらの要望はよく分かりました。ただし、当方も譲れない部分がありますので、ここを調整しましょう。協力してよい結論を出しましょう」という建設的な前向きなコミュニケーションを行うことが必要なのです。

 このような進め方をしていくと、相手は「話の分かる人物」とみなすようになり、対立関係ではなく、協力関係を築くことができるようになります。

 こんな努力と工夫を行うことで他人から協力を受けることができる人望を獲得することができ、高い影響力を身につけることができるのです。

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