この前、年配のシステムコンサルタントの人たちと話して、顧客とのリレーションの深さについて思い知らされた。この人たちは、顧客の経営トップとのリレーションが10年、20年と切れずに続く。中堅企業のオーナー経営者だけでなく、4~6年で入れ替わる大企業のサラリーマン経営者を相手にしても同じ。経営トップが代替わりしても、次の経営トップどころか、数代先の未来の経営者とも信頼関係ができている。こりゃ強いな、と改めて感心してしまった。
システム・インテグレータにとって、コンサルティング機能の強化は永遠の課題だ。顧客の経営トップやCIOにインタビューし、聞き出した経営課題をシステム案件にまで落としていくシステムコンサルタントがいれば、SI案件を獲得する上で極めて有利な立場に立つことができる。他社よりも早く大型案件を発掘できるし、事実上、無競争でその案件を獲得できる。逆に、顧客の現場の体制が整いそうもないなど、問題プロジェクトになる恐れが高いケースもいち早くつかめるため、SI案件の商談から降りる判断もしやすくなる。
まあ、この辺りのことは、よく言われる話。で、なんでシステムコンサルタントが、“将来の経営者”とも早い段階からリレーションを作れるかというと、これもネタを明かせば単純な話だ。そういった経営マターのコンサルティング案件の場合、顧客側の窓口となる人は経営企画の課長といった、将来を嘱望される若手のエースであることが多いからである。こうした人たちの信頼をつかんでいけば、やがて顧客の複数のキーパーソンの間に分厚いリレーションができる。だから、顧客のトップが替わっても大慌てすることはないである。
そういえば、以前、 内部統制案件をやれば顧客の次期社長と会えるという話を書いたことがある。システムコンサルタントの場合、そうしたリレーション構築のプロセスがその仕事に組み込まれているわけだ。もちろん、こうした“美しいストーリー”が成立するためには、システムコンサルタントに能力が備わっていることが前提だ。実際、肩書きだけで能力の伴わないコンサルタントは、今も至る所にいる。しかし、SIをメインの事業とするITサービス会社にとっては、こうしたシステムコンサルティングの機能は是非とも欲しい。
実はこの前、ある大手システム・インテグレータの幹部から「顧客との関係は、現在の開発案件が終了した時点でいったん終わり。なぜなら、次の案件を提案できないからだ」と真顔で言われたことがある。RFPベースで仕事をしているからこうなる。その企業は、他のITサービス会社と同様、売上の8~9割が既存客からのものだが、そういう顧客への次の提案のタマも、深いリレーションも持ち合わせていないわけだ。
おそらく、かなり多くのシステム・インテグレータが、この企業と似たような状況だろう。しかし、内部統制に代表されるように、最近のIT案件は、ますます“経営者直結”のケースが増えてきている。このままでは、案件の絶対量が増えている今はいいかもしれないが、先行きは暗い。
結局、この企業はコンサルティングファームとの協業に活路を見出すことにしたという。ただ、経営コンサルタントや戦略コンサルタントのたぐいと違い、システムコンサルタントは有能なSEから育成することが可能だ。古くからの課題だが、プライム契約を目指すシステム・インテグレータなら、「顧客の経営課題からシステム案件を作り出す機能」は絶対に必要だと思うが、いかがだろうか。