前回,Webは「ブランド経験」の基幹となる可能性が大変大きいという話をしましたが,エンジニア向けではなく,経営者向けのお話と思われた方も多かったのではないでしょうか。

 エンジニアの主な仕事といえば,いかにエラーのないシステムを考えるか,わかりやすく見やすいインタフェースや無駄のないHTMLやCSSを組み上げるかといったことでしょう。それは何のためかというと,(企業などの)様々な目的を達成するためにほかなりません。

 しかし,コンテンツが冴えなかったりデザインがダサかったりしては,技術だけがいかに優秀でも目的を達成することは難しくなります。もちろん,エンジニアの皆さんはデザインや経営までも詳しく勉強する必要はないですが,自分の技術が何のために必要とされて何に対して貢献できるのか,テクノロジーの世界だけではなく社会に目を向けて見ることも必要だと思います。

  不幸にも「ブランド経験」という言葉を知らない不勉強なWebデザイナーと一緒に仕事をすることがあったら,「ブランド経験」に関してどう思っていて,そのためのイメージ作りをどう考えているのかというような突っ込んだ質問や議論を,エンジニアの皆さんからデザイナーに投げかけてみるといいでしょう。

それぞれの立場から意見や考えをぶつけあおう

 Web以外のデザインをいろいろと承っていると,悪い意味であまりにも分業化が進み,むなしい気持ちにさせられることがたまにあります。どう考えても,おかしな文章をレイアウトしなければならなかったり,どう考えても的のはずれたコンセプトを形にしなければならなかったりする場合があるのです。

 そんなときには,コピーライターやプランナーにいろいろな質問をさせていただきます。彼らのほうがコピーやプランニングの専門家なので,私なんかには及ばない考えがあるからです。しかし,こちらもビジュアルやイメージの専門家としての立場から,意見や考えをぶつけさせていただきます。そのようなときには,スタッフみんなが納得できる,良い仕事ができることが多いのです。

 ですから,どうぞエンジニアの皆さんも,WebデザイナーやWebプランナーの人たちとディスカッションしてみていただきたいと思います。しかし「このデザインが変だと思うから修正して」「赤ではなく,青だな」なんてことをいうと,ケンカになるのでやめましょう。それはいわゆる「素人が口を挟む」ということですので,念のため。私も質問はしますが,そのようなことは絶対にいたしません。

テクノロジー村だけの住民になってはいけない

 企業が様々な目的を達成するために,ブランドやイメージを重要視し,Webがその役割を大きく担うのであれば,エンジニアの皆さんもWebのプログラミングやテクノロジーだけではなく,Webにおける社会学,マーケティング,心理学,記号論,認知学…など付随する知識を勉強して,より自分の専門分野の幅と深みを広げる必要があります。

 Webデザイナーにも全く同じことが言えます。デザイナーの中にもいるんです。「デザイン村」というところに住んでいて,かっこいいデザイン命!のデザイナーが…。デザイン賞をとることが一番大切だと勘違いしている人が…。「何のためのデザインか」を考えて「デザイン村」から飛び出て,広い世界に目を向けることが必要です。エンジニアの皆さんの中にも「テクノロジー村」に住んでいる人はいませんか?

 ちなみに私の会社ではこのような考えに共感してくださるWebデザイナー,グラフィックデザイナーをただいま募集しております。関心のある方は,弊社のホームページ(http://www.noiedesign.com)をご覧ください。


「とはいうものの,どんどん新しい技術がでてくるWebの仕事では,ほかの周辺知識まで勉強する暇なんてありませんよ!」という声が聞こえてきそうです。それが普通です。しかし言い方を変えれば,それが「普通の人(凡人)」なのです。忙しいなかでも勉強する人は,人より抜きん出る。それが自然の法則なのです。