5月25日(木)から27日(土)にかけて、和歌山県で毎年恒例の「コンピュータ犯罪に関する白浜シンポジウム」が開催される。今年で第10回となる今回は、「これまでの10年、これからの10年」がテーマだ。私は毎回、スピーカーとして参加してきた。

 このシンポジウムは、コンピュータ犯罪対策にかかわる治安当局、中央省庁の官僚、技術者、企業担当者や法律家など様々な専門家が集まり、最新の問題について情報交換と議論を戦わせる「場」である。

 昨年のシンポジウムは内閣官房情報セキュリティセンター内閣参事官 立石譲二氏や警察庁生活安全局情報技術犯罪対策課課長補佐 吉田和彦氏、米国国土安全保障省(DHS)サイバーセキュリティ局(NCSD)局長代行 コンピュータ緊急対応チーム(US-CERT)局長ドナルド・パーディー氏が講演。パネルディスカッションには産業総合技術研究所 高木浩光氏も参加している。

 今年のシンポジウムは内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)参事官補佐 山崎琢矢氏、カーネギーメロン大学日本校教授 武田圭史氏、インドのステイト銀行CIO兼CSOクリシナ・クマル氏、京都大学学術情報メディアセンター 高倉弘喜氏、警察庁サイバー犯罪対策関係担当者などによる講演が予定されている。

 日中の講演だけでなく、夜間にはアルコールを片手のナイトセッションもある。こちらでの議論はすべてオフレコとなる。担当者しか知らないような濃厚な話が飛び交うからだ。それが終われば、さらに関心のあるテーマごとのグループに分かれて深夜まで話し合う。前回は、遅れて到着した西村博之氏(2ちゃんねる管理人)も参加した。

 今回は大学、大学院らの学生によるチームがセキュリティ対策技術を競う「危機管理コンテスト」も行われる。これはかつて経済産業省が企画して断念したセキュリティ甲子園の流れを汲むものだ。ただしクラッキングを助長することがないよう、防御技術を競う。

 第1回が開催されたのが1997年。思えばインターネットの商用化が始まったのが1995年であり、このセミナーはそれと歩調を合わせて開かれてきたといえよう。第1回の開催当時、誕生した子供なら、今では小学生になっているはずだ。

 インターネット商用化の黎明期、IIJやベッコアメといったISPが開業した頃、Winodws 3.1にはTCP/IPが搭載されておらず、Trumpetなどをインストールして144kbpsのモデムで接続していたのを思い出す。ブラウザは「モザイク」だった。当時はPPP接続の全盛期で、少し大きな画像であれば、表示が完了するまでの間にお湯が沸かせるほど時間がかかったものだ。ベッコアメやモザイクという名前も、すでにネットの世界から消えてしまった。

 インターネットが爆発的に普及する裏側で、インターネットを悪用した事件もまた爆発的に増加した。ウイルスの蔓延や不正アクセス、オークション詐欺や出会い系サイトをきっかけとした殺人事件、個人情報の流出、Winny---今年、私は「過去の事件簿」という題名で、この10年を振り返った講演をする予定だ。

◎関連資料
「第10回 コンピュータ犯罪に関する白浜シンポジウム」公式サイト
武田圭史氏ブログ
不正アクセス方法対策 高倉弘喜氏インタビュー