本日は、「有望新サービス」について書いてみたいと思います。日経BP社で、このアイデアを採用してくれるといいのですが....。システム投資などの新規投資は、ほとんど要りません。必要なのは、各誌編集長、副編集長の年間1人日程度の、わずかな知的労働だけなのです。

10人の「師」のネット情報を読むだけで世の中が分かれば....

 拙著「ブログ道」でも、講演や講義の場でも、「10人の師をネット上に持とう!」と私は繰り返しています。即ち、自分が関心を持っている十大ジャンルの「師匠」を探して、毎日「師匠」のメルマガやブログを読もうという提言です。「師匠」の情報をシャワーのように浴びることで視野を広げ、まさに「真似び=学び」ながら自分を高めていこうというメッセージなのです。

 この10年間、私も10人どころか数十人もの「ネット上の師匠」に師事してまいりました。

 もちろん、その中には、勉強会や学会などで面識を得た先生もいらっしゃれば、一方的に存じ上げてメールマガジンに登録して拝読している先生もいらっしゃいます。毎日のように、師がインターネットで発信する情報の数々に触れることで、どれだけ見識深めることができたか、そして勇気付けられたかわかりません。しかも、驚くべきことに、これらのメールマガジンやWebサイトの大半は無料なのです。

 実は「10人の師をネット上に持とう!」というのは、nozomu.net代表で、「会社は誰のものか」著者の吉田望先生の受け売りです。吉田先生は、なんと10年も前の講演で、「大量のメールが届くよりも、各界の賢者から毎日1通届くメール、10通で世界がわかる方が良い」と看破されていたのです。

ブログ・ビッグバンで、「師匠」の量と質が飛躍的に高まる

 しかし、「10人の師をネット上に持とう!」というアイディアには障害がありました。

 インターネットが得意な師匠、好きな師匠、情報無料公開に熱心な師匠だけが、メールマガジンなどでの情報発信に熱心だったのです。つまり、世の中のリアルな「師匠」と、ネット上のバーチャルな「師匠」の量と質とにギャップがあったのです。

 しかし、この状況は一変しつつあります。

 まず、ブログという簡単格安情報発信ツールの出現は、パソコン嫌い、プログラミングが苦手という多くの「師匠」にとって福音でしょう。ワープロやメールができるぐらいのスキルで、自分専用の情報誌発行とライブラリー作成が可能になるのです。

 現に、これまではインターネットが苦手だったのに、ブログと出会って以来、堰を切ったように情報発信を始めた師匠を、何人も存じ上げています。

 こうしたブログ・ビッグバンによって、何がしかの「人に教えたいコンテンツ」を持つ人にとっては、ブログでの情報発信が、ほとんど「生活そのもの」になるでしょう。これは、ブログ情報の「量」を飛躍的に増やすだけではありません。師匠のコンテンツの「質」を変容させ高める可能性が高いと考えています。

 ブログ前夜の「師匠」の多くは、ご自身の考えを、「論文」や「書籍」といった、いわば形の整った格式の高いものにまとめてきました。最近でこそ、読みやすくわかりやすい「新書」がベストセラーになっていますが、ブログが、さらに「師匠」発の情報を身近で親しみやすくするはずです。ブログを通じて、「師匠」のふとした思いつきや、読んだ本、見た映画の感想まで知ることで、日々のライフスタイルや、感動と思考のプロセスを追体験することもできましょう。

 即ち、ブログコミュニケーションで、「師匠」の「表現力」「伝達力」が高まり、それに比例して、読者や理解者も増えていくことでしょう。

文章で生活するプロも「ブログ」に参入する素地が整った

 また「書けばお金になる文章を、わざわざ無料でブログに書くなんて...」と、プロが冷ややかに眺めていた状況も、最近は変わりつつあります。

 これまでは、「私の情報は無料」という善意のネットワーカーか、メルマガやブログは「本業のPR手段」という割り切り派のプロが、積極的に情報発信をしてきました。自分が発信した情報が「多くの人に読まれるだけで嬉しい」という人も多かったのでしょう。自分の文章でお金が取れると思っていなかった人も多かったかもしれません。

 しかし、予想外のことが起こりはじめました。私自身も前著「メール道」で体験したことですが、「ネットで無料公開されていた情報を書籍にまとめても売れる、むしろ大量に安定して売れる」という不思議なことが起こったのです。むしろ、今では「人気ブログは本にすべし」ということで、出版社が目を光らせるまでになりました。

 さらに、このITproのように、誰でも見られる無料サイトであっても、広告モデルで成り立つこともわかってきました。無料ブログで人気を集めた「師匠」にお声がかかって、原稿料をいただきながら、無料情報発信を続ける素地も整ってきたのです。

 こうなれば、むしろ、いつか本を出したい人や連載を持ちたい人の登竜門として、無料ブログが重用されるはずです。その結果、有名無名問わず、ネット上の「師匠」の量と質は高まっていくでしょう。

しかし...どうすれば「わが師匠」を効率的に探せるか

 こうした「ブログ・ビッグバン=ブログ師匠よりどりみどり」状況が加速する中で、別の悩みが首をもたげます。いったい、どうすれば「わが師匠=選ばれし10人」を見つけることができるのでしょうか?

 ブログの数が増え続ける中で、検索エンジンで探すのは、どうやら非現実的です。上位に表示されるものが、必ずしも「質」を保証するものではないからです。上位に表示されたのは、ひょっとして、キーワードの選び方使い方、相互リンクなどの「検索エンジン最適化テクニック」のおかげかもしれません。

 また、ネット上で人気があるブロガーだからといって、自分が求める「師匠」であるかどうかとは別問題でしょう。人気があるのは、タレントだから、あっさり読めるから、ちょっと笑えるからかもしれません。

 それでは、マスメディアにも頻繁に登場する人気の先生方はいかがでしょうか?私は、前回のバブル崩壊の時、証券会社におりましたので、当時の人気エコノミストが軒並み株価暴落を予見できなかったことを覚えています。知名度と論評の質が正比例するわけでもないようです。(そういえば当時も、「いざなぎ越え」が話題になっていた金利上昇局面でした。)

 というわけで、「10人の師を見つけましょう!」と安易に訴えかけながらも、意外にも簡単に探せるものではないことに気づきます。

これまで「師匠」にめぐりあった私の方法は....

 そこで、わが身を振り返れば、尊敬できる「師匠」にお遭いできたのは、やはりネット以外の場によるものが多かったことに思い当たりました。

 昔の言葉ですが「天の時、地の利、人の和」そのままなのです。

 天の時....10年前から5年前はインターネット黎明期で、この新しいツールを活用しようと、業種・職種・年齢・性別問わず、いわゆる「普及学」で言うところの、イノベーター・リーダー層が集まっていたのです。

 地の利....今も、ご高導いただいている「師匠」とは、学会、勉強会、講演会などに積極的に出向いて出遭った場合がほとんどでした。即ち、ネットで完結はしておらず、顔を合わせて初めて心から敬意を抱くケースが多かったのです。

 人の和....ありがたいことに、こうして出遭うことができた「師匠」に、「この人に会いなさい」「メルマガを読みなさい」とご紹介いただくことも多かったのです。「師匠」の薦めに素直に従ううちに縁が広がっていったのです。

 しかし、ブログビッグバン時代には、わが牧歌的な時代の「天の時、地の利、人の和」が、そのまま通用しそうもありません。おそらく、新たな「天地人」を生かしたルールが、システムが必要になるでしょう。

各誌編集長の「愛読ブログリスト」が知りたい

 そこで、私がITpro編集部と日経BP社が誇る「日経○○○○といった各業界・職種専門誌」編集長に熱望したいサービスがあります。これは、多種多様の専門誌を出版している日経BP社だからこそできることです。

 それは、各編集長・副編集長に、わが「愛読ブログリスト」を定期的にネットで公開していだくことです。愛読リストといっても、すべてを書く必要はありません。(きっと恥ずかしいものもあるでしょうし....。)私がTシャツガイドをしているオールアバウトのように200サイトもピックアップする必要もありません。「10の師」というコンセプトで、注目10ジャンルの師匠1人ずつ、計10人で良いのです。

 それぞれに必要な情報もわずかです。1)ブログ名 2)作者名 3)ブログURL 4)RSSリーダー用URL 5)ミニ解説(100文字前後) の5項目で十分でしょう。これなら、エクセルA4用紙1枚の入力シートに収まるはずです。エクセルはHTMLに変換できますから、ホームページ作成の手間さえ要らなくなります。

 編集長という立場上、1人の師匠に絞るのは難しいかもしれませんが、数名の副編集長と分担すれば、なんとかバランスが取れるでしょう。

 さらに、ご紹介する10の師匠にも、10の愛読ブログリストを作っていただければ、10×10×(編集長+副編集長+デスク)×雑誌数という「関心度・有用度抜群のリスト」が完成してしまいます。

編集長「愛読ブログRSSリーダー」が欲しい

 しかし、ただ「編集長愛読ブログリスト」「愛読ブロガーの愛読ブログリスト」をネットで公開して提供するだけでは、読者の利便性も高くありません。また、日経BP社のビジネスや広告にも、さほど役立たないでしょう。

 そこで、日経BP社専用、さらには各雑誌専用のRSSリーダーをご用意されてはいかがでしょう。各雑誌のRSSリーダーをダウンロードすると、最初から「編集長愛読ブログ」が登録されているわけです。わざわざリストか登録する必要もありません。あっという間に、しかも無料で「編集長と同じ情報源を手に入れることができる」というのは魅力です。いつでも好きな時に、気軽に注目ブログを読むことができるようになります。

 RSSリーダーは、各雑誌名・ロゴが表記されていて、すぐ雑誌公式ページにリンクされるように、独自にデザインします。これが、いわば新時代のブログ雑誌?の表紙になるわけです。もちろん広告バナーも表示したいですね。WEBサイトで、毎日更新しているニュースや記事があれば、そこへのリンクも欠かせません。

 こうした、RSSリーダーを、定期購読者以外にもダウンロードしてもらうことで、読者層を広げることができます。結果として、月刊誌の日刊化、定期購読誌のフリーペーパー化にもつながるかもしれません。

編集長「1日1ブログ厳選日記」でひとり勝ち

 さらに、編集部としても積極的にこのブログ雑誌を活用したいものです。といっても、編集部ブログを作って、毎日「取材日記」「編集後記」を紹介するだけでは芸がありません。

 私なら、編集長が愛読するブログやメルマガの記事から、毎日一つを厳選して、ショートコメントつきで紹介する「1日1ブログ厳選日記」を書くことでしょう。

 いわゆる子メルマガ、子ブログです。これなら、1から原稿を書くよりも、はるかに効率的です。私も日経ベンチャーで、ほぼ毎日10年近くメールコラムを続けていますが、長続きの秘訣は「子メルマガ」なのです。ある人の意見を一方的に聞かされるよりも、目先が変わって読者にも喜ばれるでしょう。

 何より読者にとってありがたいのは、日々、時間の節約につながることです。今後は、10人の師匠のブログさえも、忙しくて読めない人が多くなると想像しています。RSSリーダーでブログ記事をダウンロードしてはみたものの....最後には、編集長のお奨めブログを毎日1つ読んでおしまい....そんな人が増えるはずです。

 つまり、愛読者にとっては、「編集長」が、すべてのブロガーの一番前に立つ「ブロガーの中のブロガー」ということになるかもしれません。

 既存の資源=編集長、日常業務=情報収集、ブランド=日経○○を活かしつつ、大きな手間もシステム投資もなしで、気がつけば「ブロガーの中のブロガー」になっている。それでいて新しい読者層も含めて感謝される。また、社会的な情報インフラとしても必須である。この「編集長愛読ブログリスト」「愛読ブログRSSリーダー」「1日1ブログ厳選日記」は、ぜひ実現していただきたい「三方よし」の新「三種のブログ神器」だと思うのです。