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嶋正利のプロセッサ温故知新

私とマイクロプロセッサ(2)---「ああ,これがアメリカだ!」

嶋 正利=ITpro Watcher 2006/05/11 ITpro

 1969年,ビジコンの社員であった私はIntelと電卓用LSIを共同開発するために渡米した。ジャンボ機(ボーイング747)が就航する1年前のことであり,天井が低く,座席が狭くクッションも悪いボーイング808に搭乗して,ハワイ経由で20時間かけてサンフランシスコへと向かった。当時は,海外旅行がまだ一般的ではなく,アメリカへの往復の旅費が新卒の年収と同じくらいした。個人で外国へ行くことなど夢のまた夢という時代である。英会話にも全く自信がなく,初めての米国での仕事に対する緊張と不安は当然あった。しかし,何でも見てやろう,やってみようという意気込みと期待の方が大きかった。

 やっと着いたサンフランシスコの空港では,IntelのMarcian Ted Hoff博士が迎えてくれた。空港からさっそくHoff博士の車でIntelがあるマウンテンビュー(Mountain View)市の宿舎に向かった。彼の愛車は赤いリンカーン・コンバーチブルで,内装は白一色の革張りであった。この車で片側3~4車線もあるフリーウェイ101を70マイルで飛ばした。「ああ,これがアメリカだ!」---まさにアメリカ映画そのままの世界であった。

 宿舎は,マウンテンビュー市のミドルフィールド・ロード(Middlefield Rd)とモフェット・ブルバード(Moffett Blvd)の交差点にあった。建物を見て驚いた。アパートは独身者専用で,日本では見たことのない,今のマンションのような建物だった。部屋に入ると,3つの寝室,リビング・ルーム,ダイニング・スペース,シャワー付きタブ,電化製品が完備した台所があった。電気ヒーターは3つもあり,電気オーブン,自動食器洗い機,ディスポーザなどは見たことも聞いたこともなかった。

 ほかにもアパートには,自動洗濯機,乾燥機,プール,サウナ,ジム,ビリヤード,談話室などがあった。おかげで,ビリヤードの腕は一人前と言えるほどになった。日曜日になると無料でサンデー・ブランチが食べられたのもびっくりした。

 日本の寮で6畳一間を2人で使い,トイレも風呂も共同で使用していた私には,アメリカ映画の中の人物になったような感じがして,驚きと戸惑いとうれしさが一緒に来た。知らない世界に飛び込む勇気もわいてきた。何でもやってみようとしていた私には最良の環境となった。ただ,週末になるたびにパーティに誘われるのには少し困った。

 当時,日本から持ち出せるドルはたったの500ドルであった。手持ちのドルがなくなると,ビジコンのニューヨーク支店に送金してもらった。当時は日本での給料をそのまま貯金できたので,半年も出張して残ったドルを持ち帰ると,びっくりするくらいのお金が手に入った。合計2回の1年間にわたる出張で1年半ぶんほどのお金がたまった。

 Intelに到着すると,同社の創業者の一人であるRobert N. Noyce博士が無料で新車を貸してくれた。それ以来,Noyce博士は大変親切にしてくれた。後年,Noyce博士がIEEEで表彰されたときのこと。電話が掛かってきて,すぐ部屋へ来いと言う。部屋に行くと,ロッキングチェアがあり,座ってみろと言う。何がなんだか分からないが座ってみると,IEEEで表彰されてもらってきたから最初に座らせたと言う。これには参ってしまった。Noyce博士は仕事では厳しかったが,人の心をつかんでしまう不思議な魅力のある人であった。

 Intelの建物は,正面の左側に経営陣と経理部と人事部,右側に開発部,中央の左側がカフェテリア,右側が実験室と信頼性管理部,一番奥にクリーンルームを含む製造部のようにレイアウトされていた。開発部の一部屋を借りて仕事を始めた。カフェテリアには,ハンバーガーやサンドウィッチなどのコールドミールやお菓子が買える自動販売機と電子レンジ,コーヒー・メーカーがあり,コーヒーは10セントで飲めた。コーヒーの支払いは善意に基づく支払いであった。1日に何回もコーヒーを飲み,すっかり砂糖なしの薄いアメリカン・コーヒーのファンになった。

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