前回お話したような苦労を経て,ソフトウエアを完了させて納入したのですが,お客様より仕様変更の要望が出ました。同じような失敗を繰り返す訳にはいきません。そこで今度はインドに委託せず自社内で変更対応することにしました。

 ところが担当技術者が詳細を調べたところ,簡単には現状のソフトウエアを変更対応できないことがわかりました。

 開発初期にはソフトウエア構造はしっかりしていると認識していましたが,インド側の新しい担当者が自分の考えで変更していたのでした。海外側に,ソフトウエア構造の保持や変更のやり方についてガイドラインを出したり確認していなかったことが問題でした。

 これには弱りました。仕様変更に際してソフトウエアの再構築が必要ですが,それには手間と時間がかかります。本来ならば経験したインド企業に委託して再構築してもらうのがよい方法ですが,プロセス改善や体制変更が必要であり,その見直しの時間もありません。一番大きな問題はその費用が捻出できないことでした。

海外オンサイト技術者に救われる

 お客様と打ち合わせたところ,品質・コストは課題ですが,納期だけは4カ月後と余裕があることがわかりました。しかし,ソフトウエア変更の検討に日本人技術者の手間が取れない状況でした。

 困っていたところで,ふと開発部門のデスクに目をやると,別プロジェクトでオンサイトで作業していたベトナム人技術者が目に映りました。縁あってスキルが高く信頼できるベトナム人技術者と知り合い,オンサイトでソフト開発をサポートしてもらっていたのです。

 ソフトウエア海外開発プロジェクトにおいては,実は海外リソースの効果的活用とカントリー・リスク回避を狙い,テーマに応じて中国,インド,東南アジアなどのソフトウエア会社や技術者を使い分けて活用していました。その1テーマがインド委託で問題となったものでした。

 そこでスケジュールを調整してベトナム人技術者の時間をとってもらい,仕様書,ソースコード,不具合指摘事項を渡して検討してもらいました。基本的なドキュメントはすべて英語で整備していたので,その技術者がすぐに技術的検討を行うことができました。

 彼の短期間の集中検討により,技術ベースがあるので工数約25人月,期間4カ月程度あれば開発を完了し,お客様の納期に間に合わせることができることがわかりました。その技術者の母国の組織対応でも実績が出ており,インドの半分以下の低コストであることも実証されていました。そしてうまいことにその開発委託費が小さいため,お客様からの受託費用でその海外開発のすべてをまかなえることもかりました。

 そこで仕様変更とからめてそのソフトウエアを今後の仕様変更に柔軟に対応できるよう再構築することを決め,その開発プロジェクトをその技術者を中心にしたべトナムのチームにオフショア開発契約しました。そしてうまく開発は予定どおり完了して4カ月後にうまく完了させ納入できました。

トラブルに備え選択肢を,変更は記録とレビューを

 このことは今後のためのよい教訓となりました。今回はスキルある人材を低コストで直ちに確保していたので異常事態に対応するこができ,収益を悪化させることなく目標を達成することができました。海外外注では読めないリスクが多いため,これが駄目ならあれ,あれが駄目ならこれ,というようにいくつかの対応の選択肢を準備しておくことが肝要です。

 また,最近では変更の際は必ずコードレビューシートに発生日,区分,状況,再現方法,修正方法などを記録させるようにしました。海外側と日本側のリーダー両方によりレビュー,チェックしてトラブルを回避するようにしています。


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