IT に詳しくない方は,ソフトウエアは一度作成してしまえば,工数がかからないと考えていることが多いようです。運用はルーティンワーク的な作業だという方もいます。保守・運用などの工数をまったく考えに入れずに費用を算出している方もあります。そして残念ながら,企業の経営者層にもそのように考える方々は少なくないように思います。

 現実にはシステムは生き物です。現場では予想していなかったことが起こります。利用率やデータ量が上がらないと表面化しないような問題も多々存在します。

 また当然ながら,拡張や変更は,場当たり的な対応はリスクが伴います。一部の修正であっても全体に波及することになるからです。全体の構成がわからないとソフトウエアの保守はできません。

 IT は魔法ではなく,人間の活動を模擬したものに過ぎません。システム化することによって,システム化された業務の工数は削減されるかもしれませんが,開発・保守・運用というIT部門に携る人間の工数は上がります。

保守・運用は消防活動のようなもの

 最近,人に説明するときに保守・運用の作業のことを消防活動と同じという話をします。消防士さんたちは,火事が発生したときに備えて,日々訓練しています。例えば,税金がもったいないから,村から善意ある市民を募って,消防団を結成して家事に備えたらどうなるでしょうか。

 まず火事の現場に駆けつけることが困難です。他の仕事を兼任している人に,即その仕事を中断して,火事に対応するなどできるはずもありません。

 第2 に,日々訓練しているのならともかく,付け焼き刃の知識や技能で火事が消せるでしょうか?答えは否です。現場は大混乱となり,悲惨な結末が待っているでしょう。

 そんなこと誰でも分かるよと言っていただけるでしょうか。上記の現象が起きているのが保守,運用の現場です。人命がからんでないから比較にならないでしょうか。ならば,24 時間365日ダウンさせるなということも,断言してはならないだろうと思います。ダウンさせないためには、重要度に応じた警察や警備と同じような予兆監視作業も別途必要になるからです。(監視の話は次回に送ります)仮に24 時間365 日を主張するのであれば,最低限24時間対応できる人員体制とできなければならない作業を選択することだと思います。市場に出ているすべてのRDBMS の障害復旧,ネットーワーク機器の対応などできるわけがありません。

 勇気をもったハードウエアやミドルウエアの選択制限,利用方法の制約もときには必要でしょう。またベンダーとの技術連携も重要です。

 ベンダー,インテグレータ,ユーザー企業で運用に関わる方は,こういった運用の重要さを社会に認知してもらえるように努力する必要があると思います。