今、まさにブログ・ビッグバンと呼びたくなるような「Webサイトの幾何級数的増加」が始まっているのではないでしょうか?

ブログの普及で、毎日Webサイトもページも増え続ける

 ブログは、気軽な「Web日記」であると同時に、ほとんど無料で使える「簡単ホームページ作成・更新ツール」でもあります。ブログの普及が、世の中のWebサイト数ならびにページ数を急増させるのは、誰の目から見ても明らかでしょう。

 総務省が昨年10月19日に発表した報道資料によれば、2005年9月末のブログ登録者数は473万人(半年前は335万人)と急増しています。おそらく、既にのべ600万人を超えるブロガーが毎日ひそかに活躍しているはずです。

 これまでは、Webサイトが増えても、必ずしもページ数が増えるわけではありませんでした。専門業者に頼んで作った会社案内・商品カタログサイトは作ったものの、その後はページが増えないサイトも多かったからです。しかし、ブロガーは、基本的に日々ページを追加していきます。もし、ブロガーが、毎日は無理でも週に2~3日でも日記を書き綴っていったら、毎週ブログ数の2~3倍のペースで、ページ数が増加していくわけです。仮に今600万人のブロガーがいるとしたら、毎週、千数百万ページがネットにあふれ出していても不思議ではありません。

WBC優勝で感激したブロガーが、関連ページを急増させた

 例えば、日本人の多くが感動したであろうワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。その優勝後、1週間たったある日、「WBC優勝+ブログ」でGoogle検索したところ、150万件以上がヒットしたのです。大雑把に言えば、たった一週間で、のべ150万人もの人が何らかのブログで「WBC優勝」をネタにして何かを書いたと思われます。

 きっと、あの時の感動を、誰かに伝えたい、誰かと分かち合いたいという感情を抑えきれなかったのでしょう。かくいう私も、ブログではありませんが、オールアバウトの連載記事に思わず書いてしまいました。

 その時、同時に「WBC優勝」だけで検索してみましたところ約250万件がヒットしました。ですから、数だけで見比べれば、ブログ関連情報が、マスメディアや関連団体などの情報を凌駕したことになります。

 そして、ちょうど1か月経った今、再び検索してみますと、「WBC優勝+ブログ」の検索結果は約349万件、「WBC優勝」では約415万件がヒットしました。おそらく、ブロガーたちは、感動した時の「瞬発力」があるばかりでなく、その味わいを噛み締めたり、それをネタに議論する「持続力」にも富むようです。

 ブログの醍醐味のひとつは、独り言のようなつぶやきに端を発した井戸端会議にもありますから、良いネタであれば、仲間内で長く味わえるわけです。あくまでも「旬」の情報にこだわるマスメディアとは、その点でも特性が違うのでしょう。

マスコミが「感動の素」を大量配信。ブロガーが身内向けに「手料理」

 とはいえ、マスメディアが不要というわけではありません。今回のWBCの事例例ならば、あの休日昼間の「衛星生放送」がなければ、ここまでは盛り上がらなかったはずです。なんと、優勝の瞬間の最高視聴率が56%だったそうです。おそらく、テレビの前の人たちは一斉に歓声を上げたはずです。

 つまり、マスメディアが、いわゆる「感動の素=今回なら優勝の瞬間」を、多くの人に同時に配信する「大がかりな下り情報」を担当したのです。その役割は、今後も変わらないでしょう。そして、個人ブロガーがマスメディアから受け取った「感動の素」を「手料理=わが感動表現と一言意見」して仲の良い身内に配信する「等身大の下り情報」を担当したのです。

 さらに、お互いの「手料理」を気の合う仲間同士で持ち寄って、ちょっとしたホームパーティを行うような「等身大の情報交換」も、ますます盛んになるはずです。言い換えるなら、マスメディアは、ブログで共有できる「ネタ」を提供する役割を担っているのです。

ビジネスでもブロガーが「主力商品キーワード」の聖地を侵食

 話が、WBC優勝の話だけならば、単なる雑学で済むのですが、同じ現象はビジネスにおいても多大な影響を与えます。大切な会社のホームページや、商品カタログページが、急増する個人ブログに埋もれて「見えなくなってしまう」からです。

 例えば、私たちの会社が直面している「危機的な状況」について、ご紹介しましょう。今年の3月3日のひな祭りの日に、主力商品である「Tシャツ」というキーワードでGoogle検索を試みました。すると、359万件もヒットしました。インターネット黎明期の10年前、日経インターネットアワードをいただいた頃の牧歌的な世界では、Yahooで「Tシャツ」検索をしてもヒットするのは、わずか100件台でした。もはや隔世の感があります。

 しかし、驚くのはこれからです。一か月も経たない3月31日に、もう一度「Tシャツ」というキーワードで検索をした結果に仰天しました。なんと「1650万件」もヒットしたからです。わずか1ヶ月足らずで、「Tシャツという一語を含むページ数」が4.6倍にも急増したことになります。

 それから20日後の今、再度「Tシャツ」で検索しましたら「2130万件」。幸い、まだ幾何級数的に増えているわけではありませんが、これからTシャツシーズンになり、コレクション自慢などを始める個人が増えれば、急増ピッチは上がりこそすれ、下がることはないでしょう。

 だからこそ「主力商品名」でのキーワード検索を、毎月「定点検索」することが大切です。月次決算で残高試算表をチェックするのと同様に、ブログ「定点検索」も重要な経営手法になっていくと思います。

「主力商品+自社名」での「定点検索」のすすめ

 月次でブログ「定点検索」をするとしたら、「主力商品名+自社名」での検索も欠かせません。私たちの場合でしたら、「Tシャツ+久米繊維」で検索するわけです。

 3月3日に、検索してみたところ 1万6000件ヒットしました。つまり、Tシャツ関連ページ全体の359万件に占めるシェアは、約0.45%ということになります。これが多いか少ないかはさておき、一か月後の数字と見比べると愕然としてしまいます。

 1か月後の結果は、2万4000件。ですから、おかげさまで5割も増えたことになります。ところが、Tシャツ関連ページは、それ以上に急増して1650万件になりましたから、シェアは約0.15%に下がってしまいました。

 もちろん、個人ブログを通じたおしゃべりの急増と同じペースで、自社関連サイトやブログを充実させていくことは不可能です。しかし、そのヒット数とシェアの推移を毎月「定点検索」することは、ネット上での自分たちの存在感を知るためにも重要でしょう。

検索時の「表示順位」もこれからはブロガーが左右する

 とはいえ、いくらサイト数ページ数が急増しても、主力商品名で検索した時に、自社関連のサイトが「表示順位」の上位を独占していれば問題がありません。いわば、ネット上の「一等地」に会社やお店があれば、来客数が激減することもないでしょう。

 しかし、残念なことに、この「表示順位」もブロガーに左右される傾向にあります。よく言われるように、ブログは「検索エンジン対策」に今のところ有利です。こまめにブログを更新している人気ブロガーなら、1)テキスト中心、2)更新日が若い、3)更新頻度が多い、4)ページ数が多い、5)多くのサイトからリンクされている、といった好条件が重なるからです。

 即ち、自らもブログを駆使しながら、一般のブロガーを上回る更新頻度で「価値ある情報発信」を続け、人気を維持しなければならないのです。具体的には、全社ブログ・オーケストラ経営で、社長も幹部もブログで情報発信をしなければ、「一等地」をキープすることは難しくなるでしょう。

ブロガーから紹介記事やリンクが集まる社会的企業を目指す

 一方、全社ブログでの地道な情報発信が、取引先やリピート顧客から支持されますと、今度は急増するブロガーたちが、自主的に応援してくださる可能性もあります。特別に謝礼を差し上げたり、アフィリエイトやアソシエイトとしたネット販売代理人になっていただかなくても、企業や商品の好感度が高まれば、ブログ記事やリンクで紹介してくださるかもしれません(逆に、お金で記事を書いてもらおうとすると嫌われる場合も多いのでご注意ください)。そうなれば、社長以下、自社スタッフで毎日情報発信と蓄積をする以上のスピードで、関連ページが増え続けていくことになります。

 ただし、なにか不祥事を起こした時にも、紹介ページ数は急増してしまいます。ある時は、面白おかしく、ある時は憤りに満ちたブログ記事を勝手に書かれてしまうのです。「定点検索」の時には、件数だけではなく、目立ったブログ記事=特に賞賛・お礼と批判・意見=については、内容を吟味して、経営幹部を中心に共有すべきでしょう。また、ネットワーク上で影響力を持つカリスマブロガーについては、RSSリーダーに登録して、日々発言を拝聴することも必要でしょう。

 昨今、企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)が問われていますが、そのうち、ブログの「定点検索」をすれば、企業の社会的価値(CSV:Corporate Social Value)が推察できる時代が来るかもしれません。だからこそ、経営者直轄の社長室や経営企画室などが中心となって、社外ブログの「定点観測」と、社内ブログの「発信管理」を、戦略的かつ定期的・組織的に行っていく必要がありましょう。

 そうすれば、「今ネットで起こっていること」の一端を垣間見ることができます。そして、経営者自らブログを書く意義も感じ取っていただけるでしょう。

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