リニューアル前の「IT Pro」の第一印象は,私の小学生の子供の部屋のように,トッ散らかった,ごちゃごちゃしたサイトだなあという印象でした。

 まず,色のトーンが全体に青っぽく濁っていて,暗い感じ。そういった空間の中に,文字情報がぎっしり詰め込まれていて,どこから読んでいいのかわかりません。さらに,サイトの顔であるヘッダーに置かれたロゴマークが冴えない。古い感じの,あまり個性を感じられない,つまりオリジナリティのないデザインでした(日経BP様,デザイナー様,ぼろくそ書いてすみません!)。

 特に,ナビゲーションの操作がひどい。プルダウン・メニューが左側と上部にあって,どちらにも違う項目と同じ項目とが混在し,どっちを見ればいいのかわからず,ここで私は「イラ!(-_-#) 」ときました(おまけに,違うページにいくと,左にあったメニューが右下に移動しているし!これにはびっくり)。

 まるでレストランで,三つのメニューを出されて,どのメニューにも飲み物が載っているけれど,どのメニューも違う飲み物と同じ飲み物とが混在しているようなもの。「飲み物は飲み物で,ひとつにまとめろ!」と叫びたくなってしまいます。料理がすばらしくおいしければ別ですが,普通の料理ならば私は二度とその店には行きません。メニューとは,レストランにとってもWebにとっても大切な導入部です。そこで出鼻をくじくようなまねは,お客様を逃がすことにつながります。特にWebのメニューは始終使われるものなので,使い勝手を十分に考えなければなりません。

 デザインには目的があり,それに合ったデザインが必要になってきます。目標を達成するには,コミュニケーション力を持ったデザインが必要と前回書きましたが,コミュニケーション力とはどのようなことでしょう。

 コミュニケーションという言葉の定義は場合によって様々ですが,コミュニケーション・デザインという場合,「伝えたいことを正確に相手に伝える力」といえるでしょう。自分を知的に見せたい人は,そのような服装をし,言葉を使い,そのような装身具を身に着けて知的なイメージを演出します。知的であるかどうかは関係なく,そう見える工夫をするとそう見えるものです(ほんとうに知的でなければ,いずれバレますが)。ヒップホップのお兄さんたちはそれなりにブラック・カルチャーなイメージの,セールスマンはそれなりに信頼のおける親しみやすいイメージの,ヤクザのお兄さんたちはそれなりに怖いイメージの演出を,あらゆる物や言動を用いてイメージ付けしているのです。

 企業がWebを通じてするべきことも,これに似ています。どう見られたいのか,どう思われたいのか,明確なビジョンがまずあって,これが「伝えたいこと」。そしてそのように見てもらうには,どのようなビジュアルを用いればよいかを考えていくこと,これが「正確に伝える」ことなのです。

 旧IT Proには,どう思われたいのかというビジョンが薄かったのではないでしょうか。なぜなら,冒頭で私が感じたようなデザインにあえてしたかったとは考えにくいからです。

 今回のリニューアルでは,「高学歴のエンジニアの方々に向けて,知的で,信頼性があり,かといって冷たい感じを与えない“ちょっとかわいおもしろい感じ”」にするべきだと考えました。以前もそうしたかったのかもしれませんが,それがうまく表現されていなかったと思います。「正確に伝える」ということは難しいことです。今回,知的で,信頼性があり,親しみやすく感じてもらうために,様々な装身具や言動を用いています。それをどう用いるのかが,つまり“どうデザインするのか”ということになるのです。デザインも難しいですが,この「伝えたいこと」があやふやなサイトが結構たくさんあるのです。ここが明確でないと,デザインも効果が上がりません。


どう思われたいのかがあまり必要でない職業の人は,見た目ではわからない場合が多いですよね。
エンジニアの皆さんもそうでしょうか?