ITproの読者の方々でしたら,インターネットに関する国際的な標準化団体「W3C(World Wide Web Consocium)」についてはよくご存知のことと思います。今回は,グローバルに活動を続けるもう一つの国際的な標準化団体,「OASIS(Organization for the Advancement of Structured Information Standards)」について解説します。

 OASISは,日本ではあまり有名ではありませんが,XML,Webサービス,SOA,グリッド・コンピューティングなど,今後のeビジネスを支える仕様の標準化団体として,世界的に確固たる位置を確立しています。私は2003年から,OASISの日本代表を務めています。日本語のWebサイトや日本語によるOASISの最新ニュースの発行(講読はこちら)に携わっています。

OASISの生い立ち

 OASISの前身は,1993年に設立された「SGML Open」という非営利会員制コンソーシアム(団体)です。ソフト製品のベンダーやユーザー企業が参加し,汎用マークアップ言語SGML(Standard Generalized Markup Language)を利用した製品の相互運用性を確保するためのガイドライン策定に携わってきました。

 SGMLのWeb版仕様であるXMLの登場,そしてXMLの適用範囲の拡大に伴いさまざまな関連標準が生まれたことから,SGML Openの活動範囲も拡大しました。そこで1998年にOASISへと名称を変更したという経緯です。

OASISの規模と構成員

 OASISには設立以来,世界100カ国の600以上の団体や個人会員を含む5,000人以上が参加し,70を超える技術委員会を設置して活動しています。米IBM,米マイクロソフト,米オラクル,米サン・マイクロシステムズをはじめとする,皆さんがご存知のITベンダー,システム・インテグレータ,そして官民の多くのユーザー企業が会員となっています。

 日本からの会員は,富士通,日立製作所,NEC,日立システムアンドサービス,NTT,野村総合研究所,ソニー,富士ゼロックス,リコー,ジャストシステム,インフォテリア,ATLシステムズ,産業技術研究所(AIST),次世代電子商取引推進協議会(ECOM),PSLXコンソーシアムの12社3団体となっています。

OASISの特徴

 OASISの最大の特徴は,その運営管理及び標準化プロセスがすべて公開されていることです。OASISが定めた標準化プロセスに従って標準化作業が完了すると,会員による公開投票によって,OASIS標準として承認されます。その運営管理はすべて公に報告され,公開範囲に制限はありません。

 OASIS理事会および技術諮問理事会の役員は民主的な選挙によって選任されます。任期は2年と決められているため,特定の人が居座るということはありません。コンソーシアムの役員はあくまで個人を基準に決定しています。献金の有無や企業規模,あるいは特別な任命などによるものではありません。現在日本からのOASISの理事会と技術諮問委員会の役員として富士通の方が就任しており,活躍して頂いています。

オープン性に惹かれ活動の場をOASISに移す団体も

 このOASISのオープン性に惹かれて,多くの標準化団体が活動の場をOASISに移しています。セキュリティ分野では「PKI(公開鍵インフラストラクチャ)フォーラム」,Webサービス分野では「UDDIコンソーシアム」,法務関連では「LegalXML」など,元々OASISとは別に存在した標準化団体が,OASISで標準化活動を継続しています。

 次回は,OASISが標準化しているオープン・スタンダードについて紹介します。