図1●ACCESSの組織図
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写真1●PalmSourceの社員と
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写真2●ACCESS Linux Platform上で動作するPalmアプリケーション
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写真3●LinuxのGtkアプリケーション
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写真4●Max UI
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写真5●Max UI
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 前回少し触れたが,2005年11月に米PalmSource社を買収したことで,グループ社員総勢約1200人,一夜にしてACCESSのグループ従業員の3分の2は海外で働くメンバということになったわけだ。主な開発拠点は,日本,米国シリコンバレー,ドイツ,フランス,中国(北京,南京)である(図1)。

 日本企業としては,こうしたグローバルオペレーションはかなりのチャレンジではあるが,そこはエンジニアが中心の会社,モノづくりの楽しさは共通で,CやHTMLという共通語で,すぐにお互い理解しあえるという感じだ。

 ACCESSはこれまでも,ドイツやアメリカ,北京の拠点で製品の一部を開発したり,テスト業務を海外にシフトしたりしてきたが,今後はそもそもグローバルな視点をベースに,全体最適を考えていく。

 さて,PalmSource社といえば,もともとPDA向けのPalmOSで有名で,使いやすいユーザーインタフェースで定評があり,最近ではPDAフォン向けのOSをLinuxカーネルベースに開発している。シリコンバレーの優秀なエンジニアが集まっているものの,次の展開に苦慮していた。そこで,携帯電話向けソフトで既に実績のあるACCESSと一体となることで,面白い展開が見えてきた(写真1)。

 彼らも,日本企業に買収されるということで不安もあったようだが,同じソフトウエアの会社,カルチャーも近いということで,大きな問題はなかった。何より,携帯電話をはじめとするすべての機器をネットにつなぐ,基本ソフトで成功しよう,という我々のビジョンに共感してくれた。

「力を合わせて開発した製品を3GSMで発表しよう」

 私が最初にやったことは,ACCESS,PalmSourceの両者に共通の,分かりやすく,エキサイティングな目標を掲げることだった。エンジニア集団を引っ張るにはこれが重要だ。

 「我々が力を合わせて開発した製品を世界に見せてやろう」--- 私が設定したゴールは,2月に開催される携帯電話に関する世界最大の展示会「3GSM」(関連記事)で新しい製品を発表することだった。

 その新製品が「ACCESS Linux Platform」だ(関連記事)。Linuxカーネルをベースに,PalmSource社のOSノウハウ,PIMなどの優れたアプリを載せ,さらにACCESSのNetFrontブラウザなどを統合したものだ。

 今後のケータイには,Webブラウジングをしながら音楽を聞いたり,動画を見たりといった,マルチタスク処理機能が求められる。しかしマルチタスク処理機能を備えた本格的なOSはそれほど選択肢がない。Linuxは自然な選択だった。

 Linux上に,PalmOS向けの既存のアプリケーション(約2万種類あると言われている)をバイナリでそのまま動かすエミュレータも用意した。これにより,Linuxの上にPalmの資産をすべて持ってこられるという訳だ。PalmOSのアプリ開発者は世界で42万人も存在するので,その開発力が携帯電話の分野に広がることが期待できる(写真2

 また,Linuxの分野で標準となっているGUIライブラリであるGTKのアプリケーションも動くようにした。これにより,Linuxコミュニティのアプリケーション資産も有効活用できる(写真3

 さらに,高度なユーザーインタフェースのアプリケーション・フレームワークも準備しており,次世代のアプリケーションを開発することも可能だ(写真4,写真5

 買収したのが昨年11月中。開発期間はわずか3カ月弱しかなく,きわめて厳しいスケジュールだったが,全員が一丸となってがんばってくれた。同じ目標に向かって力を合わせることで,チームは一つになれる。

それぞれの特徴を活かしたグローバル組織

 ソフトウエアのフレームワークやアーキテクチャ,GUIデザインはシリコンバレー(米国)に一日の長がある。中国のエンジニアは,目標が定まれば実装がすごく速い。これに対して,日本はコンパクトに緻密に作るのが得意だ。品質レベルの要求も日本市場が世界で一番高い。というように,それぞれの地域の強いところを組み合わせて,最適なチームを作り上げようという訳だ。

 日本が本社で何でもコントロールするという意識ではなく,グローバルに融合したな組織としたい。我々はいろいろとチャレンジしながら,21世紀のハイテク企業の一つの新しいスタイルを構築しようとしている。