仕事を成功させるために人は何らかの行動をします。そして、その行動が合理的で理にかなうものであればあるほど、仕事が成功する確率は高くなっていきます。まあ、簡単に言えば、「上手く動け」ということでしょうか。今回の事例(前回の分参照)のように、口やかましい顧客のC部長とどう対応していくかで、システム開発プロジェクトの成功が左右される状況では、プロジェクトマネージャー(A氏とします)は非常に気を使って行動しなくてはいけないのです。

 顧客の担当者であるC部長と開発側のプロジェクトマネージャーでは、どう考えても顧客側のC部長の方が立場が強いのです。こういったことを踏まえ、「A氏はどのように行動しなくてはいけないか」を考えるのが、私の指導する「ヒューマンマネジメント」なのです。

 では、このケースを具体的に考えていきましょう。今回のケースまず、最初に考えなくてはならないのは、A氏が行う行動の目標です。これは、前回も述べましたが以下の通りです。

目標:C部長と上手くやっていくこと。
→そのために・・・・C部長に正しく役割、作業を説明し、理解してもらう。
→そのために・・・・C部長が好きな資料構成、説明の方法を使う。
→そのために・・・・C部長が好きな資料構成、説明の方法を知る。

 A氏が目標を達成するために必要な行動は、C部長が好む資料構成や説明の方法を知ることです。ところで、C部長と仲良くやっていくために、C部長の好む資料構成、説明の方法を知ることが効果があるかと言う反論があるかと思います。

 しかし、私は、長年の経験と学んできた社会心理学から「人は自分と同じように考える人間を好む」という法則をよく利用してきました。自分がプロジェクトマネージャやプロジェクトスタッフを担当した際は、常にこのように、相手のキーパーソンの好みを調べ、そのような資料を作ったり、説明方法を工夫するようにしてきたのです。

 これはあくまで、私の蓄積してきたノウハウですが、非常に役にたつことだと思いますので、読者の皆様にも紹介しているわけです。

C部長の好む資料、説明方法を知るための行動とは?

 というわけで、私なら、ここでとるべき行動は「C部長が好む資料構成、資料の方法を知るためにどうするかを考え、実行に移す」ということになります。
とは言うものの、どうしたらC部長の好むものを作ることができるでしょうか?

 答えは、視点を少し考えれば、分かるはずです。C部長に説明するために、いつも資料を作成している人に協力してもらえばよいのです。そして、その人は「C部長の部下」に他なりません。部下なら、C部長の性格、好む資料、嫌いな言動を全て知っているはずなのです。

目標:C部長と上手くやっていく。
→そのために・・・・C部長の好む資料構成、説明方法を採用する。
→そのために・・・・C部長の好む資料構成、説明方法を知る。
→そのために・・・・C部長の部下に協力してもらう。
→そのために・・・・C部長の部下と懇親会を行い、宴会の席で仲良くなる。

 C部長と上手くいくためには、「C部長の部下と仲良くなって、C部長の好むものを教えてもらう」というタスクブレイクができましたので、あとはこれを具体的な行動として実施し、上手くいくようにコントロールしていけばよいのです。当然、これが全てではないのですが、ここでは仕事を成功させるための目標の設定の仕方、それを具体的行動にブレイクダウンする方法を理解してほしいと思いこのような例を説明しました。

【問題】
 C部長と上手くやっていかなければ、システム開発は成功しない可能性が高いと仮定しましょう。早速、C部長からあなたに「資料を纏めて説明にきてほしい」と言われました。

 さて問題です。あなたは、どう行動するでしょうか?

 つまり、上記の問題の回答として期待しているのは、「C部長の部下と仲良くなって、C部長の好むものを教えてもらう」というような、具体的で効果がありそうなものなのです。