前回,コンタクト・ポイントの重要性について書いた。しかしこれほど重要なコンタクト・ポイントについて,世間では認識が希薄としか思えないケースが目立つ。

 例えば,私は最近「タブレットPC」に関心を寄せている。1台購入したい。そこで,インターネットで検索してみた。まずマイクロソフトのタブレットPCのWebページが見つかった。私は,そのページで富士通の最新機種が重量1Kg以下だと知った。

 そこで私はさっそく駅前にあるヨドバシカメラへ行ってみた。そこには目的の製品はなかった。私は店員に尋ねた。「去年は東芝のタブレットPCがあったのですが」との回答しか返ってこなかった。

 私は駅の反対口にあるヤマダ電機にも行ってみた。ここにもなかった。仕方がないので,旧知の東芝関係の方に頼んで,東芝のタブレットPCを手に入れることにした。

 これは,私自身のタブレットPCに関するごく最近の「探索行動」である。マイクロソフト,富士通,ヨドバシカメラ,ヤマダ電機といった,いくつものブランドとコンタクト(接触)した。しかし,そのいずれのブランドも,タブレットPCが欲しい私にタブレットPCを売り込むことに失敗した。

 コンタクト・ポイントで最も重要なことは,顧客の期待を充足する機能が備わっていることだ。ほとんどの企業は,多様なチャネルを開拓したはいいが,そのチャネルを顧客から見て利用したくなるチャネルに仕立てる努力が欠けている。

 広告宣伝で大量のメッセージを放っておきながら,顧客には「欲しければアンタが一生懸命探して買え!」と言っているのと同じ事態だけは,絶対に避けるべきだ。

 顧客が欲しいものを探して右往左往するだけの広告宣伝というのは無駄としか言いようがない。顧客についての勝手な思い込みを,まずはさっぱりと捨てることだ。それが顧客志向を取り戻す最初の一歩である。