羽生章洋さん(右)と筆者(左)
羽生章洋さん(右)と筆者(左)
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 日経BP社のM記者から「とにかく元気という言葉がぴったりのパワフルな人です」と紹介され、株式会社スターロジック(http://www.starlogic.jp)代表取締役兼CEOの羽生章洋さんをインタビューさせていただくことになった。羽生さんは、システム開発、ITコンサルタント、雑誌記事や書籍の執筆、セミナー講師など、幅広い分野で活躍されている。私は、自分で言うのも何だが、とっても穏やかなタイプである。そして、ちょっと子供っぽい茶目っ気がある。もしも、つまらない質問をしたら、羽生さんに怒られてしまうのではないかと心配になった。いつもは、その場の成り行きでインタビューを進行しているが、今回だけは、事前に10項目ぐらい念入りに質問事項を用意しておいた。そして、記事のタイトルとなるSEを元気にする言霊は、羽生さん本人に決めていただくことにした。

 取材当日、羽生さんのオフィスに到着し、面会するなりビックリ! なんとご自身の座右の銘となる言霊を、箇条書きにして20個ぐらい用意してくれていたのだ。21歳でIT業界に入り、ひたすら丁稚奉公のように働き、ボコボコにされながら我が道を求め続けてきた武勇伝は、予定を大幅にオーバーして2時間も続いた(いつもは1時間である)。私が用意した質問など、一つも伝える必要はなかった。ひとこと発言したと思ったら、そのまま羽生さんは延々と語り続けたからだ。私とM記者は、ときどきタイミングを見計らって相槌を打つだけで精一杯だった。ここでは、羽生さんの話をほんの一部だけしか紹介できないのが残念だが、少しでも羽生さんのパワーを感じてほしい。記事のタイトルは「丸くなりたいけど、やっぱり丸くはなれない」に決まった。プロジェクトが失敗する原因を中心に、たっぷり語ってくださいます。

羽生:そもそも、なぜ仕事をしているのか? 何をすればよいのか、何をしたいのか? 他人に答えを求めるのではなく、自分でわかっていなければダメ。個人が確立されていないのに、組織に入って上手く行くはずがない。組織に頼るだけになる。

 プロジェクトが失敗するのは、結局、個人がしっかりしてないからだ。プロマネには、「私はこのプロジェクトを命がけで愛している」というWILLがなければダメ。知識や経験なんて後からいくらでも着いて来る。自分の人生だってプロジェクトだと思う。きちんとマネジメントできているのか? できてないのに、他人の関わるプロジェクトを成功させられるわけがない。

 若い頃は、よく怒られた。宴会の段取りが悪いと上司から「オマエは給料もらっているのだろう!」と怒られた。帳票の印刷が1mmずれたとお客様からクレームの嵐。今となっては、よい経験だと思うが、当時は本当に屈辱的だった。20代の頃は、常に周りからボコボコにされていたが、それは経営者となった今でも同じだ。「オマエは社長に向いてない」といつも言われる。昔「オマエはプログラマに向いてない」といつも言われたのと全く同じ。若い頃より敵が大きくなった分だけ、屈辱も大きい。今に見ていろ! という気持ちになる。その意味では、世界は私を成長させるためにあるのじゃないかとさえ思う。

 「失敗したくない」と「成功したい」は、決して同じじゃない。失敗したくないという人は、他人を気にして腰が引けている。他人の目ばかり気にしていると、必ず他人に振り回される。それに対して、成功したいと思うと、失敗を恐れなくなる。1つ勝つために99の負けを背負うこともある。それでもやるのが、チャレンジャーだ。自分の人生を成功させたいのだから仕方がない。丸くなれれば楽なのかもしれないけど、丸くなるのは体形だけで十分だ。

 自分で使わなければ、技術は身に付かない。「知っている」から「わかる=できる」のレベルに達するのは大変なこと。ER図やフローチャートなんかは、何千枚も書かなきゃダメ。野球選手が延々と素振りをするようなものだ。体で覚えて身に付けるべし! ただし「努力」「根性」「忍耐」という言葉は大嫌い! 単に願うだけじゃ問題は解決しない! 大事なのは「創意工夫」「継続」「成長」することだ。知恵を絞って解決する!

 素振りを繰り返せば、成長できる。70歳になっても80歳になっても、成長していたい。どんなことだっていい。シワが増えたことだって「成長したぞ」って自慢したい! あなた方、ちゃんと聞いていますか?

矢沢&M記者:は、はい...。

 羽生さんを取材した日は、暑い暑い真夏の昼下がりだった。取材を行った応接室は、羽生さんの熱気で蒸しかえっていた。取材を終え、外に出て記念撮影をする際に、夏の日差しを涼しく感じたぐらいだ。羽生さんは、インタビューの合間に、ときどき職場のスタッフと仕事の議論を交わしていた。羽生さんと暑く暑く仕事ができるスタッフの方々を、うらやましく感じた。「仕事に情熱を燃やす」という言葉があるが、羽生さんは、職場に燃料と着火装置を一緒に持ってきてくれるような人だ。