林@アイ・ティ・イノベーション代表です。こんにちは。

 以前,あるベンチャー企業の代表の方と,企業戦略と問題解決のアプローチについて,ざっくばらんに話をする機会がありました。

 企業戦略を考察する際,コンサルタントはしばしば,「問題の原因を追究し,根本的な解決策を考える」というアプローチをとります。私もこれまで経営者として,同様のアプローチで多くの問題に取り組んできましたが,これだけのアプローチだけでは限界があると実感しています。

 その代表の方はコンサルタント出身です。そもそも「論理的な思考」が強い方で,実行力がある方です。できるコンサルタントとして活躍していらっしゃいます。その方も私もそれぞれ違う道で努力してきたわけですが,問題解決に関する考えが一致したのがとても印象的でした。

 原因を深く追究し,根本的な解決策を考えること。それで果たして企業や皆さんの仲間はいつも救われるのでしょうか。

 答えはノーです。実際,ほとんどの企業が根本的な解決などできていません。

 企業戦略を学術的にとらえる際には,原因をとことん追究することは有効です。しかし現実の企業経営では,のんびりと構えてはいられない状況があります。原因を追究しようとしている間に,原因発生の前提となる環境がどんどん変わってしまうことがしばしばです。

 ここに労力を使うより,とりあえず表層化している問題や課題を洗い出し,優先順位をつけて,次々と手を打っていくのです。連続的な改善と,問題解決の実行の積み重ね,そしてそれらを繰り出すスピードが,次第に大きな価値を形成していきます。

 プロジェクトも同じです。発生してしまった問題の原因追究は,少なくともその瞬間は意味がありません。プロジェクト活動で重要なのは,時間です。限られた時間のなか,プロジェクトのボトルネックと表面化した問題を見つけ出し,できることをどんどん実行することが肝要です。あきらめずに行動を積み重ねることで,じわじわと効果が現れてきます。また,積み重ねが人々の学習と本質の発見を生み出します。

 エンジニア気質の強い人は得てして原因追及や理想論に固執してしまいがちですが,そうならないようチームでフォローしていただきたいと思います。日本のグローバルなメーカーが長年かけて成し遂げてきたことは,このような改善の積み重ねなのです。

 それでは,また。

【この記事はプロマネのポータルサイト「ザ・プロジェクトマネジャーズ」との連携コンテンツです】