私事で恐縮ですが、暮れも押し迫った12月22日に「メール道」に続く新著「ブログ道」を出版させていただきました。これは、昨年の初夏から、毎日少しずつ書き溜めていたものです。年末年始に縁者にお知らせするのもはばかられましたので、新年10日過ぎにブログやメルマガでそっとご案内いたしました。

 しかしながら、ただ今(2006/1/31 17:00)この原稿を書くために、Googleに「ブログ道 久米」と入力して検索したら....腰を抜かしました。約1万9900件もヒットしたからです。わずか1か月間の出来事です。

 目を凝らしてみますと、ネット書店や、この「企業経営に活かすブログ道」などのネット連載をのぞけば、ほとんどが個人のブログなのです。尊敬する旧知の縁者のお名前もあれば、はじめて見るお名前やハンドルネームもあります。今さらながらブロガーの底力に震撼していたところです。

 数多くのブログを通じて、ブログ道の書評を拝読できるだけでも、この本を出して良かったと感謝しております。温かい書評の数々を、本当にありがとうございます。

3人同時に「ブログ本」を書いて感じた3つの不思議

 昨夜、銀座で小さなパーティがありました。私が社外取締役を勤める株式会社カレン主催の出版記念パーティです。なぜか同社ゆかりの3人が、時を同じくして打ち合わせをするでもなく「ブログの本」を、別々の出版社から刊行したのです。それは、同社広報室長四家正紀さんの『図解ブログマーケティング』、そして、かつてカレンで活躍していたコンサルタント和田亜希子さんの『ひとつのブログで会社が変わる』と、拙著の3冊です。3人とも公私ともに情報発信するブロガーなのですが、おそらく何かが生まれる潮流を感じたのでしょう。これが1つめの不思議。

 残念ながら、これまでは個人ブログが先行し、ビジネスブログは黎明期にあります。まだ記憶に新しいと思いますが、昨年、電通消費者研究センターの調査で、2005年上半期の話題・注目商品ランキング「消費者が選んだベスト10」の1位に「ブログ」が選ばれました。これには、ちょっと驚きました。

 確かに、総務省が昨年10月19日に発表した報道資料によれば、2005年9月末のブログ登録者数は473万人(半年前は335万人)と急増していますので注目に値します。しかし、つい先日、ある会で、高名な大学教授と、日本を代表する大企業役員に拙著を献本した時に「ブログって何ですか?」という質問を受けたのも事実です。この増え続けるユーザー数とエスタブリッシュメントの人たちとの認識ギャップが、2つめの不思議です。

 これから個人法人問わずブログ活用が進む中で、ブログ本が続々出版されることは、間違いないでしょう。amazon.co.jpにて「ブログ」でキーワード検索をいたしますと、既に124冊がヒットします。しかし、人の数だけブログがあるのと同じように、ブログ本も様々です。尊敬するお2人のご著書も真っ先に拝読しましたが、同じビジネスブログを題材にしながら、かくも素材や表現が変わるのかと興味がそそられました。かたや男前豆腐店、かたやソニーハンディカム....。これが3つめの不思議。

 おそらく今後も、企業や商品の数だけ独特な表現や活用法にチャレンジするビジネスブログが生まれ、そのブログと企業を合わせて紹介するユニークな本が出版されることでしょう。

なぜ「ブログ道」と「道」がつくか....その理由

 昨夜のパーティでは、名ブログ「情報考学 Passion For The Future」や、最近始めた「テレビブログ」プロジェクトで知られるデータセクション社長の橋本大也さんとの対談ができて、とても勉強になりました。

 その時、橋本さんからは「道」についてのコメントをいただきました。名刺交換をした方からも「なぜ道なのですか?」と尋ねられました。その答えは、拙著のまえがきにあります。

──────────────────────「ブログ道まえがきより」

 この本の題名を、「ブログの書き方」でも「ブログ作法」でもなく、あえて「ブログ道」と呼ぶには理由があります。それは、ブログが単なるWeb日記ではないと確信しているからです。

 ブログとは、個人が生き生きとした毎日を送るための活性化ツールであり、それぞれの夢に一歩ずつ近づいていくための自己実現ツールなのです。同時に、夢に共感し応援してくれる縁者と出会うための縁結びツールであり、それぞれの夢や誇り高き仕事を広めあう相互広報ツールでもあります。さらには、ご自身の生きざまや身につけた智慧を同時進行で記録する「私の履歴書」であり、それらの記録をわかりやすく整理・保管して、広く誰もが簡単に活用できるようにする公的な「知識の図書館」にもなります。

 また経営資源が限られた中小企業、個人事業主、NPO・NGOにとっても、ブログは大きな力となります。たとえITの知識や技量が乏しくとも、リーダー自らが率先して経営理念や商品・サービスの魅力を日々熱く語ることができるからです。さらに、幹部はもちろん現場のスタッフまでもが心を一つにして一斉にブログ発信することで、企業広報のあり方が一新されることでしょう。インターネットの大海で埋もれがちな小さな組織であっても、志と根気さえあれば、1人でも多くの人たちに、より深い情報を、継続的にお届けすることができるのです。日々のブログ発信に共感する読者が1人ずつ増えていけば、生涯のファン=お客様も自ずと増えていくことでしょう。ブログは、個人のみならず組織にとっても、最高の経営改革、宣伝広報ツールなのです。

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某大手飲料&情報機器メーカー若手広報課員の「ブログ道」

 100人にも満たない小さなパーティではありましたが、嬉しい出会いもありました。中でも、某大手飲料メーカー・情報機器メーカーなど、広報の現場で活躍する若手メンバーとお会いすることができたのは大いなる喜びでした。

 もちろん、この会に参加するぐらいですので、既にブログを活用しているか、活用予定の人たちです。しかし、拙著やプレゼンを通じて、全社でオーケストラのようにブログを奏でることの重要性を直感してくださったようです。これは、単にこれまでの宣伝・広報の域を超えた話ですので、経営者も巻き込まなければならないかもしれません。

 しかし、そのうち、社長ブログを指揮者がわりに、広報ブログを楽譜がわりにした、全社ブログ計画を実践する企業が現れても不思議ではありません。既に、私が懇意にさせていただいている多くの先輩社長がブログを実践されていますが、経営者たるもの、実体験を通じて、すぐにその功罪を見抜くものです。そしてブログに熱心なトップは、ICTを活用した経営革新や、オーケストラ型の全社ブログにも理解を示すことでしょう。

 若くて目の輝いている広報課員が、先進的なリーダーと共に、まったく新しい広報モデルを実験・実践してくれることを、今から心待ちにしているところです。その時、誇りを持って企業名を公開させていただきましょう。

「ブログ道」のサインとして書く「四文字」

 パーティ会場では、こんな私でも、拙著にサインをお求めくださる方がいらっしゃいました。サインなどしますと転売できなくなるので少々心配になりますが、光栄でありがたいことです。その時、ただ名前を書くだけでは心がこもらないような気がしますので、ブログ道の精神を表わすような言葉はないかと考えました。

 そこで、ブログ道が目指す「独立自創×共創共栄」の世界を四文字に縮めて「独創共栄」と書かせていただくことにしました。等身大の自己実現メディア「ブログ」を使って、「みんなちがって、みんないい。(詩人金子みすゞ)」と多様性を受け入れる寛容な世界になればと思ったのです。そして、その先には個性も富も地位名声も超えて「みんなおなじで、みんないい」という「道(TAO)」に抱かれ安心の生き方ができればと感じたのです。

 そんな大げさな四文字を書きながら、ふと大学時代の恩師、平野絢子教授の言葉を思い出しました。先生とは主張の異なる高名な先生について「どう思われるか」という拙い質問をした時の、素敵な回答です。たしか、こんなお答えだったと記憶しております。

「たとえ色は異なっていても、自ら輝く恒星は美しい。小さくとも惑星や衛星ではなく恒星になりなさい。」