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 読者にとって興味あることは,IBM社の地位は盤石なのか,2位以下の日本企業,キヤノンや松下電器産業の追随を許すことはないのか,という点であろう。

 ここから先はあくまでも筆者の推論に過ぎないが,2000年以降次々とPC,液晶ディスプレイ,半導体,メモリー関連などのハードウエア事業部門を売却したIBM社がこのまま米国取得ランキング1位の地位にとどまることは難しいのではないかと考えている。特許の取得には平均して3~5年かかるため,急な凋落はないにしても,IBMはやがて1位の座を明け渡し,ひょっとしたらベスト10から姿を消す可能性もある。これを示唆しているのかどうか定かではないが,2005年,IBMの年間特許取得数は久しぶりに3000件を下回った。これが一過性のものなのか,それとも2003年の3400件をピークに今後も前年を下回り続けていくのか,注目したいところである。

 2005年の米国特許取得ランキングに,日本企業は5社ランクインしている。過去,10社のうち7社が日本企業だった年もあったという。米国特許取得が日本企業にとってアウェイでの戦いであることを考えるとこれはすごいことである。

 日本企業が一件の米国特許を取得する際のコストは米国企業のおそらく2~3倍程度となる。日本企業の場合,米国企業には不要な翻訳費用,日本国内の特許事務所費用,米国特許弁護士とのコレポン費用などが必要だからである。

 また,通常,ある国の企業は,自国に最初に特許出願し,そのうち,価値のあるものだけを,二,三件まとめて米国特許出願する。米国特許取得という指標で戦う場合,米国企業ならば100の発明を生み出せば100の特許出願になるのに対し,日本企業は100の発明を日本で100件の特許出願とするも,そのうち,価値があると認められる50件について米国出願の対象とし,その50件をさらに2件ずつまとめて最終的に25件の米国出願をするというようなことを行っているはずである。これは主として経費削減のためであるが,このように,サッカーのみならず,特許においてもホームとアウェイでは戦い方が異なることに鑑みると,米国特許取得ランキングにおける米国企業(ホーム)の特許100件と日本企業(アウェイ)の特許100件とは意味が異なるのである。

 そうだとすると,2005年度の2位キヤノンの1800件は,もし同社が米国企業であれば5000件にも相当し,IBMを凌駕している可能性は非常に高い。このように考えると,日本企業がベスト10に5社入るということが如何にすごいことが分かる。

 近年,日本の製造業はアジア勢に追い上げられ,凋落したといわれ続けている。しかし,アウェイである米国の特許取得件数ランキングの過半を占める日本は,こと特許に関しては既にお家芸とさえいえる。そして,特許取得ランキング=研究開発力+特許管理力という図式が成り立つのであるとすれば,日本の製造業はまだまだ健在であるという評価をすることは十分可能なのではないだろうか。

 少なくとも,韓国・台湾からは唯一サムソンのみが米国特許取得件数にランクインしている現状に鑑みると,特許力において,日本は韓国・台湾に大きく勝り,今後,特許力を基軸として経営競争力を作り出していくことが何より重要であるという結論に至ることができるのである。