「実録鬼嫁日記」や、「生協の白石さん」など、無名作者のユニークなブログが書籍となる。そればかりか、気がつけばベストセラーになる。もはや今では「その程度のニュース」に誰も驚かないでしょう。

 しかしながら、ベストセラーが生まれる陰に、ネット水面下での「ネットコミ頼母子講=ブログキャンペーン」という古くて新しい仕組みがあるのをご存知でしょうか?

ネットコミ頼母子講とは

 頼母子講(無尽講)とは、かつて日本にもあった相互扶助の金融システムです。確か私が生まれた東京の下町でも、亡き祖父が入っていたと思います。それは高額商品を買うために、信頼できるメンバーがお互いにお金を持ち寄って基金を作り、抽選で順番を決めて、使い合うという仕組みです。

 例えば、1人が毎月10万円ずつ拠出すれば、20人集まると毎月200万円集まります。そこでクジで一番を引けば、最初にその200万円を使えるのです。あとは、毎月20回にわたって、10万円を拠出するという仕組みです。結果としては自分が月々拠出する合計額200万円を早く使えるか、貯めてから使えるかの違いだけですが、一気に自分の手持ち資金の20倍の力を持つこともできるわけです。

 今回ご紹介するようなブログキャンペーンを、あえて私が「ネットコミ頼母子講」と呼ぶのには理由があります。お互いの限られたネットコミ力を結集して、相互扶助の精神で順番にPR活動を行う点が、お金と情報で扱うモノの違いこそあれ、頼母子講とよく似ているからです。

 例えば、「ネットコミ頼母子講」メンバーの1人である作家が、新著発売のキャンペーンをする際、発売日前後などに全メンバー、例えば100人200人がそれぞれのブログやメルマガで一斉にPRを行うのです。そうすると、各メンバーが仮に1000人の読者を抱えているとしたら、一気に10万人20万人の新著発売のお知らせが届くことになります。そして、メンバーの新著が発売されるたびに、同様の相互PRが繰り返されるのです。

 この知られざる相互紹介のブログネットワークが、ネット書店などのベストセラーランキングに大きな力を持っていることは、今や疑う余地がありません。このネットコミ頼母子講について私が思いを馳せるとき、いつも1人の女性を「ネット頼母子講の母」として思い浮かべるのです。

頼母子講の母「藤沢あゆみ」さんとの出会い

 私が、楽天広場でおそるおそるブログを始めたのは2年ほど前ですが、いきなりその尊敬すべき女性のパワーを目の当たりにすることになりました。

 日経BPネットビジネスTODAYの連載でも知られるコンサルタントの山田 雅彦さんの強いお勧めでブログを始めたのですが、忘れもしない2003年12月8日までに開設して、真っ先に藤沢あゆみさんのブログにリンクするように「指令メール」が届きました。

「藤沢あゆみさん??12月8日??」

 さっそくブログをのぞいて見ると「イかなきゃ!ヤらなきゃ!藤沢あゆみのなきゃなきゃなきゃ」というブログ名でした。記事のタイトルも「一瞬ヌかせて&萌える前にハメて&アノ方がご乳会! 」や「ハァハァ中です…」などと並んでいて、思わず赤面です。

 しかし好奇心も手伝って、そのブログを読み進むうちに、どうやら12月9日に藤沢さんの新著「愛されるしくみ」が発売されること、その新著を各々のブログやメルマガなどでPRする仲間になることを「普及委員会に乳会」と表現していること、発売日に楽天ブックスの販売ページにみんなで誘導することを「楽天ハァハァ萌え萌えキャンペーン」などと呼んでいることなどを理解しました。

 さらに驚いたことに、藤沢さんは、乳会してくれた人!書評などPRをしてくれた人!全員に相互リンクをして「愛してまーす」と感謝の書込みを繰り返していたのです。

愛されるしくみ

 見知らぬ女性の、それも一見すると放送コードすれすれのブログと本をお薦めするのは、少しばかり勇気が要りました。しかし、尊敬する山田さんのお勧めですし、乳会?し書評を書いている人たちのブログなどをネットでたどりますと、立派な本を書かれているライターやコンサルタントなど、数多くいらっしゃることもわかりました。「何かとんでもなく可能性を秘めた試みに参加している....」そんな気までしてくるから不思議です。

アマゾン1位連発、著作シリーズで10万部突破間近

 すると、アマゾンのランキングで1位を獲得してしまったのです。私も思わず、ブログと日経ベンチャー経営者クラブに連載しているメルマガコラムでご紹介してしまいました。

 すると、さっそくそのブログ記事に、藤沢さんご自身のコメントが....マメなんです。そして、メールでお話をすると....予想に反してというか、予想通りというか、非常に真面目で礼儀正しい方なのでした。そして、初対面の私の仕事への敬意や配慮も忘れないのです。だからこそ、一見、自分の本を売らんがための女王様キャンペーンに見えながら、多くの「頼母子講メンバー」の支持を得るのでしょう。

 その半年後、「ネットは新聞を殺すのか」というショッキングな題名のご著書ブログで知られる時事通信社の湯川 鶴章さんや、元電通で現在江戸川大学で教鞭をとられている濱田逸郎さんと、藤沢あゆみさんにお会いする機会がありました。

 その時に教わったことについては、湯川さんのブログ記事「ベストセラーリスト押し上げる「お祭り」」に詳しいので割愛しますが、「藤沢さんの数年後が楽しみ....」と思わずにはいられない独特のパワーを感じたのでした。

 その後、藤沢さんがパワーアップしていく様子は、ブログのプロフィールを見てもよくわかります。

モテ本!なぜか男を魅きつける150のテクニック

2005 1月
恋愛マニアの本「モテ本!」(大和書房)が発売4日で売り切れ、発売1ヶ月で5刷り、2月11日、ママゾン1位になれました!現在14刷り 77000部

2005 マスコミ登場
anan fytte ef style caz SPA!に載りました☆8月、ラジオ出演。9月、日本テレビclickで特集されました。

2005 11月
自己啓発本「やれる!」徳間書店から出版。ダヴィンチ2006 1月号掲載。12月「モテ本!ハイパー」(大和書房)発売。

やれる!カンタン夢実現法これであなたも「プチ・メジャー」

 つまり「藤沢さんの数年後が楽しみ....」は、既に前倒しで実現しつつあります。それは発行部数だけではありません。将来は、恋愛本よりも、ビジネス書を書きたいとおっしゃっていましたが、今回は自己啓発本、それも自らの体験に基づいた自分しか書けない本を上梓したのですから、一歩ずつ目標に近づきつつあるのです。

藤沢流の思いやりと目配り気配りに学ぶ

 ひょっとしたら、まじめな日経ITproの読者は、藤沢さんのブログの文体や書名だけで拒絶反応を起こしてしまったかもしれません。しかし、文体や書名は、読者のみなさんが、メンバーに合わせて個性に合わせて、自由に変えれば良いでしょう。

 また、本なんか出さないから関係ないと思う方も多いかもしれません。しかし、本に限らず、どんな商品・サービスでも、同じようにネットコミでPRすることができるはずです。志を同じくする縁者と、互いにPRしあうネットコミの底力を、あえて否定する必要はないでしょう。

 そして、何より私が学ばなければと思うのは、また「やれる」と思ってもできないのは、藤沢さんの徹底したブログまめ・メールまめな姿勢です。藤沢さんのブログをよく読めば、恩人の本などに、多大な敬意を払って、心からの紹介をしていることがわかるでしょう。ただ今、私のブログの私書箱には、藤沢さんからのメールが3通並んでいます。

 そのうちの一通をご紹介しますと...

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お出かけ前だったのですね(^^)

うん
ブログもメールも通じるところがありますね。
もしかして今度はブログの本を書かれるとか?

拙著は届いているかな。

以前、濱田さまや、湯川さまともお話した
ネットで人間関係を築き、仕事につなげることを本に書き
今回のキャンペーンのやり方が
まさに、本の内容を実践したものになりました。

道中お気をつけてくださいませ。

藤沢あゆみ

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 こんなメールをいただいたら、私ならずとも、お願いなどされなくとも、「今回のような記事」を書きたくなるでしょう。

 何より、ブログのプロフィールで見つけた、藤沢あゆみさんの夢・目標の中のひとつが、とても気に入っています。私もかくありたいと思うのです。

 「☆逢う人の気持ちの温度を1℃あげる」

 ▼藤沢あゆみのやれる!やれる!やれる!
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