英国教育工学通信協会(Becta)は英国時間1月11日,米Microsoftの次期OS「Windows Vista」と次期オフィス製品「Office 2007」の導入に関するレポートを発表し,教育機関に対して同OSの早期導入を控えるようにアドバイスした。

 Bectaは,「Vistaの新機能には価値があるが,教育機関における早期導入を正当だと判断するに至る“なくてはならない”機能は備えていない」と指摘している。早期導入により,技術や財務的な課題に直面することが予想されるため,リスクが高いとしている。

 レポートでは,Microsoftに対し,教育機関でVistaを導入することのメリットと導入コストを明確に示すべきだとしている。Bectaでは,現時点で同OSを広範囲に導入した場合のコストを1億6000万ポンドと推定しているが,そのメリットは明らかではないとしている。

 Bectaは,Vistaに関する最終的なレポートを2008年1月までに発表する予定だという。教育機関には,それまで同OSの大規模な導入を待つように勧告している。

 Office 2007については,170種類を超える新機能が提供されるが,その多くが企業向けのものだと指摘。これらの機能を分析したところ,そのどれもが教育機関において“なくてはならない”機能ではないと判断している。同製品の導入のコストは高く,すでに多くの教育機関が完全に要求を満たすオフィス製品を所有しているため,早期導入を正当化する根拠が見つからないとしている。

 競合製品と比較したところ,これらの製品はOffice 2007が提供する機能のおよそ50%を備えていたという。Bectaは,これら競合製品が多くの教育機関における要求を満たしていると判断している。そのため,Bectaは情報通信技術(ICT)業界に対し,教育市場向けコンピュータではオフィス製品の選択を可能にするように呼びかけている。選択肢には,オープンソースの製品が含まれることが好ましいとしている。

 教育機関がオフィス製品を選択する場合,相互運用性の問題によって制約を受ける。Bectaによれば,Microsoftの新しいファイル形式は,競合製品(特に教育機関が無料で利用できる製品)でサポートされないため,「デジタル格差」問題を悪化させる可能性があるという。そのため,Microsoftに対してOpenDocument Format(ODF)のサポートを向上させるように求めており,教育機関に対しては,他の製品との相互運用性が十分なレベルに達するまでOffice 2007の導入を控えるように勧めている。

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