写真1:米AppleのSteve Jobs CEO
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写真2:「タッチパネル式ワイド液晶搭載iPodをリリースする」といいつつ,その実態はスマートフォンだった
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 電話を再発明する---。米AppleのSteve Jobs CEOは1月9日(米国時間),「Macworld San Francisco」の基調講演でこう宣言し,携帯電話機「iPhone」を2007年6月に米国で発売することを発表した。iPhoneは3.5インチの全面タッチパネル式液晶や,4G/8Gバイトのフラッシュ・メモリーを搭載したスマートフォンで,価格は499ドルから。米Cingularと共同で販売する。

 Steve Jobs氏(写真1)は,開発コード名が「iTV」だったセットトップ・ボックス(STB)の「Apple TV(Appleは同社のロゴマークを使用している)」を正式発表した後に(Apple TVの詳細については本記事最後で紹介する),表情を改めて「今日は3つの革命的な製品を発表する」と切り出した。以前から噂になっていた「全面タッチパネル式液晶のiPod」,「携帯電話機」,「革新的なインターネット・コミュニケーション・サービス」だという(写真2)。

全面タッチパネルのiPod機能搭載スマートフォン「iPhone」


写真3:「ボタンとコントロールでは何も変わらない」とJobs氏
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 ただし,それらは別の製品になるのではなく,1つの製品として登場する。それが今回発表された「iPhone」である。Jobs氏は「BlackBerry」や「Tero」に代表される現在の「スマートフォン」をこう批判する。「これらはスマートではないし,使うのが簡単でもない」。特にJobs氏は,スマートフォンの多くがフル・キーボードを搭載し,操作にスタイラス・ペンを使用することを批判し,「キーボードとコントローラでは何も変わらない」と主張する(写真3)。

 それに対してiPhoneは「電話に革新的な新しいユーザー・インタフェース」を提供する」(Jobs氏)という。「われわれは20年前(Macintoshを発表した1984年)に,どのような用途にも使える新しいユーザー・インタフェースと,新しいポインティング・デバイスとしてのマウスをリリースした。現在のスマートフォンのようなスタイラスは誰も使いたがらない。iPhoneは生まれたときから誰でも持っているデバイス,つまり指を使う」。

“デスクトップ級”のアプリケーションを搭載


写真4:すべてをタッチパネルで操作するスマートフォン
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 iPhoneは,解像度160ppiで3.5インチのタッチパネル式液晶を備えたスマートフォンで,携帯電話機能や電子メール機能,Webブラウザ,内蔵型の「Googleマップ」機能,iPodと同等の機能が備える音楽/静止画/動画再生機能を備え,指で操作する(写真4)。「携帯デバイスには,様々な機能が必要で,洗練されたOSが必要」(Jobs氏)なので,OSには「Mac OS X」を採用した。搭載するWebブラウザは当然ながら「Safari」となる。

 Jobs氏はMac OS Xを搭載するiPhoneが「デスクトップ級のアプリケーションとネットワークを搭載する」と強調する。「われわれはソフトウエアを愛している。だからソフトウエアによって,電話のブレイクスルーを実現する」と語り,「ソフトウエアに真摯に向き合う人間は,自分の手でハードウエアも作り出すべきだ」というAlan Kay氏の言葉を紹介した。

音楽再生機能はiPod相当

 iPhoneが備える各機能や使い勝手の詳細は,追って動画レポートで紹介するので,ここでは文章と写真を使って各機能を簡単に紹介しよう。

 iPhoneの初期画面は写真5のようになっており,各ボタンを指でクリックすると,様々なアプリケーションが起動する。iPhoneが備える音楽/動画再生機能(写真6)はiPodと同等で,コンテンツは「iTunes」を使って管理する。またiPodのコンテンツと同期させることもできる。


写真5:iPhoneのアプリケーション起動パネル
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写真6:音楽再生画面。CDのジャケット画像が表示されている
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文字はタッチパネルを使って入力


写真7:電話をかけている画面。誰が相手か文字と写真で分かる
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写真8:電子メールに文字を入力している画面。タッチパネルがキーボードになる
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 電話機能のユーザー・インタフェースも洗練されており,コンタクト・リスト(電話帳)は画像入りで管理できる(写真7)。スマートフォンのキモであるアプリケーションも充実しており,(1)IMAPとPOP3に対応した電子メール機能,(2)Webブラウザ「Safari」,(3)内蔵型の「Googleマップ」,(4)ミニ・アプリケーションの「Widgets」,(5)無線LANと第3世代携帯電話網「EDGE」を使ったインターネット接続機能---を搭載する。

 メールなどでの文字入力にも,タッチパネルを利用する(写真8)。文字を入力する際には,タッチパネルの下部にフル・キーボードのボタンが現れ,これに触れると文字が入力できる。Jobs氏は「今のスマートフォンの小さなプラスチック・キーよりも,ずっと使いやすい」と語る。IMAPのメールに関しては,Yahoo! Mail,Microsoft Exchange Server,.Mac Mailに対応し,POP3メールに関してはGoogle Gmail,AOL Mailのほか,一般のISPのメール・サービスにも対応しているという。なおiPhoneのユーザーは,IMAPに対応したYahoo! Mailを無料で利用できる。

SafariやGoogleマップも搭載

 他のアプリケーションも見てみよう。写真9は,iPhoneに搭載されているSafariの画面で,ズームアップなどができる。写真10は,株式情報をインターネット経由で受信したWidgetsだ。

写真9:New York TimesのWebサイトを閲覧している。タッチパネル操作でWebの画面を拡大できる
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写真10:株価情報を表示するWidgetsを起動した画面
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 iPhoneの目玉アプリケーションの1つが,「Googleマップ」だ(写真11。基調講演でJobs氏は,会場周辺のスターバックスの店舗をGoogleマップで検索し,検索結果に現れた電話番号を使ってスターバックスに電話をしてみせた。また基調講演には米GoogleのEric Schmidt CEOも登壇し,AppleとGoogleが密接に連携して,iPhoneへのGoogleマップ搭載を実現したことを強調した(写真12)。このほかiPhoneでは,インスタント・メッセンジャなども利用できる。iPhoneのバッテリ駆動時間は,通話やビデオ再生,Webブラウジングができる時間が5時間,音楽再生だけなら16時間だという。


写真11:Googleマップを使用している画面
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写真12:米GoogleのEric Schmidt CEO
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米国で6月,欧州で2007年第4四半期,アジアで2008年に発売

 iPhoneの価格は,4Gバイトのフラッシュ・メモリー搭載モデルが499ドル,8Gバイトのフラッシュ・メモリー搭載モデルが599ドル。米国では2007年6月に,欧州では2007年第4四半期,アジアでは2008年に発売する(日本での発売については言及がなかった)。iPhoneが利用できるのは,米Cingularになる。

Apple TVは299ドルで2月に発売


写真13:iTunesで管理するコンテンツを大画面テレビで再生する「Apple TV」
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写真14:Apple TVのユーザー・インタフェース
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 基調講演ではもう1つ,Apple TVも発表された。Apple TVはiTunes Storeで購入した動画コンテンツなどを,大画面液晶テレビなどで再生するためのセットトップ・ボックス。40Gバイトのハードディスクや無線LANを搭載し,iTunesのコンテンツと自動的に同期するほか,パソコン内のコンテンツの再生も可能(写真13)。基調講演ではユーザー・インタフェースなどが紹介された(写真14)。価格は299ドルで,2月に発売される。

 なおAppleは同日,社名をApple ComputerからAppleに変更した。Macworldの基調講演でも,Apple TVとiPhoneの発表が全てで,新OS「Leopard」などには全く触れられなかった。今回の基調講演は,Appleがパソコン・メーカーから,名実ともに総合デジタル家電メーカーに生まれ変わった日だと言える。