写真1:MicrosoftのBill Gates会長
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 米MicrosoftのBill Gates会長(写真1)は1月7日(米国時間),「2007 International CES」の基調講演でWindows Home ServerやIPTV(インターネットを利用したテレビ放送)に対応したXbox 360など,2007年下期に発売する家庭向けの新製品を公開した。Windows Home ServerはWindows Server 2003をベースにしたOSで,米Hewlett-Packardが搭載マシンを2007年下期に製品化する。

 Gates会長は,同社が今後投入する家庭用製品のコンセプトを「Connected Experience(接続)」だと表現した。デジタル・カメラや携帯音楽プレーヤなどの普及によって,人々の行動がますますデジタル・メディアに依存するようになったが,真のデジタル化にはまだ欠けているものがあるという。「足りないものはコネクションだ。ネットワークをダウンロードに使うだけでは十分ではない。これからは,人々,デジタル・デバイス,サービスが,ネットワークを通じてより密接につながるようになる」と主張した。

Windows Vista Ultimate用の「追加ソフト」を初披露


写真2:Windows Vista Ultimate Extrasで入手できる「動画壁紙」では,滝や川の流れが実際に動いている
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写真3:Ultimate Extrasで入手できる写真合成ソフト。目を閉じている左側の女の子の写真を,別の写真にある女の子の像と入れ替えるデモを実施した
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 Gates会長によれば,1月30日に全世界で発売する「Windows Vista」や「2007 Office system」も,接続を強く意識しているという。「Windows VistaやOffice 2007には,インターネットを通じて様々なサービスが無料で提供される」と強調する。例えば「Windows Vista」の最上位エディション「Ultimate」ユーザー向けには,「Ultimate Extras」と呼ばれる追加ソフトがインターネット経由で提供される。今回の基調講演では,そのUltimate Extrasが初公開された。

 公開されたUltimate Extrasは2種類。1つは,「動画壁紙機能」だ。これは文字通り,Windows Vistaのデスクトップの壁紙を,静止画ではなく動画にするもの。基調講演のデモでは,写真2の壁紙写真にある滝が突然流れ始め,来場者を驚かせた。ユーザーが選んだ任意の動画を壁紙にすることが可能で,ホーム・ビデオを壁紙にするデモがあった。

→デモ風景の動画はこちら!!

 もう1つは,写真合成ソフトである(写真3)。基調講演では,どの写真でも必ず誰かの目が閉じているという子供の集合写真を複数使って,みんなの目がきちんと開いている集合写真を簡単に作り出すデモを実施した。

家庭用サーバーを初投入


写真4:米HPが2007年下期にリリースする「HP MediaSmart Server」
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 家庭内でのデジタル・デバイスやデジタル・メディアの接続を実現するために投入するのが「Windows Home Server」である。Windows Vistaの「Home Premium Edition」も,Media Center機能を搭載するなど,ホーム・サーバー機能を強く意識している。しかし,Windows Home Serverは,Windows Vistaとはまったく別の製品となり,Windows Server 2003 R2をベースにする。

 Windows Home Serverは,家庭内で使用する複数のパソコンやXbox 360といったデジタル・デバイスを接続して,データの連携やデータの保護を容易にする製品。ネットワーク上に存在する複数のパソコンのデータを自動的にバックアップする機能や,家族が撮ったデジタル写真,音楽,動画,文書ファイルなどを一元管理するファイル・サーバー機能,家の外からでも録画したテレビ番組などをインターネット経由で見られるようにするメディア・サーバー機能などを備える。

 HPが2007年下期に発売するWindows Home Server搭載製品「HP MediaSmart Server」(写真4)の場合,1Tバイト以上のストレージを搭載する予定だ。また今回のCESでは,米AMD,米Inventec,米Quanta Computerなどが,Windows Home Server用のハードウエアを展示するという。

家庭用サーバーを初投入


写真5:Windows Mobile端末の売り上げが,BlackBerryを上回ったという
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 Windows Home Server以外の家庭用製品の現況や将来戦略に関しては,MicrosoftのEntertainment and Devices Division担当PresidentであるRobbie Bach氏が説明した。Bach氏は,Microsoftが現在力を入れている家庭用製品分野を「音楽」「携帯電話」「ゲーム」だと語る。

 音楽に関しては,同社が2006年末に発売した携帯音楽プレーヤ「Zune」が,年末商戦で「市場シェア第2位の製品になった」と主張した。また,2006年はWindows Mobileを搭載した携帯電話機が好調で,Windows Mobile端末の市場シェアが,これまで市場をリードしていた「BlackBerry」(カナダResearch In Motion)を上回ったという(写真5)。

「Gears of War」が1カ月で270万本売り上げる


写真6:発売1年で累計1040万台を出荷したXbox 360
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写真7:Windows VistaでXbox Liveに対応した「Uno」を動作したところ
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写真8:Windows VistaでXbox Liveの「フレンド・リスト」を表示したところ
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 ゲームに関しては,「Xbox 360」が2006年までに通算1040万台を出荷したことが公開された(写真6)。ゲーム・タイトルの売り上げも好調で,2006年12月に発売したばかりのゲーム・タイトル「Gears of War」の売り上げが既に270万本を超えたことを明らかにした。Bach氏は,「2007年には,『Dance Dance Revolution』や『Guitar Hero』,『Halo 3』といった人気タイトルが発売される。Xbox 360の優位性は揺るがない」と強調する。

 またXboxやXbox 360用のオンライン・ゲーム・サービス「Xbox Live」のユーザー数も,500万ユーザーを突破した。Bach氏は「Xbox Liveは,テレビで利用できる世界最大のソーシャル・ネットワーク・サービスになった」と誇る。またXbox Liveのサービスは,2007年夏からWindows Vistaでも利用できるようになる。基調講演では,Windows Vista上でXbox 360用のオンライン・ゲーム「Uno」を実行してXbox 360ユーザーと対戦したり,Windows Vista上でXbox Liveの「フレンド・リスト」を表示したりするデモを行った(写真7写真8)。

メディア戦略の核になるXbox 360


写真9:Xbox Live VideではHD映画も購入できる
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写真10:Microsoft TVの番組表
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写真11:米FordのExecutive Vice PresidentであるMark Fields氏
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 Xbox 360は,マイクロソフトの家庭用メディア戦略の中核になる。Xbox 360にはWindows XPやWindows Vistaの「Media Center機能」と連携して,パソコン上のテレビ番組やダウンロードした動画コンテンツなどをテレビにストリーミング再生する「Media Center Extender機能」が搭載されている。Bach氏によれば,「2006年には,米国で販売されたパソコンの80%がWindows XP Media Center Editionになった」といい,Xbox 360のMedia Center Extender機能が活用できるシーンが広がってきた。

 また2006年秋からは「Xbox Live Video」という,Xbox 360向けの有料動画配信サービスも開始している。写真9の「Superman Returns」のような,HD(High Definition)映画も配信されている。2007年にはXbox 360のメディア機能をさらに強化し,Xbox 360でMicrosoftのIPTVサービス「Microsoft TV」を視聴できる「Xbox 360 with Microsoft TV IPTV Edition」を投入する。

 Microsoft TVは,同社が2005年から5つのインターネット接続事業者と提携して開始した,インターネット網を利用したテレビ・サービスである(写真10)。これまでWindowsパソコンのみに提供していたMicrosoft TVを,Xbox 360でも利用可能にする。Xbox 360でゲームをしている時でも,Microsoft TVの録画が可能になるなど,機能はパソコンと変わらないという。Xbox 360 with Microsoft TV IPTV Editionは,2007年の年末商戦で発売される予定だ。

 このほかGates氏の基調講演では,車載情報端末に関する米Fordとの提携も発表された。MicrosoftとFordは,音声認識機能などを備えた車載情報端末を共同で開発し,Fordの車に順次搭載していく。基調講演には,FordのExecutive Vice PresidentであるMark Fields氏(マツダの社長を務めたことでも知られる)も登壇し,「新しい車載情報端末では,iPodやZuneとの連携も可能にする」(Fields氏)ことなどを明らかにした。