米シスコシステムズは中国・香港で開催中のITU TELECOM WORLD 2006に合わせてコンテンツ配信技術Video2.0を発表した。そこで同社のマーケティング担当副社長のJeffrey Spagnola氏と,ルーティング・テクノロジ・グループ,マーケティング・ディレクタのSuraj Shetty氏に,その目的や特徴を聞いた。


ルーティング・テクノロジ・グループ,マーケティング・ディレクタのSuraj Shetty氏(左)と,マーケティング担当副社長のJeffrey Spagnola氏(右)
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今回の発表に至った経緯は?

 シスコは2004年12月にIP Next Generation Network(IP-NGN)というコンセプトを打ち出した。今回の発表も,その流れに沿ったものである。IP-NGNとは,これからのネットワークをアプリケーション,サービス,ネットワークの3階層に分けて考え,シスコはそれらをトータル・ソリューションとして提供していこうというものだ。2005年12月にはSIPベースとノンSIPベースのアーキテクチャを発表した。

Video2.0で何が可能になるのか

 コンシューマに対してサービス・プロバイダがさまざまなソースの動画コンテンツを,さまざまな端末に配信するための技術やプロダクトを提供する。これからの約1年半でさまざまな機能やプロダクトを提供することで,コンテンツ配信サービスが大きく変わるだろう。今回の発表はその一環で,CDS(Content Delivery System)とVQE(Visual Quarity Experience)技術が中心になる。

シスコが提供するCDSの特徴は?

 シスコのCDSは,コンテンツのストレージ,取り込み,配信,パーソナリゼーション,およびストリーミングの機能を実装した「Content Delivery Engine (CDE)」と呼ばれる複数のアプライアンスからなるネットワークで構成する。コンテンツは1カ所に集めておく必要がなく,さまざまなところが保持している動画データを,必要に応じて300ミリ秒以内に配信できる。しかも,サービス・プロバイダが地域やユーザー属性に合わせて広告コンテンツをリアルタイムに挿入することもできる。

もう一つのキー技術VQEの特徴は?

 一つはDSLのように状況によって伝送速度が変化する回線でも,フレーム落ちがない高品質な動画配信を提供する技術。もう一つは,ユーザーがチャンネルを変更したときに,すぐに画面が切り替わるようにする技術だ。両者とも配信ネットワークのルーター部分がバッファの役割を果たすことで実現する。

 各ルーターまではすべてのチャンネルのコンテンツ・データが配信され,ルーターはIフレーム単位でバッファに保持する。このため,回線状況が悪化してパケットをロスしても端末が再送要求を送ることで,100ミリ秒以内に再送パケットが届き,ユーザーはパケット・ロスに気づかない。また,ユーザーがチャンネルを変更したときは,ルーターのバッファが要求されたチャンネルの動画データを即座に配信できる。このため,従来ならチャンネルを切り替えてから動画が表示されるまでに数秒かかったタイムラグが,100ミリ秒以下になる。

CDSやVQE技術はどのように提供されるのか

 最初は専用のアプライアンス機器に実装して提供するが,近い将来,インターネット・ルーターのCisco7600シリーズに搭載していく予定だ。またVQE技術は,RTCP(Real-Time Transport Control Protocol)やRTP(Real-Time Transport Protocol)のように標準技術を採用しており,我々独自の部分はオープンソースにしていく。