米Microsoftが11月末,Windows向け海賊版対策プログラム「Windows Genuine Advantage(WGA)」を手直しし,新版を自動アップデート機能「Automatic Updates(AU)」経由で配布し始めた。新版は,使用中のWindowsに海賊版の疑いがある場合,これまでより多くの情報をユーザーに提供する。さらに,「海賊版である可能性はあるものの断言はできない」という新しい「indeterminate mode」(不確定モード)を設けた。

 今回の変更はすべてユーザーの使い勝手に関係する。WGAの旧版は,検査対象のWindowsを必ず正規版か海賊版かのどちらかに分類し,中間的な存在を許していなかった。こうした古いWGAから移行するという点で,Microsoftを評価する人はいるだろう。ところが新版は,どちらかといえば「Windowsが不正コピー品であるかどうかの情報を与えない」という点ばかり強調している。WGAは新たな不確定モードで,Windowsを正規版と確定するためのツールをユーザーに提供する。当然ユーザーが立証責任を負い,Microsoftは関知しない。この動作は,MicrosoftのGenuine Advantageプログラムから得られるメリットとして,ユーザーが求めていたものなのだろうか。

 さらに非常に多くの人が,WGAを自動更新経由で配布し続けるというMicrosoftの対応に異議を唱えるだろう。そもそも自動更新は緊急セキュリティ・アップデートを提供するための仕組みで,スパイウエアを配るためのものではない。ちなみにWGAの旧版は,スパイウエアであると認識されている。ところがMicrosoftは「3~4カ月ごとに」WGAをアップデートすると約束し,その約束に従って今回のアップデートを実施した。

 情報誌「Directions on Microsoft」のアナリストであるMichael Cherry氏は米メディア「InformationWeek」とのインタビューのなかで,WGAについて「旧版はバグが多く,偽陽性の判定結果,つまり本物のWindowsを海賊版と誤認識することがよくあった。Microsoftにとって新版は,WGAのせいで発生する膨大な問い合わせ電話を減らす手段に過ぎない」と示唆した。そしてCherry氏によると,「Microsoftに電話をかけたユーザーを困らせて立腹させる」のではなく,単に「Microsoftの代わりに丸一日かかる検証作業に取り組んでもらえる」という。