Second Life内だけで生計を立てる

 SL内で最も成功しているビジネスは大企業ではない。個人で事業を立ち上げ,SLを通じた収益だけで生計を立てている人がいる。


写真5 人気の飛行場「Abbotts Aerodrome」運営者のスティーブン・ケイバーズ氏を取材中
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写真6 スカイバイクに乗ってみた
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 カナダのバンクーバー市に住むスティーブン・ケイバーズ氏はそんな一人だ。同氏のアバターの名前は「Cubey Terra」。もともとはユーザー・マニュアルやヘルプ・システムを書くテクニカル・ライターだった。初めは空き時間を利用してSL内のビジネスに取り組んでいたが,次第に十分な稼ぎを得られるようになり,SL内のビジネスに専念するようになった。

 ケイバーズ氏はSL内に「Abbotts Aerodrome」と呼ばれる飛行場を建設し,自分で設計した航空機やパラシュートなどを販売している。最も高価なジェット機でも1機が800リンデンドルだ。リンデンドルはSL内の通貨で,800リンデンドルは約3ドル(348円)。「とにかくたくさん売るのが秘訣」と飛行場内の製作ラボでインタビューしたケイバーズ氏,いやTerra氏は語ってくれた(写真5)。「SL内では何もなくても飛べるのに,みんなが航空機を欲しがる現象って面白いと思わないか」と同氏は指摘する。

 ケイバーズ氏は飛行場の見学ツアーに連れて行ってくれた。スカイバイクに乗って上から飛行場を見下ろすのは気持ちが良い(写真6)。地上4000メートルからのスカイダイビングにも初挑戦したが,こちらはあまりの迫力で写真を撮るのを忘れてしまった。

160の事業が月間11万円以上の利益を稼ぐ

 ケイバーズ氏が最初にSLを使い始めたときには,リンデンドルを米ドルに変換することができなかった。だから「これで金儲けしようなんて発想はまったくなく,ただ楽しいからやっていた」。しかしリンデンラボがSL内で,住人が自由にリンデンドルを米ドルと交換できる為替市場を2005年にオープンしてから状況が一変。リンデンラボによると,2006年10月時点で月1000ドル以上の利益を稼いでいた事業の数は160件に上る。SLで土地を購入し,その上に邸宅などを建設して販売する不動産業が最も大きな利益を生んでいるようで,中にはSL内の正味財産が100万ドルに達したと自称する起業家もいる。

 ケイバーズ氏は語る。「SLはゲームではない。進出が難しい新しいマーケットとしてとらえないと成功しない。SL内にある複数の航空機メーカーの中で私は一番乗りではなかった。私が最も成功した理由は,すべての製品に独自ロゴを入れ,機体のデザイン・コンテストを主催するなどブランド構築に力を入れた結果だ」。

 最近の住人増はケイバーズ氏のような住人にとっては「諸刃の刃」(同氏)である。「飛行場にたくさんの人が来てくれるのはありがたいが,一方でシステムに大きな負担がかかっているようで,動きがスローモーションになるなど技術的な問題が発生している。私の製品はシステムが正常に稼動してこそ楽しめるものなので,早くこうした問題を解決してもらいたい」(ケイバーズ氏)。

 私がSLを体験した2週間の間にも,ワームが蔓延し,サービスが中断されるという問題が発生していた。

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