米Microsoftが,MP3プレーヤ市場で優勢な米Apple Computerの「iPod」に実用的な代替製品があることを消費者に訴えようと,携帯用デジタル音楽プレーヤ「Zune」のマーケティング「デス・マーチ」を開始する。Zune発売前に出たレビュー記事によれば,Microsoftの第1世代Zuneは全く興奮をもたらさない。iPodに挑戦する製品としては,厳しいホリデー・シーズンになりそうだ。

 Microsoftは2006年11月14日(米国時間),Zuneプレーヤの出荷を始める。注目を集めたゲーム機「Xbox 360」のリリースからほぼ1年後であるが,リリース・タイミングが偶然一致したわけではない。Zuneの開発作業は,Xbox 360の開発チームが大部分を担当した。記事によると,この開発チームは昨年からZuneに専念していたという。

 Zuneには,「Jason and the Argonauts」(邦題は「アルゴ探険隊の大冒険」)に出てきた神話の船から名付けられた「Argo」という開発コード名がある。東芝のMP3プレーヤをベースに,Microsoftが設計した新しいユーザー・インターフェースとパソコン用クライアント・ソフトウエアで強化,改造しただけの製品だ。Microsoftはメディア・プレーヤ・ソフトウエア「Windows Media Player(WMP)」をクライアント・ソフトウエアとして使うことを検討したが,Appleが提供しているのと同様のシンプルな操作環境を採用することに決めた。

 ところがこの決定には犠牲がともなった。Appleの「iTunes Store」で購入した数10億曲の楽曲を再生できないうえ,Microsoftの「PlaysForSure」に対応している「MTV URGE」「Napster」「Yahoo! Music」といったサービスから買った全楽曲にも対応していない。米RealNetworksの「Rhapsody」サービスとの互換性もない。

 こうした互換性を捨てた引き替えに,Zuneは今のところAppleですら提供していない特徴的な大きな機能を1つ備えた。Wi-Fiによる接続機能である。Zuneのユーザーは,極めて限られた条件で音楽と写真をほかのZuneユーザーと無線共有できる。もちろん,ほかのZuneユーザーを見つけることができればの話だが。

 発売前のレビュー記事を読む限り,Microsoftが「1年後にはさらに複数のモデルを出す」と約束しているにもかかわらず,Appleは第1世代Zuneをほとんど脅威とみなしていない。Zuneの初代モデルはiPodよりも重く厚みがあり,Wi-Fi通信機能をオフにしていてもバッテリ駆動時間が短い。事実上すべてのiPod用アクセサリと互換性がない。一部Microsoft幹部の虚栄心と過剰な自信を満足させることだけが,その存在意義であるように思える。

 とりあえず著者はSuperSite for WindowsでZuneのレビューを行うが,「Windows Vista」のレビュー記事を書き終えてからにする。レビューとは別に,実際に入手したZuneの写真と追加情報を数日後に紹介しよう。