米国土安全保障省(DHS)は米国時間10月26日,「米国査証免除プログラム(VWP)」の対象国のほとんどが電子パスポートを導入することを明らかにした。

 DHSによると,米国にビザ無しで渡航できる27カ国のうち24カ国が米国の要請に応じ,非接触型のICチップを内蔵した電子パスポートを発行する。このICチップには,パスポート保持者のデジタル写真などのID情報が格納される。

 「電子パスポートは,保持者のID認証が確実に行える上に,偽造が困難であるため,IDの盗難を防止できる」とDHSは説明する。米国政府は過去2年間,VWPプログラムの対象国と協力し,入国審査におけるパスポートの情報読み取りについて,技術的基準や機能の策定に取り組んできたという。内蔵するICチップには,不正な読み取り(スキミング)を防ぐ機能も搭載する。

 「電子パスポートへの移行は,紛失/盗難パスポートによる不正入国を遮断できるという意味で,テロリスト対策上の大きな前進だ」とDHS長官のMichael Chertoff氏は語る。

 しかし米メディアの報道(CNET News.com)によると,電子パスポートのセキュリティに関しては懸念の声があがっている。米Counterpane Internet SecurityのCTOであるBruce Schneier氏は,「電子パスポート導入はプライバシ保護において悪いニュースだ。電子パスポートは不正アクセスを受ける危険性があるほか,セキュリティ対策の範囲や有効性が国によって異なるためだ」と述べている。

 DHSは2005年7月に,VWPプログラムの対象国すべてに電子パスポート導入の要請を発表。渡米者がビザ無しで入国できるようにするためには,電子パスポートの発行を10月26日より実施するよう求めていた。

 VWPプログラムの対象国はアンドラ,オーストラリア,オーストリア,ベルギー,ブルネイ,デンマーク,フィンランド,フランス,ドイツ,アイスランド,アイルランド,イタリア,日本,リヒテンシュタイン,ルクセンブルク,モナコ,オランダ,ニュージーランド,ノルウェー,ポルトガル,サンマリノ,シンガポール,スロベニア,スペイン,スウェーデン,スイス,英国で,このうちアンドラ,ブルネイ,リヒテンシュタインが要請に応じていない。

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