GSMネットワークの業界団体GSM Association(GSMA)は現地時間10月17日,「2010年までにモバイル・ネットワークが世界人口の90%をカバーする」とする予測を発表した。GSMAによれば,各国政府による資金の配分方法を改善すれば,モバイル・ネットワークのサービス範囲を100%近くまで拡大できるという。

 GSMAは,発展途上にある92カ国を対象に,ユニバーサル・サービス基金のための徴収と使途について調査した。92カ国のうち32カ国で,通信手段が広く普及していない地域に基本的な通信施設を拡張するためにユニバーサル・サービス基金を設立しており,通信事業者から売上高の1~6%を徴収していることが分かった。

 具体的には,マレーシアでは売上高の6%,インドでは5%を基金のために徴収しており,約20億ドルを集めている。しかし,全額が固定ネットワークの拡張に当てられることが決定しているという。ブラジルでは売上高の1%が徴収されており,17億ドルが集まったが,まだ使途が決まっていないという。

 調査の結果,対象となった各国政府が通信業界から徴収した総額は60億ドルを上回っていることが明らかになった。そのうちの20億ドルは携帯通信事業者から徴収している。GSMAによれば,モバイル・ネットワークを提供するコストは,固定回線による接続を提供するコストの10分の1になると世界銀行が試算しているという。しかし,すでに支給された15億ドルのうち,モバイル・ネットワークの拡大には5%にあたる7500万ドルしか割り当てられていない。GSMAは,政府が,まだ用途を定めていない44億ドルをモバイル・ネットワークの拡張に割り当てれば,4億5000万人が居住する農村地域もサービス提供範囲に加えられると指摘している。

 GSMAのTom Phillips氏は「サービス提供範囲の拡大も重要だが,政府はサービス圏内にいながらネットワークに接続していない27億人にも目を向けるべきだ。携帯電話を対象とする課税や規制により,携帯電話の所有が必要以上に高価になっている」と指摘している。同氏は,「携帯電話業界が,アクセス共有や低コストの端末の開発を通じて顧客側のコスト削減を図っているが,多くの国で規制による負担が増加している」とコメントしている。

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