米Microsoftは「Windows Vista」完成まであと1カ月を切った現在,「企業におけるWindows Vistaの普及は,旧版OS『Windows XP』の2倍速いペースで進む」と予測している。MSの予測は,ほとんどのITアナリストが「企業は極めてゆっくりとWindows Vistaに移行する」とみるのに対して,見事なほど対照的だ。

 Microsoftのジェネラル・マネージャであるBrad Goldberg氏は,「われわれの目標は,Windows VistaをほかのあらゆるOSに比べ2倍速く普及させること。Windows Vistaは企業向けに開発した」と語る。

 もっとも,Microsoftが公に宣言したこの目標を達成するには,Windows Vistaが2007年11月までに企業内デスクトップOSの20%のシェアを占める必要がある(Windows XPの導入率は,発売から1年で約10%に達した)。この20%という目標は,企業がOSをアップグレードする通常の比較的ゆっくりとしたペースから考えると。非常に難しいように思える。Windows XPへの移行ペースも予想を大幅に下回ったが,これはMicrosoftが「Windows 2000」から期間を空けずにWindows XPをリリースしたためだ。Windowsのメジャー・リリースがなかったという前例のない5年間,次のOSを待っていたユーザーもいる。こうしたことから,Microsoftは「(目標を達成するのに十分な)需要が存在する」とみている。

 アナリストの見通しはこの予測と一致しない。米IDCと米Gartnerは両社とも,「初年度における企業のWindows Vista導入率は10~11%の範囲でWindows XPと同程度」と見込む。その根拠は,「企業は自社で決めた計画に従ってOSをアップグレードするのであって,Microsoftの計画に縛られることはない」というものだ。それに,Windows Vistaのもたらすセキュリティや導入メリットが互換性問題やトレーニング・コストで帳消しになってしまう,という恐れもある。

 ただし企業への導入とは関係なく,Windows Vistaの販売は好調になりそうだ。2007年だけで1億台以上のパソコンにプリインストールされ,その後も販売は同じペースで推移するという予測もある。Microsoftのプラットフォーム&サービス部門共同社長であるJim Allchin氏は先ごろ開発者に送った公開書簡のなかで,「Windows Vistaのユーザー数は,2007年1月の発売から2年以内に2億人を超える」と述べている(関連記事:「2年後の『Windows Vista』ユーザー数は2億人」---米MSのAllchin共同社長)。