カナダのATI Technologiesが,グラフィックスLSI(GPU:Graphics Processing Unit)を汎用演算に利用する技術「Stream Computing」をカナダで現地時間9月29日に発表した。

 Stream Computingは,GPUを一般的なプロセサと組み合わせ,複雑な演算を高速に処理するための技術。ATIによると,同社のハイエンドGPUは48個の演算コアを内蔵しており,対象によっては汎用プロセサの最大40倍という速度で演算を実行できるという。

 例えばATIと米スタンフォード大学は,分散コンピューティングによる研究活動「Folding@home」(関連記事)において,疾病の研究にかかわる演算を「ATI Radeon X1900」製品系列と「同X1950」製品系列のGPUで処理する計画に取り組んでいる。スタンフォード大学は,GPUを利用することで演算速度を40倍に高速化でき,これまでのシステムだと3年かかるデータ処理期間を1カ月に短縮できると見込む。

 今後スタンフォード大学は,Stream Computingを気象研究にも活用する。ATI製GPUを使ってFolding@homeの活動に協力するためのソフトウエアは,スタンフォード大学のWebサイトからダウンロードできる。

 ATIはStream Computingをさまざまな分野に応用できると見ており,金融業界のリスク・アセスメント・モデル処理は16倍,石油/ガス業界の地震モデル処理は20倍以上の高速化が可能という。

 またATIは同日,Stream Computingの商業化を目指し,高性能コンピューティング(HPC)向けソフトウエア・プラットフォームを手がける米PeakStreamと協業すると発表した。全世界のエネルギー/金融/防衛/研究分野を対象として,「まず90億ドル規模のHPC市場を狙う」(ATI)。

 さらにATIは,同社の買収を予定している米AMDとも協力する(関連記事)。

 米メディア(internetnews.com)によると,Folding@Homeプロジェクトの創設者であるスタンフォード大学教授のVijay Pande氏は,「1枚のX1900グラフィックス・カードで最大100ギガFLOPSの演算速度が実現可能」と予測しているという。

[発表資料(概要)]
[発表資料(スタンフォード大学との活動)]
[発表資料(PeakStream/AMDとの協業)]