欧州連合(EU)の独占禁止法(独禁法)担当委員であるNeelie Kroes氏は9月第5週,「米司法省(DOJ)の担当者から2006年初めに接触を受け,米Microsoftに対する態度を軟化するよう働きかけられた」ことを明かした。Microsoftは,2004年にEUから独禁法違反の判決を受けて以来,欧州での法的な争いから抜け出せないでいる。

 Kroes氏によると「3億5700万ドルの制裁金をMicrosoftに科すと7月に決める前,DOJからMicrosoftに『もっと優しく』接するよう求められた」という。「そのような要求は不適切だった。もちろん我慢できない介入だ。規模の大小に関係なくあらゆる企業が法に従うし,Microsoftも例外でない。職務を遂行するにあたり,えり好みなどできない」(Kroes氏)

 Kroes氏のMicrosoftに対する見解は,年を追うごとに明確化してきた。そして現在は,Microsoftの分割命令を出した後に困難な状況へ追い込まれた米連邦地方裁判所のThomas Penfield Jackson判事と,危険なほど近い道筋をたどっている。Jackson氏は「Microsoftの幹部を『暗黒街の殺し屋』と呼んだ」と報道されたため,裁判の担当を外され,判決は覆された。その後Microsoftは米国政府と和解し,今もソフトウエア業界を牛耳っている。

 明らかにKroes氏は,Jackson判事の始めた作業を最後までやり通したがっている。Kroes氏はMicrosoftに対するあらゆる苦情を受け付けて検討し,ライバル企業からの的外れな言い分を理由に,「Windows Vista」と「the 2007 Microsoft Office system」も調査しようとしている。こうした高圧的な態度には,「Kroes氏が声高にMicrosoftを攻撃すると,最終的には意図したことと正反対の効果をもたらしかねない」という問題がある。Jackson判事について,米国のある上訴裁判所は「Jackson判事がMicrosoftを見下したことが,判決に悪影響を及ぼした」と述べている。もしもKroes氏が常識を越えるほど厳しい処罰をMicrosoftに与えようとすると,欧州でも似たような批判を浴びる可能性がある。