写真1 カリフォルニア州サンマテオにある米YouTube社の本社。ピザ屋と日本料理店の上にオフィスがある。残念ながら今回は取材に応じてもらえなかった
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 まずはこの写真を見て欲しい(写真1)。

 一見何の変哲もない米国の街角の風景に見えるが,今,世界を騒がせているある会社が写っている。ほかでもない,インターネットの動画投稿・共有サービスを提供する米YouTube社だ。

 日本と同様に,米国でもYouTubeブームがまだまだ続いている。そして最近ではその狂乱とも呼べる盛り上がりの中から新たな二つの動きが見え始めた。一つはこれまで謎とされてきたYouTubeの収益モデルが徐々に明らかになってきたこと。もう一つは,これも日本と同様,YouTubeのライバル・サービスが続々と登場してきたことだ(表1)。しかもライバル・サービス各社に取材すると,米国に拠点を置く企業であるにも関わらず,日本市場を明確なターゲットとして意識していることが判明してきた。

動画サービス名 説明
Break.com 15~35歳の男性ユーザーがターゲット
DAVE.TV 各動画に関連した広告の挿入技術を開発
DivX Stage6 DivX形式を使った高画質が特徴
Grouper ソニーの映画会社が買収
GUBA 映画会社ワーナーと提携
IFILM MTVの系列会社
Metacafe 独自の動画フィルタリング&格付けシステム
Panjea SNS的要素を重視
Revver 広告収入を動画提供者と共有
Veoh タイム・ワーナーなどが出資
表1 ポストYouTubeを目指す米国の動画投稿・共有サービス

ナップスターの二の舞になる?

 YouTubeはもともと,個人がホーム・ビデオなどをアップロードし,家族や友達と共有できるようにするのを目的として生まれたサービスだった。比較的地味な目的で始まったと言えるだろう。

 しかし,使い勝手の良さから2005年12月の本格稼動後に人気が急上昇。知り合いでもない世界中の人々が撮影した面白い動画を無料で見たい,またはみんなに見せたいという欲求に火を付け,日本を含む世界中で大ブレークした。インターネットのトラフィック情報を集計している米アレクサ・インターネット社によると,YouTubeのトラフィック量は世界の全サイト中,第16位(8月28日時点)だ。

 YouTubeによると,世界中の利用者がYouTubeを通じて閲覧する動画の本数は1日約1億本。また,米国全体におけるビデオ・ストリーミングの6割が,YouTubeを通したものだという。

 ただ,米国ではYouTubeの人気がうなぎ上りになるのと並行して,「YouTubeバッシング」が始まった。

 多数の利用者が独自のビデオではなく,放映されたテレビ番組など他人が著作権を持つ動画を投稿し,誰でも見られるようにし始めたからだ。日本人利用者が投稿した日本のテレビやアニメ番組も無数にある。一説によると,YouTube上で著作権侵害に該当するビデオの数は「全体の80%」(ある業界関係者)。当然,放送局やメディア会社からは猛烈な批判が湧き上がった。

 一方,YouTubeのサービスが無料で,事業を支える収益源を持たなかった点からもサービスの継続性に対する疑問の声が高まった。著作権の問題と合わせて,「どうせナップスターの二の舞になる」との意見が多かった。ナップスターはインターネット経由の音楽配信に火を付けながらも消滅した会社だ。

 だが,ここまではYouTubeの第1幕に過ぎないようである。この夏からは第2幕と呼べる新たな展開が始まっている。

「YouTubeは今,転換期にある」