ソフトバンクグループの米ヤフーは2006年6月29日、香港の大手財閥であるハチソン・ワンポアと第3世代携帯電話(3G)におけるコンテンツサービスの共同展開で提携した。2006年夏以降、ハチソンが手掛ける3Gサービス「3」において、検索エンジンや電子メールをはじめとするYahoo!のモバイル向けサービスを幅広く提供する(発表資料)。

 日本ではソフトバンクがボーダフォン日本法人を買収し、2006年10月に社名を「ソフトバンクモバイル」に変更して、新体制でスタートする予定だ。ボーダフォン日本法人の社長に就任した孫正義氏は、パソコン向けのYahoo!で培ったポータルサービスを基軸として携帯電話事業を運営していく方針を示している。今回のハチソンとの提携で展開するサービスの形は、今後ソフトバンクが国内で目指しているモバイル事業の青写真を示したものとして注目される。

検索、メール、メッセンジャー…、幅広いサービスを提供

 今回の提携により両社は、Yahoo!の検索サービスや「Yahoo!メール」「Yahoo!メッセンジャー」「Yahoo!フォト」「Yahoo!カレンダー」など複数のサービスを、ハチソンの3G携帯から簡単なボタン操作で利用できるようにする。「Yahoo!Ready」や「Yahoo!Go for Mobile」など、Yahoo!の各種サービスに接続するためのクライアント・ソフトもインストールできるようになる模様。検索サービスでは携帯電話向けのWebサイトだけでなく、パソコン向けのWebサイトや画像も検索可能にする。サービスは2006年夏に英国から開始し、順次ヨーロッパやアジア諸国に拡大する予定。

 ハチソンの「3」は、ヨーロッパ諸国と香港、オーストラリア、イスラエルなどで事業を展開しており、特にイタリアと英国では高いシェアを誇る。3G携帯電話ユーザーは世界で約1100万契約に上り、世界でも有数の携帯電話事業者となっている。ヤフーにとっては1100万契約のユーザーにYahoo!の各サービスを一挙に提供できるメリットがあり、ハチソンも3Gのコンテンツ強化を図る上でYahoo!の各サービスを提供できるメリットは大きい。

 今回の提携についてボーダフォン日本法人は、「当社としては特に関知していないし、提供に協力している事実もない」と前置きした上で、「ハチソン向けに提供するYahoo!のサービスを見る限り、ソフトバンクモバイルが目指しているものと似たようなサービス展開になるとは思う」(ボーダフォン広報部)とコメントしている。

ハチソンは「iモード」と「Yahoo!」の両にらみ

 海外の携帯電話事業におけるコンテンツサービスを巡っては、NTTドコモも「iモード」の技術供与を進めている。既に13事業者がiモードのライセンス供与を受けており、準備中のものを含め23の国と地域をカバーする。またNTTドコモとハチソンは2006年12月をめどに、香港・マカオでGSM携帯においてiモードを提供すると2006年6月1日に発表したばかり(関連記事)。Yahoo!のモバイル事業の積極的な展開が続けば、iモードと競合する場面が今後出てくる可能性もある。

 また米グーグルも、KDDI(au)の「EZweb」向けに検索サービスを提供すると発表している(関連記事)。携帯電話向けの検索サービスやコンテンツを巡る勢力争いは、今後さらに白熱しそうだ。