米Microsoft社は2007年に出荷開始予定の次期サーバーOS「Windows Server Longhorn」(開発コード名,以下Longhorn Server)で,ターミナル・サービス機能を大幅に強化する。ボストンで開催しているシステム管理者向けイベント「TechEd 2006」において,(1)アプリケーションの画面だけを配信する「Terminal Services(TS) Remote Programs」,(2)RDPプロトコルをHTTPSプロトコルでトンネルする「TS Gateway」,(3)ターミナル・サービス用のWebポータル・サイト「TS Web Access」の各機能の概要を明らかにした。

ターミナル・サービスは「アプリケーション配信」に進化

 まず,(1)のTS Remote Programsを説明しよう。Windows Server 2003までは,ターミナル・サービスでは,デスクトップ画面全体がユーザーに配信されていた。Longhorn Serverのターミナル・サービスでは,ユーザーに特定のアプリケーションの画面だけを配信可能になる。図1は,Windows VistaでPower Point 2007を使用中の画面である。このPowerPoint 2007は,Longhorn Server上で稼働しており,アプリケーションの画面だけがターミナル・サービスでクライアントに配信されている。

図1
図1:Power Point 2007の画面は,TS Remote Programsを使ってターミナル・サービスで配信されているものだ

 エンドユーザーがターミナル・サービスを利用する手順も大きく変化する。従来は,ターミナル・サービス・クライアントを起動して,接続先サーバーを選択する必要があった。TS Remote Programsの場合,エンドユーザーは専用のショート・カット(図2)をクリックするだけで,接続先サーバーを気にすることなく,ターミナル・サービスで動作するアプリケーションを利用できる。

 TS Remote Programs用の専用のショート・カットは,次の手順で作成・配布する。まずシステム管理者は,ターミナル・サービスの管理ツールを使って,ショート・カットを生成するインストーラ(MSIプログラム)を作る。次に,そのインストーラをエンドユーザーに配布する。エンドユーザーが,クライアント・パソコン上でそのインストーラを起動すると,接続先サーバー情報を設定したショートカットができる。

 
図2
図2:左側のアプリケーションのショートカットをクリックすると,TS Remote Programsが起動する。右側は従来通りのターミナル・サービス・クライアントのショートカットだ

 Terminal Servicesのテクニカル・プロダクト・マネージャであるAlex Balcanquall氏は,「TS Remote Programsを使えば,ターミナル・サービス・サーバーをアプリケーションごとに振り分けられる。ターミナル・サービスの負荷分散にも有効だ」と指摘する。例えば,軽いアプリケーションが動作するサーバーと,重いアプリケーションが動作するサーバーを分離する,といった運用が可能になる。

 Balcanquall氏は「TS Remote Programsを使って,エンドユーザーにバージョンが異なるアプリケーションを同時に使ってもらうのもいいだろう」と語る。古いバージョンのアプリケーションが動作するサーバーと,新しいバージョンが動作するサーバーのそれぞれを設置した上でTS Remote Programsを使えば,エンドユーザーはバージョンが異なるアプリケーションを1台のマシンで並行利用できる。