図1●アプリケーションが応答しなくなると「アプリケーションをリスタートするかどうか」聞いてくるようになった
図1●アプリケーションが応答しなくなると「アプリケーションをリスタートするかどうか」聞いてくるようになった
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図2●Restart Managerの画面。システムの再起動時に終了しないアプリケーションを選択できる
図2●Restart Managerの画面。システムの再起動時に終了しないアプリケーションを選択できる
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図3●GUIベースになったシステム回復ツール
図3●GUIベースになったシステム回復ツール
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 米Microsoftは6月13日(米国時間),米ボストンで開催中のTechEd 2006で「Windows Vista」に搭載される信頼性向上機能の概要を説明した。Windows Vistaには,アプリケーションの応答が停止する「ハング」を減らす技術や,システムの再起動に伴う業務停止時間を削減する技術,ユーザーが問題を自分で解決できるツールが搭載される。

 ハング(アプリケーションやOSの応答停止)を減らす技術とは,(1)同期型I/Oのキャンセル機能,(2)デッドロック検出機能,(3)ハング分析機能---の3つである。

 (1)の同期型I/Oのキャンセル機能は,アプリケーションのI/Oリクエストを,後から強制的にキャンセルする機能だ。例えばWindows XPで,ファイルを開くのに間違ったネットワーク・パスを指定した場合,ファイルを開くというI/Oリクエストに対していつまでも応答が帰って来ないため,アプリケーションが応答しなくなる(ハングする)ことがある。Windows Vistaでは,こういったI/Oリクエストを強制的にキャンセルできる。

 (2)のデッドロック検出機能は,アプリケーションの振る舞いを常時監視する機能である。デッドロック(2つ以上のプログラムが,互いにロックの解放を待って半永久的に停止している状態)を自動的に検出して,どのアプリケーションがデッドロックを引き起こしているのか割り出し,デッドロックの状態を解消する。

 (3)のハング分析機能は,その名の通りアプリケーションのハングを分析する機能だ。アプリケーションがハングした際に,アプリケーションの振る舞いをチェックし,似たような振る舞いを起こすトラブルがないか検索,トラブルの原因を特定する。Microsoftはこの機能のために,ハングの「シグネチャ(ハング定義ファイル)」を提供する予定だ。

 またWindows Vistaは,アプリケーションがハングした場合に,そのアプリケーションを再起動するかどうか聞いてくるダイアログを表示する(図1)。ここで「再起動」を選択すると,このハングの症状をMicrosoftのサーバーに報告し,ハングの原因を調査する。

マシン再起動時にアプリケーションを終了しなくてよい

 再起動やそれに伴う業務停止時間を削減する技術については,「Restart Manager」という新機能が紹介された。これは当面,Windows Vistaと2007 Microsoft Office system(Office 2007)との組み合わせで利用できる。

 Restart Managerは「自動シャットダウンが始まっても,アプリケーションを終了しなくて済む技術」(MicrosoftのElsie Nallipoguリード・プログラム・マネージャ)だという。セッションでは,Windows Vista上でOffice 2007を利用中に,システムを故意にクラッシュさせて自動シャットダウンを発生させるというデモが実演された。このデモでは,システムがシャットダウンされようとするときに,Restart Manager(図2)が起動し,ExcelとWordを終了するかどうかユーザーに質問した。ここで「終了しない」を選択すると,システムはシャットダウンされるが,再起動時にはそれまで開いていたファイルが同じ状態で(保存していなくても),自動的に開かれる。ユーザーはシャットダウン前に行っていた作業を継続できるのだ。

OSの修復ツール「回復コンソール」はGUIベースに

 Windows Vistaには,「Windows Recovery Environment」というツールが追加される。これはWindows XPにおける「回復コンソール」の次期バージョンで,ユーザーがシステムの障害を自分の手で修復するためのツールだ。

 Windows Recovery Environmentは,OSのDVD-ROMから起動できるほか,パソコンに追加のパーティションを1つ用意し,そちらにWindows Recovery Environmentをインストールしておくことも可能だ。問題発生時にOSのDVD-ROMがなくても,追加パーティションからWindows Recovery Environmentを起動できる。

 Windows Recovery Environmentには,障害を検出して自動的に復元する機能や,メモリーのエラーを診断する機能などが備えられている。Windows XPの回復コンソールはCUIだが,こちらはGUIである(図3)。

 Windows Vistaには,システムの自己診断機能も追加される。アプリケーションのエラーが発生した場合に,その原因を診断する。ハードディスク関連の問題が起きていることが分かった場合は,ユーザーに対してデータのバックアップを推奨したりする。

 MicrosoftのDavid Zipkinプログラム・マネージャは「OSの信頼性はユーザーのコストに直結する問題であり,調査ではユーザーの50%以上がMicrosoftに不満を持っている。Windows Vistaには様々な技術やツールが搭載される。信頼性の向上に期待してほしい」と語った。